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【コラム】プレミア開幕!ジョゼ・モウリーニョは3年目の呪いに抗えるか。

水上いろは

2018/08/11 20:55

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NEWS

8月10日、ついに熱狂の時が幕を開けた。欧州各国より一足早く、イングランド・プレミアリーグが開幕した。
 
昨季、圧巻の独走優勝を遂げたペップ・グラウディオラ率いるマンチェスター・シティ。CLで準優勝という好成績を収めた上、今季は10名の大型補強でプレミア制覇を狙うユルゲン・クロップ率いるリヴァプール。アントニオ・コンテ監督と袂を分かち、ナポリでの確かな実績を携えて復権を狙うマウリシオ・サッリ率いるチェルシー。22年間のアーセン・ヴェンゲル政権から新時代の到来を予感させるウナイ・エメリ率いるアーセナル。近年、プレミア制覇まであと一歩の所に迫りながら惜しくも逃してきたものの、5シーズン目を迎えて組織力に円熟味が増すマウリシオ・ポチェッティーノ率いるトッテナム。世界の強豪リーグを見渡しても、これほど世界的名監督が集い、まったく優勝候補の行方が読めないような面白いリーグはないだろう。
 
その中で注目したいのが、昨季はリーグ2位、カップ戦でも敗退と無冠に終わり、今季の王座奪還に期待がかかるジョゼ・モウリーニョ率いるマンチェスター・ユナイテッドだ。

 そのモウリーニョ監督には面白いエピソードがある。クラブを率いて2シーズン目までにはこれまで率いてきた全てのクラブでリーグ制覇成し遂げるのだが、3シーズン目に必ずトラブルが勃発して監督の座を降りるというジンクスがあるのだ。すなわちひとつのクラブで連続して“4年目”を迎えたことがない。メディアはこれを“モウリーニョの3年目の呪い”と呼んでいる。

モウリーニョの3年目の呪い

 モウリーニョ監督の名を世界に知らしめたポルト時代。就任2シーズン目にはリーグ優勝を果たし、3シーズン目にはリーグ優勝と共に、優勝候補とは全く思われていなかったポルトでCL制覇を成し遂げた。クラブからは続投を望まれたものの、チェルシーの復権を託されイギリスへ向かう。チェルシーでも1年目と2年目にリーグ制覇を果たしているが、オーナーのアブラモビッチ氏との補強戦略をめぐって衝突し、3年目に途中解任されている。イタリア初挑戦となったインテルでは1年目でリーグ制覇、2年目でリーグ・国内カップ・CLの三冠を達成し、盤石の体勢で3年目に突入するかと思われた矢先、レアルマドリーへ。
レアルマドリーでも1年目に国内カップ、2年目にリーグ制覇を果たすが、3年目にはクラブの象徴イケル・カシージャスとの確執など“内政問題”により選手らと対立。無冠に終わり、追われる形で退任した。続く第二次チェルシー政権でも2年目にはリーグ制覇を果たすが、迎えた3年目にはメディカルスタッフである女医と衝突し、訴訟問題にまで発展。成績も降格圏まで1ポイントに迫るという昨季優勝チームとは思えないパフォーマンスに終始し、チームを去った。

 このように3年目には何かしらのトラブルが発生するモウリーニョ。今季考えられるトラブルの要素をメディアは面白可笑しく考えている。
 
 まずひとつ。今季のプレミアリーグは昨季までとシステムが大きく変わった。毎年、リーグ開幕後も8月31日まで開かれていた移籍市場が、リーグ開幕戦前日の8月9日までと短縮されたのだ。もちろんこれにより、リーグ開幕後も選手の流出や新加入選手が訪れるなどチーム作りが落ち着かないというデメリットが解消される点もあるが、単純に補強に費やす期間が短くなる。
今夏“モウリーニョ・ユナイテッド”が実質的に戦力として数えられる新加入選手はブラジル代表MFフレッジのみ。多くの補強希望を要請していたのにも関わらずこの結果に終わったフロントの仕事ぶりにモウリーニョも不満を隠していない様子である。ひとつの火種になることは予想できるだろう。

 加えて、莫大な資金を投じて獲得しながらも確執の噂が絶えないポール・ポグバとの関係だ。起用法に不満を感じていると囁かれているが、真偽はいかほどだろうか。もし本格的に対立の様相が表立ったとしても、レアルマドリーでの“カシージャスの乱”と同じようなことが起きるかもしれない。

 とはいえ、ネガティブな部分にフォーカスさせすぎてもいけないだろう。実際、どちらかといえば私は今季のモウリーニョに大きく期待を寄せる一人なのだ。1年目には赤い悪魔にとって初めてヨーロッパリーグのタイトルをもたらしたものの、ジンクスという面で言えば、これまで2年目までにリーグ優勝を果たしていたのに未だ成し遂げていない。“2年目のジンクス”が破られたとなれば、3年目のジンクスも破られてもおかしなことはないだろう。

 8月10日に行われたレスターとの開幕戦。今季の行方を占う一戦で、2−1と見事に白星発進を果たした。そしてこの試合、注目すべきトピックは確執が噂されるポール・ポグバにキャプテンマークを託したことだろう。信頼のない者託すほど安いモノではない、その腕章を託したということは、少なくとも周囲が囃し立てるほど関係が悪いわけではないのだろう。

 昨季はリーグ2位で終えながらも、首位に19ポイント差という独走態勢を許してしまった。稀代の戦略家でありタイトル請負人であるモウリーニョがこのまま終わるわけがない。サー・アレックス・ファーガソンの長期政権後、リーグタイトルから見放されている赤い悪魔が、名門復活の旗を掲げられるかはモウリーニョにかかっている。
 越えるべきは、同じマンチェスターに拠点を構えるマンチェスター・シティ。率いるのは、スペイン時代に宿敵バルセロナを率いていくつもの激闘を演じてきたペップ・グラウディオラである。今季も最大の宿敵と目されるが、3年目のジンクスに抗い、果たして“モウリーニョ・ユナイテッド”は“ペップ・シティ”を打ち破れるか。新たな物語を紡ぎ出してくれることを期待したい。

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