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ピッチでの大きな存在感 ベテランと呼ばれる男たち

佐藤文孝

2019/03/01 07:45

2019/02/28 23:56

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NEWS

スピードや身体能力だけではないサッカーの醍醐味、それを伝えてくれるのはいつの時代もベテランと呼ばれるプレーヤーだ。
2月23日のJ2開幕戦、京都サンガ対アルビレックス新潟では両チーム合わせて4人のルーキーが顔を揃えシーズンスタートらしくフレッシュな顔ぶれが並んだ。一方で激しい攻防が繰り広げられたこの試合、様々な場面で両チームのベテランの確かな存在感が光った。

出場を重ねる田中達也

新潟のFWとして開幕のピッチに立ったのは田中達也。
新潟に移籍してから今年で7シーズン目。年齢を重ねながらも出場機会は増す一方だ。
昨年はリーグ・カップ戦合わせて35試合に出場、公式戦への登録は実に44試合にのぼる。一年間、殆どの試合でグラウンドに身を置きチームを支えてきたことになる。

今年の開幕戦、京都サンガ戦でもスタメンを勝ち取りピッチ全体を走り続けた。
代名詞でもあったスピードに乗ったドリブルの場面は少なくなるも、オレンジのユニフォームを纏ってからは数多くの機会でボールを触り、味方にはたく役割をこなし続けている。また、守備においても前線からのプレスの「スイッチ」は田中達也だ。

13分には右サイド高い位置でパスを受けボールを後ろへ戻すと、そのまま中央へポジションを変える。再びボールを収めると前線へ飛び出したMFカウエの足元へスルーパスを送った。カウエのシュートは枠を外れたものの、田中達也を経由しての攻撃は滑らかにボールが動き、攻撃が繋がっていった。
その後も59分にベンチに退くまで終始、新潟の攻守の要として動き回った。2019年の田中達也も大いに期待に応えてくれる、そう思わずにいられなかった。

闘莉王、溢れるファイティングスピリット

田中達也と入れ代わるようにゲーム終盤、途中交代でもう一人のベテランが今シーズン初の出場を果たす。京都サンガ、田中マルクス闘莉王だ。
京都ベンチ前で背番号4が出場の準備を始めるとスタンドも含めた競技場全体の空気が一変する。特に新潟ベンチ、サポーターはその存在をこれ以上ない脅威と捉えるまでに時間はかからなかった。

交代後、幾度となく繰り返されたのは、新潟ゴール前にポジションをとった闘莉王へロングボールという単調ともとれる攻撃だったが、ともすればこの試合で最も得点の気配を感じさせる場面だったかもしれない。恐れることなく相手ディフェンスに身体をぶつけ、ボールを競る。何よりその独特な威圧感は最後まで新潟ゴールを脅かし続けていた。

かつては強靭なセンターバックとして日本代表でも活躍、ワールドカップにも出場した。一時、サッカーから離れたこともあったものの、復帰後も発せられる凄みと、周囲を圧倒する存在感はまるで変わっていなかった。一昨年から京都に移籍してからはディフェンスのみならずFWとして得点も量産する。闘志があふれ出るスタイルは観る者の心を揺さぶった。

昨年は京都、新潟両クラブともJ3降格が迫るほど低迷し、浮上のきっかけを掴めずにいた。その中でも共にピッチに立ち、ベテランとしてチームを鼓舞し、残留争いの貴重な場面で試合を決めるゴールも挙げている。
積み上げてきた経験、築き続けた自らのプレースタイルを土台とする、ベテランと呼べるプレーヤーが表現する「エッセンス」は観る者に幸福をもたらす。そしてそれこそがサッカーの醍醐味ではないだろうか。
この日の田中達也、闘莉王の両ベテランの姿を観て心からそう感じた。

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