PIC: High fives all round, following the goal that separates the two sides at the break. pic.twitter.com/YvKuZSnvyv
— Burnley FC (@BurnleyOfficial) April 13, 2019
ショーンダイシ。
プレミアリーグのバーンリーを率いる監督である。
彼は2012年10月よりバーンリーを長らく指揮している言わば功労者だ。
就任以降チャンピオンシップ中堅だったチームに新しい風を吹き込み、翌シーズンにはプレミアリーグ昇格を果たす。
プレミアリーグ初年度は数多のプレミアリーグの洗礼を受けて1シーズンでチャンピオンシップにとんぼ返りを喰らうが、降格の翌年にはチャンピオンシップで優勝。
’16-’17シーズンより再びプレミアリーグの地へ戦いの場を移し、紆余曲折を経て現在に至る。
プレミアリーグとチャンピオンシップの行き来の激しい印象を持っていたバーンリーだが、ここ数年でのバーンリーの評価は高くプレミアリーグにすっかり定着している。
’17-’18シーズンには最高順位となるプレミアリーグ7位でシーズンを終え、今シーズン序盤にはヨーロッパリーグのプレーオフまでチームを成長させた。
それもすべてショーンダイシの哲学があってのことだと私は考える。
彼らから漲るエネルギッシュさが注がれたフットボールには他のチームにはマネのできないものを感じられる。
今回そんなダイシ率いるバーンリーの特徴をご紹介し、彼らの哲学に触れたいと思う。
【ダイシの哲学とは】
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— Burnley FC (@BurnleyOfficial) April 11, 2019
「戦略とは何かを諦めることである」という言葉がある。
多くの戦略を用意しても散漫になりかえって危険であることを暗示しているのだが、ダイシはこの言葉を具現化し、それを哲学としてチームに落とし込んでいるように私には感じられる。
その中でもチームに浸透させている3つの「しないこと」を私なりの解釈で示していこう。
【①ポゼッションをしない】
バーンリーではポゼッションという概念は強くない。ピッチにそびえ立つイレブンは強靭さと逞しさを兼ね備え、ロングボールとフィジカルコンタクトでピッチを支配するイングランドフットボールを固辞し続けている。
それは絶えず進化し続けるトレンドの潮流に逆行するようにも感じられる。
フットボールの進化に逆らっているにもかかわらず、プレミアリーグに居続けられているのは、まだまだこのスタイルは「オワコン化」していないと言えるだろう。
上記は今シーズンのポゼッション、得点数、クリア数を表している。
バーンリーの1試合辺りの平均ポゼッションは41.6%でリーグワースト3。
しかしながらウェストハムやウルヴスと遜色ない得点力を備えていることをここで申し上げたい。
平均パス数は245本はリーグワースト2、平均クリア数は27.9本でリーグベスト3ということからもポゼッションを重要視していないことが見て取れる。
【②距離乱さずボックス内へ侵入させない】
FULL-TIME Burnley 2-0 Cardiff
A Chris Wood double puts 11 points between the Clarets and Cardiff, who remain in the bottom three#BURCAR pic.twitter.com/NThlC2Heqp
— Premier League (@premierleague) April 13, 2019
ダイシ・バーンリーは4-4-2の布陣を敷きスペースをかなり限定化している。
ロジックの基礎はDFとMFの4-4による守備ブロックを形成することにある。
そこに前線の2人がボールの動きに準じて4-4ブロックに接近しながら抜け漏れたスペースを消し、非常にコンパクトに守備している。
これにより相手の侵入を防ぐこととルーズボールへすぐに反応して攻撃に転じる効果を生み出している。
このようなゾーンディフェンスと前述したフィジカルコンタクトは攻撃陣にとってバーンリーの守備攻略を難しくさせている。
個人的にアトレティコマドリーに通じるものがあるのではないかとも考えている。
【③シュートコースに選択肢を与えない】
Ben Mee to the rescue – how important could this moment prove to be?#WHUBUR pic.twitter.com/8UxCk0rQc9
— Premier League (@premierleague) November 3, 2018
バーンリーの中枢はベンミーとタルコフスキーの2CBにあると考える。
当たり負けしないフィジカルと空中戦、果敢なロングボールからの攻撃参加。
プレミアリーグにおいて欠けてはならない能力をもちろん備えている彼らだが、特筆すべきなのは「シュートブロック」である。
前述したゾーンディフェンスで守備を強固なものにしているが、それでも危険を脅かすケースも少なくない。
その時にはぜひ彼らに注目してほしい。
彼らの守備はディフェンダーとして重要である「シュートを打たせない」ことよりも「シュートコースを選択させない」ことに重きを置いている。
ディフェンダーの心理としてはすぐにでもボールを安全な場所へ追い出したいという気持ちが先行してしまいがちだが、彼らは無理に奪いにいこうとせず相手にボールを保持させて常に相手が狙おうとするシュートコースに身を置いている。
特にいわゆるファイナルサード付近では2人でコースを消すことになるのでシュートコースはさらに限定的になり攻撃の無力化を実現している。
あまりにも卓越した守備戦術に攻撃陣もシュートが打てずにサイドにボールを流したり、無理にシュートしてヒートンが楽々セーブするなんてことがバーンリーの守備の場合にはよくあるケースだ。
それはフィジカルに長けたドッシリとした体格が故に、迂闊にタックルなどしてかわされた場合に追いつけないというデメリットを相殺する役割もあると考察している。
今シーズンのバーンリーのダイシの哲学の浸透もあり8試合のクリーンシートを達成している。
これはマンチェスターユナイテッドとアーセナルを上回る結果となっている。
バーンリーの守備が強靭さだけでなく強固さも持ち合わせていることがこのデータから見ても明らかであろう。
YEEEEESSSSSSS! pic.twitter.com/jwPBUEX3da
— Burnley FC (@BurnleyOfficial) April 13, 2019
今シーズンは前半戦こそ大きく苦しんだものの後半戦には目覚ましいほどの巻き返しを図り、降格圏に瀕していた状況を打開しつつある。
34節にはカーディフとの降格争い直接対決に2-0で勝利し残留に向けてまた1歩前進した。
しかし残り4試合は、チェルシー(A)、マンチェスターシティ(H)、エヴァートン(A)、アーセナル(H)と最終節まで気の抜けないチームと対戦することになっている。
この4試合で勝ち点を少しでも積み上げることができれば、ダイシの哲学がより正しい形で正当化されることになるだろう。