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エンゴロ・カンテ、プレミアリーグ優勝&W杯優勝に貢献した稀代の黒子

編集部I

2018/07/17 08:45

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ワールドカップ(以下、W杯)ロシア大会にて、フランス代表の守備的MFとしてチームに貢献したエンゴロ・カンテ。年々評価が高まる27歳は、稀代の黒子として各所属チームで獅子奮迅の活躍を見せている。

脅威のスタミナでレスター&チェルシーのリーグ優勝に貢献

1991年3月29日生まれのカンテは、 アフリカ・マリからフランスに渡った移民家族の一人。一部報道によれば、フランスがジネディーヌ・ジダンを率いてW杯初優勝を果たした1998年、7歳のカンテ少年は、ゴミをリサイクルセンターに運ぶ貧困生活を送っていたという。その後10歳でサッカーを始め、フランスのサッカークラブであるシュレンヌやブローニュ、カーンを渡り歩いてきた。

カンテは主に中盤の底で、守備を担当する選手だ。前線にはあまり顔を出さず、黒子に徹するためあまり目立たない。168センチと上背もない。チームの得点シーンに顔を頻繁に出す花形の選手ではない。しかしよく観察していると、至るところに出現して守備に奔走しており、カンテがいかにチームに貢献しているのか分かる。

最大の魅力は、尽きることのないスタミナだ。とにかく走って走って相手の攻撃の芽をつむる。走り続けるから守備範囲も広い。チームに不可欠な汗かき屋だ。

途中交代覚悟で、ガス欠になるまで走り続けるなら、サッカー選手なら誰しも可能だろう。だが、カンテの場合ほぼ90分間ずっと走れる。それがスゴい。走ることは誰でもできる行為なのだが、それを試合中ずっと続け、おまけに毎試合やるのだからスゴい。持久力と回復力が桁外れだ。起用する監督からすれば、これほどありがたい選手はいないだろう。

その並外れたスタミナは注目を浴び、「選手が2人いるようだ」「酸素ボンベをかついでいる」「肺が15個ある」「地球の3割をカバーする」などとメディアや仲間の選手たちに絶賛されている。

転機は2015年。移籍したプレミアリーグのレスター・シティで、中盤の選手としてスタメン起用され続け、奇跡のリーグ優勝に貢献。レスターで優勝した翌年には鳴り物入りでチェルシーに移籍し、再びリーグ優勝に輝いた。個人としてイングランドサッカー選手協会(PFA)の年間最優秀選手賞、イングランド・サッカー記者協会(FWA)の年間最優秀選手賞を同時受賞している。

チェルシーに加入してから、自慢の走力・守備力に加えてパス能力が向上。W杯でも見て取れるように、中盤のパス回しに加わり、試合の組み立てに参加している。

ロシアW杯で全試合スタメン出場も……決勝戦では課題露呈

フランス代表としては、2016年3月にフル代表に選出されてEURO 2016の準優勝を経験。ロシアW杯ではグループリーグ第1戦のオーストラリア戦から出続け、ベルギー戦まで全試合にフル出場。ポール・ポグバやブレーズ・マテュイディとともに中盤を構成。過去に同代表で活躍したディディエ・デシャンやクロード・マケレレを彷彿とさせる役割を担っている。

またカンテは、同W杯で試合出場数が多いにもかかわらず、イエローカードの2枚累積による出場停止がない。敵選手へ激しくプレッシャーをかける立場であるのに、カードをもらうファールが圧倒的に少ないということになる。クリーンな守備は、トーナメント戦を戦う上でもプラスに転じた。迎えた7月15日の決勝戦でも、スタメンで先発している。

しかし、である。フランスは4-2でクロアチアを下してW杯優勝を飾ったものの、カンテは明らかにクロアチアに研究されていた。

攻撃時には、ワンタッチプレイより、中盤の相棒であるポール・ポグバらにショートパスをつなぐ傾向を見抜かれ、時には3人に囲まれてパスコースを塞がれてボールを奪取された。守備に転じると、クロアチアの攻撃陣から避けるようにパスをつながれてボール奪取の役割を封じられた。そして前半にイエローカードを受けたことも影響してか、後半すぐのタイミングで197センチのステベン・エンゾンジと交代してお役御免となった。

ボール奪取やパスつなぎの役割を封じられたらどうするべきか。カンテにとって、課題の多い試合だったに違いない。

W杯後は世界最高峰のバルサに移籍?

そんなカンテには、W杯決勝戦の前から、スペインのFCバルセロナへの移籍話が浮上している。

バルサは、チームを長年牽引したアンドレス・イニエスタがヴィッセル神戸へ完全移籍、守備的MFの“パウリーニョ”ことジョゼ・パウロ・ベセーラ・マシエル・ジュニオール(攻撃でも貢献していたが)がわずか1年で広州恒大へ(出戻り的に)レンタル移籍したことを発表し、中盤にぽっかり穴が空いた格好だ。

その穴を「カンテが埋めるのではないか」というのだ。バルサのお家事情、そしてプレミアリーグでやフランス代表での貢献度の高さを考えれば、十分考えられる選択肢だ。

戦術的にもメリットがある。バルサの華麗なパス回しにすぐ順応できるかどうかは未知数だが、カンテが守備に奔走して2人分の働きをしてくれれば、中盤から前のリオネル・メッシたちがより安心して攻撃に専念できる。

無尽蔵のスタミナを武器に、圧倒的な“成り上がりストーリー”を実現しようとしているカンテ。W杯の次の栄光は、どこで勝ち取るのか。今後の活躍にも注目だ。

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