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カウンタープレッシングとプレッシング耐性

ぱこぱこ・へめす

2018/11/07 08:38

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現在、サッカーは基本的にオープンプレーを4つの局面にわけて考えられる。ボール保持・非保持、ポジティブ・ネガティブトランジションだ。ボール保持チームが移行するトランジションの局面の発展により、単純にボール非保持の陣形に戻るために相手を遅らせたり相手の陣形が整っていない間に攻め切るだけではなくなった。トランジションにおけるカオスに持ち込むことを好むチームが表れ、最近ではストーミングと呼ばれる新しい戦術用語にも注目が集まっている。


by THE PRECISION PASS

カウンタープレッシング

カウンタープレッシングは、ネガティブトランジションにおいて後退せずにカウンターアタックを防ぐためにすぐさまボール保持者やその周辺にプレッシャーをかけ、迅速にボールを奪い返して相手を敵陣に押し留めたままにしようとする戦術である。チーム全体でコンパクトな陣形を保ち、相手の選択肢を狭める必要がある。陣取り合戦で言えば、高い位置を取り続けてゴールへ近づけなければ失点の可能性が高くなり、またボールを奪い返す位置が高ければカウンターアタックによってゴールを奪いやすくなる。さらに、ボールを奪取した直後の相手にプレッシングをかけることで、カウンタープレッシングを仕掛けるチームは、比較的無秩序な相手のフォーメーションを利用して、カウンターアタックを生み出すことができる。カウンタープレッシング戦術の基準点は変更することができる。スペースやパスコース、デュエル、ボールなどを基準点とするアプローチがある。

一方、“バスを停める”ような戦術は、危険域に侵入されないようにスペースを制限することを目的としている。また、相手がチーム全体で前掛かりになりやすいため、敵陣には広大なスペースが生まれロングカウンターに結びつく。

これらを数値化するために、Garry Gelade氏とColin Trainor氏が策定した2つの守備の指標がある。

ADD(平均守備アクション距離)

この指標は、チームが守備アクションを実行するピッチでの平均距離を計算する。全てのタックル、インターセプトおよびファウルについて、守備アクションが行われた場所と守備側のゴールラインとの距離を使用する。これら全ての平均がADD(Average Defensive Distance)である。ピッチの高い位置で(すなわち自分のゴールから遠い)守備アクションを行うチームは高いADDを持ち、主に自分のゴールに近い位置で守備アクションを行うチームはADDが低い。

明らかに、この指標の全てが意識的な戦術的選択を表すわけではない。下位チームは一般的に、上位チームに押し込まれてしまい自陣でよりプレーすることになる。従って、この指標はチームの強みを考慮して慎重に解釈する必要がある。


by business-analytic

PPDA(パス毎守備アクション回数)

2つ目の指標はPPDA(Passed allowed Per Defensive Action)である。PPDAを計算するために、(敵陣で)チームが許すパス本数(すなわち、相手が試みたパス本数)を守備アクションの回数で割る。

ゴール前にバスを停めて自陣での相手のボール保持を許すチームは、高いPPDAを記録する。相手のパスの多くは自分のゴールラインからはるかに遠い位置での少ない守備アクションで割り算することとなる。反対に積極的に相手にプレッシングをかけるチームは、PPDAが低い。相手のパス本数が少なく、ピッチの高い位置で守備アクションが行われることとなる。


by statsbomb

ADDとPPDAを結びつけて考える

どちらの指標も共通点を共有しているが、それらが価値があるほど十分に異なるケースもあり得る。さらに、これらを組み合わせると、より多くの洞察をもたらすことができる。ADDはチームが守備アクションを行った場所を教えてくれ、PPDAはゴールから離れた位置でどれだけ守備アクションが行われたのかを示す。ADDはDFラインの高さ、PPDAはプレッシングのインテンシティの高さを示している。

部分的には両者は結びついている。一般的に、高いDFラインを持つチームはインテンシティの高いプレッシングを使用し、深いDFラインを持つチームはインテンシティの低いプレッシングを使用する。回帰直線は逆方向に走る(傾きが負である)。ただし、ボール周辺でマンマーク気味であればデュエルの回数が増えるが、ゾーン気味であれば守備アクションの回数が少なめだったりインターセプトが多めだったりという違いがある。


by 11tegen11

プレッシング耐性

トランジション戦術の発展により、ネガティブトランジションでのカウンタープレッシングやボール非保持でのプレッシングで高い位置からボールを奪おうとするチームが増えてきた。ピッチ全体でインテンシティの高い攻防を繰り広げる中で、プレッシング耐性を持つ選手の重要性が高まっている。

Luka Modric Analysis (2016) from Tristan T on Vimeo.

簡単に言えば、プレッシング耐性は、相手からのプレッシングを受けても、ボールポゼッションを維持する能力である。基本的には、集団的プレッシング耐性と個人的プレッシング耐性の2種類がある。集団的プレッシング耐性は、ボール保持時のチーム構造に依存しているため、相手は効果的にプレッシングをかけるのが難しい。


by http://outsideoftheboot.com

「小さな空間で決定的な動きをする選手がほしい」ヨハン・クライフ

集団的プレッシング耐性は主にトランジション局面でのチーム全体の構造を扱う。これは主にオーバーロード(数的優位)を発生させることに関係しており、チームがポゼッション時にボールを保持しやすくなり、プレーをアタッキングサードに進めることが容易になる。オーバーロードは適切に使用される場合可能にする。

このより新しい指標である集団的プレッシング耐性についても、前述のPPDAによって評価できる。

上図は横軸が自チームのPPDA、縦軸が敵チームのPPDAである。左から右に行くに従ってインテンシティの高い守備を行っており、下から上に従ってプレッシング耐性が高くなっている。緑色の領域は上位15%を示す。

マンチェスター・シティはプレッシング耐性が最も高く、ベティスとエイバルが最もプレッシングのインテンシティが高いことがわかる。またプレッシングで有名なユルゲン・クロップのリヴァプールを見ると、それほどプレッシングのインテンシティは高くなく、むしろプレッシング耐性の方が特徴的である。今シーズンはビルドアップにも注力していることが、このような結果になったのかもしれない。

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