ここ最近、Jクラブのホームタウン広域化が広がりつつある。元々のホームタウンに加えて、近隣の市町村を加えていくケースが多いが、特に神奈川県は群雄割拠化している。その中でも県内市町をすべてホームタウンとしてJリーグに登録したクラブがある。それはレノファ山口。
ホームタウンにするという事は、その市町に対して「市町村デー」等何か地域貢献活動を行うという事なので、J2山口は県内全市町でそういう活動を行う決断をした事になる。
by J2山口公式HPキャプチャ画像
レノファ山口のホームタウン
山口県内20の全市町との連携事業、名前だけで実際そこまでは無理という推測もあったかもしれないが、実際は違った。J2山口は本気である。
イオングループと、ホームタウン20自治体が、「オール山口 Jリーグで地方創生、まちづくりパートナーシップ包括連携」協定をJリーグ村井チェアマンの立ち合いで締結。各市町において「ご当地レノファ活用会」(レノファフェス等)を開催するとしている。
また、全トップ選手を全ホームタウンに配置したご当地所属選手が各自治体のPR活動や応援活動を実施する事に加えて、クラブ公式ホームページで「県・市・町 ご当地じまん」を発信している。他にもホーム試合で全市町で順番に、ホームタウンサンクスデーを開催したり、主要ホームタウンで全郵便局(一部の簡易郵便局は除く)での前売券販売を実現している。
【ご当地所属選手】美祢市所属の2.宮城雅史選手、MINECOLLEを食べる!! https://t.co/bguKRCZ1pX#renofa #レノファ pic.twitter.com/OFM255jIFM
— レノファ山口FC (@renofayamaguchi) 2017年12月5日
ホームタウン自治体のご当地所属選手
毎年抽選で決定している。ご当地所属選手はシーズンを通して、県・市・町を元気にするためPR活動や応援活動を積極的に実施している。行政のポスターに登場して終わりというパターンではなく、実際に担当自治体へ挨拶回りで赴き、多くのおすすめスポットを実際に訪問し、ご当地所属選手としてPRしていっている。
山陽小野田市では地元にある練習場で、職員と市長とのランチミーティングが開催され、池上選手がご当地所属選手として参加して行政側との絆を強めており、J2山口は行政側との連携を上手く生かし、地域に根差す姿勢を実感させられる。
他のクラブではここまでの行動はそう簡単にはできないと思われる。それをいとも簡単に実現させていっているJ2山口はかなり地域密着度が高い理想的なJクラブであると言える。
地方創生に関する包括連携協定
J2山口は、明治安田生命ともJリーグを立会人に地方創生に関する包括連携協定を締結している。地域の活性化や、健康づくりの推進など県民サービスの向上を図るための取り組みを協力して行う内容である。内容には他にも産業振興、特産品や観光情報のPR、高齢者支援、地域の見守り活動への協力、障害者支援など、J1クラブにも見られないような密度の濃いものとなっている。イオングループもそうだが、Jリーグが仲立ちしている事に注目される。つまり、Jリーグが推薦できる立派なJクラブである事がよく表されている。
レノファ山口というクラブ
元々は1949年創設の「山口県サッカー教員団」を起源とし、2006年にクラブチーム化して発足。6シーズンと地域リーグ時代が比較的長い印象があるが、その後は1年ごとにカテゴリを上げ、2016年よりJ2参入。今季は霜田監督(前日本サッカー協会技術委員長)のもとに、J2リーグ序盤戦では首位争いを展開。現在はやや失速した順位にいるが、シーズンを通して旋風を巻き起こし、松本や長崎のようにそのままJ1に駆け上がるイメージがあった。
クラブとは別に総合型地域スポーツクラブのNPO法人を設立し、サッカーの他にテニススクールも運営している他、レディースチームも保有し、Jリーグ百年構想に沿ったクラブ運営を行っている。
活発で心豊かな選手会
今回の、平成30年7月豪雨災害で、山口県ではそれほど被害は見られなかったが、選手会では被災クラブを上回る復興支援活動を実施している。
北海道胆振東部地震も対象に含めて、今季9月以降のホームゲーム(全8試合)で選手による災害義援金募金活動を継続的に実施している。選手の募金活動は当初時期に限定される事がほとんどだが、J2山口は継続事業として取り組んでいる。また、試合ごとの募金額と活用先を情報公開し、本当に頭が下がる社会貢献活動であり、選手会だけでなくクラブ全体で優れた価値観を持っていることがよくわかる。
J1が射程距離に
J3に昇格した時期には他のクラブの手法を取り入れていたようだが、J1が射程距離に見えてきた現在はJ1にふさわしいJ2クラブとして独自スタイルで成熟度を増していっている印象を持つ。
Jクラブはスポンサーによる支援に偏重しがちだが、J2山口は地域を最大限に巻き込み、地域に欠かせない存在とする事によって、主要スポンサーと肩を並べる存在に仕上げている。県下隅々にまで根を張り、100年続くであろう究極の公共財として輝きを増している。すぐにJ1に駆け上がるであろうJ2山口の今後の活躍に期待したい。