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リトリート戦術か否かで見る3バックシステム

Kai Kadomatsu

2017/04/13 18:11

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『3バック』と聞いて、読者のみなさんは、どのチームを想像するだろうか。
プレミアリーグで首位をキープするチェルシーや香川真司の所属するボルシア・ドルトムントか、はたまた、トルシエジャパンか。
様々な意見があると思うが、ここではJリーグの3バックについて、考察してみる。

Jリーグにおける3バック

Jリーグで3バックを使用しているクラブの中でも、浦和レッズとサンフレッチェ広島にスポットを当てて、考えてみようと思う。
なお、4バックが主流である日本サッカー界において、浦和レッズとサンフレッチェ広島の両クラブで指揮をとったミハイロ・ペトロヴィッチ監督は3バックで成功を収めた代表的な監督である。

この両チームは前述した通り3バックを採用しているが、もちろんながら選手補強や戦術など様々な面で違いが生じている。

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浦和レッズの3バック

まずは浦和レッズの3バックについて考察してみよう。
浦和の3-4-3システムでは、どうしてもフォワードの2シャドーが注目されがちであるが、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の広島時代からの愛弟子である槙野智章と森脇良太に加え、昨シーズン湘南から加入した遠藤航の3バックが間違えなくチームの軸となっている。

浦和の3バックシステムでは、槙野と森脇はサイドに開いて高い位置をとり、中盤のウイングバックやダブルボランチとのコンビネーションでサイドを崩すシーンも多く見られるし、中に切り込んでシュートを打つシーンも少なくはない。また、遠藤航は2人のディフェンダーの上がったスペースをカバーする能力、前線へのくさびのパスを配給する能力に長けている。そして、2人の上がったスペースをカバーするのがチームの心臓である阿部勇樹と遠藤航だ。

浦和はボールポゼッション時には、阿部勇樹と遠藤航の2バックのような形になり、阿部勇樹とダブルボランチでペアを組む柏木陽介は2列目の選手のように攻撃的なポジションで攻撃を組み立てる。

浦和のようにボールを保持して攻めてくることに対して、敵チームはスペースを消して戦ってくる。その中で、槙野智章と森脇良太がいかにして攻撃に厚みを加えるか、サイドでの違いを生み出せるかというのは浦和にとってキーポイントであるし、3バックのメリットでもある。

サンフレッチェ広島の3バック

広島の3バックも浦和と似た点が多いが、広島の3バックは浦和の3バックほど高い位置をとるわけではない。
3バックが浦和ほど高い位置をとらないということは、浦和より少ない人数で上手く攻める必要がある。その証拠として、近年広島で攻撃の軸として活躍した、また補強した選手はドウグラス、ピーター・ウタカ、アンデルソン・ロペス、フェリペ・シウバなどの広島独特のパスワークに対応できる上に、個の能力が高く無理が効く選手を中心に獲得し、活躍させている。
茶島雄介や宮吉拓実といった高い技術を持ち、若く将来を期待されるタレントが、まだ広島で絶対的な位置を確保できないのは、このシステムと戦術の代償とも考えることができるかもしれない。

3バックの守備

一般的に3バックと言われれば、ディフェンダーの枚数から考えると守備的ではないと考えられるが、3バックシステムではサイドの選手が下がって守備に参加するため、実質5バックという見方ができる。

しかし、同じ3バックでも浦和と広島の守備には大きな違いがある。

“リトリート”という語句がサッカー用語としてあるのだが、この”リトリート”して守るか、”リトリート”しないで守るかという違いだ。
“リトリート”とは退去や撤退という意味で、サッカー用語としては自陣に戻って、ゴール前を固めて守ることを指す。

浦和はリトリートせず、相手にボールを奪われたら、最前線からプレスを全力でかけ、より高い位置でボールを奪おうとする守備をするシステムだ。最終ラインである3バックもディフェンスラインを高く設定し、コンパクトな陣形が求められる。この際に裏のスペースをいかにしてリスクマネジメントできるかが浦和の3バックでは重要である。

それに対して、広島の守備はウイングバックがディフェンスラインに入り、完全にリトリートした状態の5バックで守るシステムだ。これは浦和の3バックに比べて、ディフェンスラインの背後を突かれる可能性は低くなるため、失点するきっかけを減らすことができる。
しかし、ボールを奪える位置が敵のゴールから遠い位置になるため、浦和と比べるとカウンターを成功させることが難しいだろう。

以上のように、同じ3バックでも戦術などによって、機能できる選手や守備から攻撃への切り替えなど、多くの場面で違いが見られる。
このような違いを知れば、サッカーをもっと深く見ることができるかもしれません。

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