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清武弘嗣はスタメンを奪い返せるか?サミル・ナスリの復活とセビージャの戦術・ライバルたち

ぱこぱこ・へめす

2016/10/26 23:17

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アトレティコ・マドリーの守備

アトレティコ・マドリーの闘将、ディエゴ・シメオネ監督は2014年のFIFA最優秀監督賞で3位にも選ばれた世界最高の監督の1人です。11人全員が豊富な運動量と激しいプレッシングを90分間続け、多彩なカウンターアタックを見せるチームです。シメオネ監督が率いてからのアトレティコ・マドリーは経営規模が大きいバルセロナやレアル・マドリーに匹敵する成績を残しています。1年目にUEFAヨーロッパリーグとUEFAスーパーカップを制すると、UEFAチャンピオンズリーグにも2度決勝戦に進出。最後に2度ともマドリー対決に敗れてしまいましたが、彼の手腕は非常に高く評価されています。

実際の試合について触れる前に、アトレティコ・マドリーの守備について2つの点について簡単にまとめておきたいと思います。

プレッシングの基準点(3つのゾーン)

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守備の局面において、プレッシングを開始する基準点によって3つに分類されることが多いのですが、それぞれの特徴を見ていきましょう。ゾーン3(アタッキングサード)の高い位置から積極的にハイプレッシングをかける守備、ゾーン2(ミドルサード)でブロックを形成して待ち構える守備、ゾーン1(ディフェンシブサード)に押し込まれた状態での守備(”バスを並べる”という慣用表現もあります)です。

アトレティコ・マドリーは立ち上がりはゾーン3から積極的にプレッシングをかけ、試合が落ち着いたらゾーン2でブロックを組み、ゾーン1に押し込まれた状況でもうまく対応します。さらにゾーン2でブロックを組みながら相手のバックパスのタイミングでゾーン3まで押し上げてハイプレッシングをかけるなど、非常に細かいポジショニングとプレッシングを90分間継続することができます。

4‐4‐2と4‐1‐4‐1

フォーメーションはただの数字だという意見の人も少なくないと思いますが、システムがどのように噛み合うのか、どこにスペースが生まれるのかを理解するのにフォーメーションは大きな手掛かりとなります。もちろん最強のフォーメーションというものは存在しませんが、それぞれのメリットとデメリットを理解することは非常に重要です。また相手のフォーメーションが変われば、相手のデメリットとなるポイントが変わるわけで、攻め方を変えるなどうまく適応できるかどうかが試合の行方を左右します。

アトレティコ・マドリーの基本となるフォーメーションは4‐4‐2です。2トップ型と1トップ型の簡単な違いは、2トップ型フォーメーションでは相手CBの“運ぶドリブル”をの回数を抑えることができ、試合の展開を落ち着かせることができる一方、2トップの間を通された時はピンチになります。バルセロナのブスケツやドルトムントのヴァイグルが2トップの間のポジショニングの良い例です。さらにカウンター型のチームにとっては前線に1枚しか残っていないより2枚残って2人のコンビネーションでプレーした方が攻撃に迫力が出ます。一方、1トップ型フォーメーションでは中盤の枚数を多くでき攻撃の方向を誘導してボール前進を誘発できる一方、ブロックを押し込まれる可能性があります。ビルドアップにおいて、1トップ型と対峙する時には3バック化で両脇のCBが運ぶドリブルでボールを前進させるという形が現在は広く見受けられます。

またサッカーコートは横幅が68mあるのですが、4人で守り切るのは非常に難しいです。アトレティコ・マドリーの場合、ボールサイドに人数をかけてプレッシングをしボールを奪い取るのですが、サイドチェンジをされてしまうと広大なスペースを空けているのでたちまちピンチになってしまいます。従ってアトレティコ・マドリーは相手がサイドチェンジに優れる場合、4‐1‐4‐1(4‐5‐1)に変更してサイド攻撃に対応するのです。

しかしシメオネ監督はさらに、自発的なフォーメーション変更も行うことがあります。初めに指摘した通り、フォーメーションが変わればスペースが生まれる場所などが変わり、相手はその変更に対応して攻め方を変えなければうまくいかなくなってしまいます。4‐4‐2の時はサイドチェンジ、4‐1‐4‐1の時はアンカーとフォワードの両脇のスペースが弱点となります。そして監督にはそのフォーメーションの弱点を理解し補うためにチームをデザインすることが求められます。

実際に今回の試合でのアトレティコの守備の形はどうだったのでしょうか。アトレティコは4‐4‐2のシステムでゾーン3からのハイプレッシングを仕掛け、セビージャのビルドアップを防ごうとしました。2トップのガメイロとグリーズマンを中心に積極的な守備を見せました。

いつも通り、アトレティコはゾーン3からのハイプレッシングの時はマンツーマンでのアプローチを見せました。2トップが3バックにプレスをかけ、逆サイドのセンターバックにはサイドハーフが内側に絞りマークをします。3バックの前にポジショニングしているエンゾンジには主にコケが前に移動することでマークにつき、柔軟なポジションをとるナスリに対しては、彼のプレーによってマークを受け渡して対応しました。例えばナスリが左サイドバックの位置に降りてきたらアトレティコは右サイドハーフのコレアが捕まえ、中央でポジショニングした場合はガビが対応していました。

しかしながらアトレティコはゾーン3からのプレッシングだけでなく、ゾーン2でブロックを形成する守備も兼用していました。4‐4‐2(‐0)とも形容される中央圧縮のシステムで、コンパクトなゾーンディフェンスを見せました。

次ページ:セビージャのポゼッション、そして清武のライバルたちとは?【動画有り】

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