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神の子上陸!フェルナンド・トーレスを獲得したサガン鳥栖とは?

Dr.Wildcat

2018/07/17 12:30

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NEWS

またしてもJリーグでビッグ・ディールが実現した。7月11日にJ1リーグ所属のサガン鳥栖が、元スペイン代表の伝説的ストライカーであるフェルナンド・トーレスの獲得を発表したのである。

ここ10年のスペイン代表黄金期を象徴する選手の一人であり、先々月のヴィッセル神戸が発表した元スペイン代表のアンドレス・イニエスタに続く大物選手が来ることとなった。今回は改めてトーレスと彼の新たな舞台となるサガン鳥栖の現状を紹介したい。

エルニーニョ(神の子)と呼ばれた男、フェルナンド・トーレスの半生

トーレスは、スペイン1部リーガ・エスパニョーラの強豪クラブであるアトレティコ・マドリードでキャリアをスタートした。2001年に17歳の若さでトップチームデビューを飾り、2002-03シーズン以降は5年連続で2ケタ得点を重ね、名実ともにアトレティコの顔となりヨーロッパ全土にその名が知られていくこととなる。

スペインでの実績をひっさげ、2007-08シーズンよりイングランド1部プレミアリーグの強豪リヴァプールFCに移籍。このシーズンにキャリアハイのスコアを叩き出し、リーグとカップ戦合わせて46試合33得点と大車輪の活躍。タイトルには届かずとも確かな実力をイングランドでも示すことができた。

その後4シーズンに渡ってリヴァプールFCに在籍した後、2010-11から同クラブのライバルの1つである強豪チェルシーFCに移籍。しかし、チェルシーFCではチームの適応に苦しみリーグ戦における得点数は、在籍中の2010-11から2013-14の4シーズンで2ケタを記録することはなかった。

不遇のシーズンを過ごした後、2014年8月に新天地として選んだのはイタリア1部セリエAの強豪ACミラン。ストライカー不在となっていた同クラブからは大きな期待を寄せられたが、シーズン途中の移籍市場で古巣のアトレティコ・マドリードに移籍。保有権はACミランが持った状態での期限付き移籍であったが、彼が二度とミラノの地を踏むことはなかった。ちなみに同時期には元日本代表の本田圭佑も在籍しておりほんの数ヶ月ほど共闘している。

古巣に復帰したトーレスは選手生活の晩年に入り、全盛期の状態に比べると見劣りする部分もあったが、アルゼンチンの名将ディエゴ・シメオネ監督率いるチームをベテランとして牽引。レアル・マドリード、FCバルセロナに劣らないアトレティコ・マドリードの強さを支える一員として有終の美を飾った。

スペイン代表としては、2003年に19歳の若さでA代表デビュー。スペイン代表が間もなく黄金時代を向かえる時期の中で着実に成長を重ね、2004年の欧州選手権、2006年のFIFAワールドカップドイツ大会にエントリー。そして彼のターニングポイントとなる2008年の欧州選手権では、決勝のドイツ戦で勝利につながるゴールを叩き込み同国44年ぶりの大会制覇に大きく貢献した。

勢いそのままに2010年のFIFAワールドカップにも出場し、スペイン初の世界制覇となった同大会では大会直前の怪我を引きずり、全試合に出場しながらも無得点という不本意な結果となった。
しかし、2012年の欧州選手権においてはベンチスタートが多いながらも大会得点王となり持ち前の勝負強さを発揮。その後2014年に3回目となるFIFAワールドカップ出場を果たしている。

このように世界の最前線で戦ってきたプレイヤーがサガン鳥栖に加入することは本当に喜ばしいことである。

スーパースターを獲得したサガン鳥栖とは?

サガン鳥栖というチームは、53あるJリーグクラブの中でも大都市にあるチームではない。ホームタウンは佐賀県鳥栖市で総人口は県内3位の約74,000人。JFL時代の鳥栖フューチャーズを経て、1999年に発足したJ2に参戦したが当時は深刻な財政難で解散の危機も危ぶまれるほどの不安定な経営であった。

大きな転機となったのは2011シーズン。クラブOBであったユン・ジョンファン監督(現セレッソ大阪監督)のもと、豊田陽平が得点王になるなどチーム全体が活性化し、悲願のJ1初昇格を果たした。そしてJ1初年度となる2012シーズンは初参戦ながら年間5位と上位につける躍進を遂げ、そこから現在までJ2への降格は1度も無く安定した戦いぶりを見せている。

サガン鳥栖が九州の小規模な自治体のクラブでありながらトーレス獲得を達成できたのは、スポンサー面でのバックアップが大きかったのではないかと考えている。同クラブは2008年から化粧品・サプリメント事業で有名な株式会社DHC(創業者:吉田嘉明会長は佐賀県唐津市出身)がユニフォームの胸スポンサーになり、2015年7月には大手スマートフォンゲームメーカーの株式会社Cygames(創業者:渡邊耕一社長は佐賀県伊万里市出身)とスポンサー契約を締結している。この2つの大手企業は共に代表が佐賀県出身であり、地元地域を盛り上げたいという意思のもとスポンサードを行っている。

特にスマートフォンゲーム事業の好調により飛ぶ鳥を落とす勢いの株式会社Cygamesとのスポンサー契約締結で広告料収入が上がったことにより、クラブは潤沢な資金を得ることができた。財政を黒字化に転換できただけでなく、シーズンオフの補強にも力を入れることができるようになったのである。

近年は監督に前FC東京監督でイタリア1部セリエAでの指揮が豊富なマッシモ・フィッカデンティ氏を招聘し、元日本代表のGK権田修一、若くしてベルギーに渡ったMF小野裕二、元コロンビア代表のビクトル・イバルボなど、トーレス獲得以前から世界をターゲットに補強を行っていた形跡はあった。今回のトーレス獲得でサガン鳥栖のクラブの基礎力が強いことが改めて証明されたと言えよう。

そんなサガン鳥栖であるが、今シーズンは開幕からのスタートに躓きJ2降格圏内の17位でリーグ前半戦を終えている。改めて思うと、トーレスがこのチーム状況で参戦したというのは興味深い。世界を股にかけたストライカーが日本屈指の地方クラブをいかに盛り上げるかが見ものである。

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