J1リーグ1stステージは鹿島アントラーズの優勝で幕を閉じました。そして今週末から早くも2ndステージが始まります。鹿島アントラーズ以外17チームの、再起をかけた戦いが始まるわけです。そしてその2ndステージが始まる1日前に開くのが、Jリーグの「登録ウインドー」。今シーズン2度目の登録ウインドーの期間中に、多くのチームが新戦力を補強するでしょう。例年、途中加入の選手の活躍で残留出来たり、または優勝争いに食い込んできたりと、選手によってはチームに大きなプラス要素になり得ます。
そもそも登録ウインドーってなに
Jリーグには「選手を協会に登録できる期間(登録ウインドー)」というのが2回あります。これはFIFAによって義務付けられています。つまり定められた期間外に新戦力を登録することはできないわけです。そんなJリーグの登録ウインドーは下記の通りです。
登録ウインドー
登録ウインドーの長さについても、JFAに記載があります。
年2回の登録ウインドーは以下のように定められ、本協会がFIFAに報告するものとする。
イ.初回の登録ウインドーは、シーズン終了後に始まり12週間を超えない。
ロ.2回目の登録ウインドーは、シーズン中に設定され、4週間を超えない。
by JFA
そんな登録ウインドーですが、実は「例外」なるものが存在します。実は、最近増えてきている「育成型期限付き移籍」もその一種です。
例外1:GKの追加登録
ゴールキーパーの選手であり、かつ、当該追加登録を望むチームに既に登録されている他のゴールキーパーの選手について、怪我等により試合に出場することができない特別な事情があり、かつ、所属リーグが認められた場合は、登録ウインドー外においても登録されることができるものとする。
by JFA
GKが負傷して人数的に厳しくなった場合は登録ウインドー外でも補強を認めるということです。この特例は、今季既に2件認められています。1チーム目が横浜FC。元々3人という少人数でGKを構成していましたが、今季途中に高丘陽平選手が負傷離脱。ファジアーノ岡山から急きょ似鳥康平選手を獲得しました。愛媛FCでも同様のことが起こりました。今季始動時にパク・ソンス選手が右膝前十字靭帯損傷の大怪我、5月には曳地裕哉選手が左膝関節滑膜炎の手術を行いました。その結果、GKは2選手のみになってしまい、5月初旬にロアッソ熊本から原裕太郎選手を補強。すでにベンチ入りを果たしています。
原裕太郎選手by Ehime football times
例外2:育成型期限付き移籍
最近何かと耳にすることの多い育成型期限付き移籍。これが成り立つには3つの条件が必要になります。
イ.23歳以下の日本国籍を有する選手の期限付き移籍であること(選手の年齢は、当該シーズンの2月1日の前日における満年齢とする)
ロ.当該期限付き移籍契約の途中解約に関して、移籍元チーム、移籍先チーム及び当該選手の三者が予め合意していること
ハ.移籍元チームのリーグより下位のリーグのチームへの期限付き移籍であること
by JFA
一言で言えば、「若手の出場機会を設けるために下部リーグで修業を積ませる」ということです。Jリーグの若手育成プロジェクトの一環です。そんな育成型期限付き移籍を今季果たした選手は以下の通りです。
今季の主な育成型期限付き移籍
先日、育成型期限付き移籍を発表した浦和レッズの福島春樹選手のポジションはGK。GKの選手がこの制度を使うのはかなり珍しい例です。連携やコーチングが重要なポジション柄もあり、移籍しても出場機会を得るのは至難の業だからです。実際にJ3などでプレーしているGKが発掘されてJ1でプレーすることはほとんどなく、それだけ評価が難しいポジションと言えます。また、水谷拓磨選手や上田悠起選手のように地域リーグまでカテゴリーを下げて、プレーすることを選択する選手もいます。
そこで気になるのは、果たして「育成」できているのかということです。2015年に他チームへ育成型期限付き移籍をした主な選手のその後の成績をまとめてみました。
2015年に育成型期限付き移籍をした主な選手のその後の成績
選手によって差はありますが、移籍先のチーム(2015年)では一定の出場機会が確保されているようです。川辺駿選手や清武功暉選手のように活躍が認められれば、期間を延長したり完全移籍でチームに加入することも十分に可能です。しかし、意外にも移籍元のチーム(2014年)に復帰できている選手が少ないことも分かります。佐藤祥選手のように、育成型期限付き移籍期間の終了と同時に所属元のチームとの契約が切れてしまう場合もあります。
佐藤祥選手by DAILY HOLLY HOCK
育成型期限付き移籍を経て、今季から水戸でプレーする佐藤選手は主力として活躍。
この制度のメリットは選手のみならず、J2やJ3のチームにもあると筆者は考えます。前述の清武選手は昨年途中にロアッソ熊本に加入し、チームの中核を担いました。そして今や、ロアッソにとっても清武選手はなくてはならない存在になっています。結果的に今季の熊本は他チームよりも5試合少ない状況ながらも中位につけています。このように、クラブと選手の相性が合えば、時期を問わずに移籍が可能な育成型期限付き移籍という制度は非常に効果的です。
今夏この制度を使った選手の中でトップクラスの実力を持つのは、レノファ山口に加入した幸野志有人選手です。彼は2010年に大きな期待を背負ってFC東京と契約を結びました。それからはレンタル移籍で大分トリニータ、町田ゼルビア、V・ファーレン長崎、ジェフ千葉と多くのチームを渡り歩き、すでに100試合以上の公式戦に出場しています。しかしそんな幸野選手も23歳。そろそろFC東京で結果を出したい年齢です。つまり今回の育成型期限付き移籍は彼にとって「勝負」なわけです。活躍が認められればもちろん、FC東京からも高い評価を受けるでしょう。攻撃力のあるレノファ山口で彼がどんな化学反応を起こすのか注目したいと思います。
幸野志有人選手by 徹マガ
選手の移動が多い7月。ここでチームの舵を切り間違えると、あらぬ方向に進んでしまいます。これからの戦いの原動力となるのは、新たに加入する選手たちかもしれません。この先1か月の登録ウインドーでの動きが楽しみです。