セビージャのポゼッション
セビージャのビルドアップは、ゾーン2で守備ブロックを敷いたアトレティコに対して、ワイドに開いた3バックを中心にボールを両サイドに循環しながら縦パスを出すタイミングを伺っていました。そしてサミル・ナスリとスティーブン・エンゾンジがビルドアップにおいて重要な役割を果たしていました。エンゾンジは基本的に3バックの前の中央に位置し、2トップの中央でパスコースを作り、時々DFラインに降りる動きも見せました。ナスリは左サイドを中心にダイナミックな役割を担い、多くのポジションに出現しました。よく見られたパターンは、左ウイングバックのエスクデロが高い位置を取った時に、左サイドの低い位置に降りてビルドアップを助けました。また両ウイングバックがサイドの高い位置にポジショニングした時には、両ウイングが内側にポジションを取り、ピッチ上にできるだけたくさんのトライアングルを作り、コンビネーションを生み出せるようにしました。
ビルドアップにおいてナスリのプレーが中心となっていたことからわかるように、セビージャの攻撃は左サイドから始まることが多く見られました。ビエットが高い位置取りをして空いたスペースに、ビトーロが左サイドから内側へ移動してボールを受ける形が目立ちました。またエスクデロが横幅の役割を担うことが多かったですが、ビトーロがワイドなポジショニングの時は内側でプレー(ハーフスペースでのプレー、“偽サイドバック”の役割)することもありました。セビージャが流動的なポジショニングを取ることでダイナミックなトライアングルを生み出し、コンビネーションを見せました。
ナスリはこの試合で最もボールに触った選手でしたが、ボールに常に関わり続けるポジショニングを取り、DFラインに降りる動きでボール循環を助けました。
ナスリは多くの場面でボールに近づく動きを見せていましたが、反対のことも何度か行っております。ボールから逆サイド、特に逆サイドバックのスペースでボールを受けると、攻撃を生み出すことで影響を与えました。
セビージャがボールをアタッキングサードまで運ぶと、ナスリの役割はボールを保持しながら左サイドを中心に味方たちを結びつけてコンビネーションでアトレティコのタイトな中盤を壊すことになります。彼の動きは可変的で即興のように見えますが、多くのパスコースによってアトレティコのインテンシティの高い守備ブロックはプレッシングを躊躇う状況になるのです。攻撃側から見ても、ナスリのプレーはチームメイトにオープンなスペースを与えることができます。ナスリの自由なポジショニングによって、アトレティコの中盤のプレッシングを混乱させ、中盤にギャップをもたらしました。
清武の最大のライバル、サミル・ナスリ
マンチェスター・シティでペップ・グアルディオラ新監督のプランから外れることになり、今シーズンからリーガ・エスパニョーラのセビージャへと移籍したサミル・ナスリ。「太りすぎ」としてコンディション調整に苦しんでいるとも言われていましたが、セビージャ加入後はチームの中心として活躍しており、不調という評価を吹き飛ばしています。加入時には「最後の瞬間まで、彼(ペップ)は俺を残留させようとしていた。俺にプレーできると言ってくれた。 だが、俺は愛と多くのプレー時間をくれる家族的なクラブを欲していた。セビージャならそれをくれると思ったんだよ」とのコメントを残しています。
トップ下やサイドハーフを主戦場とする攻撃的ミッドフィールダーで、非常にテクニックに優れる一方、素行の悪さからフランス代表をほとんど追放されるような過去もあります。プレースタイルやプレーエリアからも清武選手の最大のライバルとなる存在です。足元のテクニックや短い距離でのコンビネーションでは清武選手よりも上と言えるでしょう。
スティーブン・エンゾンジ
始めに載せた清武選手のインタビューにもあるように、フランス人のエンゾンジはよく話しかけてくれるそう。強靭なフィジカルと高い守備力に加えて、196㎝の身長からは考えられないような足元の高い技術が特徴の守備的ミッドフィールダーです。なんとフランスのフル代表経験はありません。清武選手にとってはライバルというより相棒となるべき存在です。
フランコ・バスケス
清武選手やナスリ、ガンソらと同様に今シーズンからセビージャに加入した攻撃的ミッドフィールダー。左利きであり、トップ下や右ウイング、2トップの一角などをこなす選手で、清武選手と直接的にライバル関係となるのかは微妙ですが、プレーエリアが被る選手です。前所属のパレルモ(イタリア、セリエA)ではパウロ・ディバラ(現ユヴェントス)とともに2トップで素晴らしいコンビネーションを見せました。