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2018残留争い、柏の太陽は沈むのか

松尾陽介

2018/11/05 08:23

2018/11/04 23:24

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NEWS

「Jリーグは実力が拮抗している。」と聞いたことがある人は少なくないはずだ。しかし、シーズン終盤に差し掛かってもこれだけ順位が読めないシーズンは珍しい。
それだけ今季のJリーグは大混戦だ。
中でも1試合ごとに順位の入れ替わりが激しく多くのチームがひしめき合っている残留争いは熾烈である。
最下位長崎の勝ち点29は現行の18チーム体制になってからの最下位最多勝ち点をすでに更新しており、今季の残留争いのレベルがいかに高いかがわかる。
この史上稀に見る大混戦の中を抜け出すのはどのチームなのか。今回はその中でも柏レイソルに焦点を当てていきたい。

充実の補強、完治しなかった悪癖

10勝18敗3分、勝ち点33の17位。
(*今季から降格のレギュレーションが変わり17・18位が自動降格、16位はJ2昇格プレーオフに組み込まれる。)
2018シーズン、柏レイソルの31試合消化時点での戦績だ。シーズン終盤で自動降格圏に沈んでいるのは近年の柏において見られなかった姿である。
だが、このチームは開幕前まで優勝を狙うといっても頷けるだけの陣容を整えていた。
大宮から江坂任と瀬川祐輔、新潟から小泉慶と山崎亮平、横浜FMからパクジョンス、福岡から亀川諒史を獲得し、ペルーから前回優勝時のメンバー澤昌克も復帰した。
昨季の課題であった前線と最終ラインにおける空中戦、中盤の守備の強度、輪湖の退団に伴い手薄になったSBのことを考えると的確な補強だったといえる。

今年初めての公式戦、タイのムアントン・ユナイテッドに3−0で勝利し、その好調さが伺えたのも束の間。
続くACLグループステージ、全北現代戦と天津権健戦において試合終了間際の失点により勝ち点を失ってしまう。
これは柏において、昨季終盤によく見られた傾向である。
筆者をはじめ、多くのサポーターはオフが短かった弊害が顕著に出てしまったと感じたことだろう。
リーグ戦開幕後も改善の兆しは見られず、ACLも含めた監督交代までの17試合中5試合、この癖によって勝ち点の取りこぼしが発生している。
14節の川崎戦で逆転負けを喫したことによりクラブは監督交代に踏み切る。

決意の監督交代、しかし状況は悪化

バトンを受け取ったのはヘッドコーチから昇格した加藤望氏。

クラブOBではあるが指導者として今季ヘッドコーチに就任するまで柏に携わった経験がない。
下部組織からトップまでの一本化を図るスタイルの柏にとって、少し不可解な人事であったことは否めない。ましてや厳しい状況の中、プロトップチームの監督経験がない人物である。
監督交代直後の名古屋戦はなんとか勝利するものの、天皇杯はまたも終了間際の失点により敗退、W杯による中断期間後のリーグ戦は5連敗。
なかでも17節鹿島戦は2−6と、90分の試合ではなかなか見ることができないスコアで敗戦を喫している。

20節札幌戦でようやく勝利するも連勝して波に乗ることはできず、現在までのリーグ戦成績は17試合で5勝12敗1分(監督交代前は5勝7敗2分)となっている。
これをみると完全に監督交代が裏目に出てしまったことが伺える。
試合内容も監督交代前の敗戦は全て1点差であったのに対して、交代後は先行され2点差以上で完敗するケースが増加した。
皮肉にも逃げ切りの改善を目指すはずが、そのような展開にすらならないという結果になってしまった。

光明はあるか

ここまでのおおまかにシーズンを振り返ってみて、ネガティブな要素が多いことは否めない。
しかし、そのような状況の中にあっても希望はある。
中村航輔、中山雄太の復帰や高木利弥、オルンガの獲得も明るい材料ではあるが、やはり鈴木大輔の復帰であろう。
9月に2015シーズン以来となる復帰を果たしたDFは、スペインで揉まれた成果をいかんなく発揮している。
体の当て方やパスを出す位置もさることながら、味方への声掛けの頻度が以前より多くなった印象だ。
おとなしい若手が多い中で気づいたことをすぐ味方に伝えることができ、比較的長い時間ピッチにいる選手が大谷だけだったことを考えるとこの補強は本当に大きいものである。

さらに、後半戦の柏を語るうえで欠かせないのは瀬川祐輔だろう。
今季江坂と共に大宮からやってきた身長170cmの小柄なストライカーは、前半戦こそあまり試合に絡めなかったものの20節札幌戦で今季初ゴール、25節長崎戦から4試合連続ゴールを挙げるなど後半戦の得点源となっている。
そのなかでも、FC東京戦で決めたバイシクルシュートは圧巻の一言である。

彼のゴールにまっすぐ向かう姿勢は相手DFにとっては間違いなく脅威であり、綺麗に崩そうとする選手が多い印象の柏において異彩を放っている。
綺麗に崩そうとするのは間違っていないが、今の柏にデザインされた攻撃の形が見えないことを考えると、シンプルにゴールを目指す瀬川の存在は貴重だ。

出し惜しみはしたくない残り試合

最後にJ2降格したのは2009年シーズン。
当時はシーズン途中からネルシーニョ監督を招聘し、残留は果たせなかったものの、しっかりとチームを作り上げてからJ2優勝の勢いそのままにJ1を制覇し黄金期を作り上げた。
しかし、現在のJ2のレベルは高い。
昨年降格した甲府、新潟、大宮もそれぞれ8位、14位、7位といずれも昇格プレーオフ圏内にも入れていないのが現状である。
1年で戻ってこれる保証などどこにもないのだ。
川崎に0−3で完敗した今節、前節名古屋戦の前半に見せたような軽快さはなく終始選手たちの体の重さが目立ったように感じる。
ここから最後の3試合、出し惜しみせずになりふり構わず勝ちに行く姿勢を見せてほしい。

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