いよいよ全世界を巻き込む4年に1度のサッカーのお祭り、FIFAワールドカップの開幕があと1ヶ月近くまで迫ってきた。
筆者も大会を心待ちにしている一人ではあるが、この4年間は前回2014年のブラジル大会における日本代表の敗戦から先月のヴァイッド・ハリルホジッチ氏の日本代表監督解任まで、こと代表においてはネガティブなニュースのほうが目立ったせいか、今大会の注目度は残念ながら高いとは言えない状況にある。
今やサッカー番組の顔となった、テレビ朝日系列『やべっちF.C.〜日本サッカー応援宣言〜』
(18年4月8日放送分)の特集でも渋谷の若者100名にインタビューしても、開催時期を知っている人はわずか13%に留まる燦々たる結果となった。
しかし、サッカーファンからすればハチャメチャに面白いイベントではあるし、サッカーを詳しく知らないライト層にも説明しやすく非常にわかりやすい大会ではあることは間違いない。
今回の連載では、玄人好みの専門的すぎる記事やネガティブなニュースから一旦距離を置いて、意外と説明されていない「ワールドカップって何?」という部分を掘り下げて、大会期間中に周囲の人を観戦に誘う時に使える説明書のような記事をまとめていく所存である。
そもそもワールドカップとはどういう大会なのか
サッカーにおけるワールドカップとは、国際サッカー連盟(以下、FIFA)が4年に1度開催するナショナルチーム(国家)によるサッカーの選手権大会である。
正式名称は「FIFAワールドカップ」であり、1930年に第1回ウルグアイ大会に開催され今回の2018年ロシア大会で21回目を迎える。
途中第2次世界大戦の前後で約12年の休止期間があるが、基本的に夏のオリンピックの中間年、冬のオリンピックと同年に開催されている。
サッカーにおいては、国家単位で形成されるナショナルチーム(例:日本、ブラジルなど)と選手が日常的に所属するクラブチーム(例:Jリーグや海外リーグのチームなど)があるが、FIFAワールドカップはナショナルチームによる大会である。
さてさて肝心の大会における位置づけであるが、紛れもなく「世界最高にして最大のサッカーイベント」である。
サッカーの競技人口、視聴者数、経済効果の点から考えると、オリンピックの上を「世界最大のスポーツイベント」と行っても過言ではない。
FIFAの加盟国は211という驚異的な数字を誇っており、全世界のサッカー選手が目指す夢の舞台がこのFIFAワールドカップであると考えて頂きたい。
ワールドカップ本大会の流れ
今回のFIFAワールドカップロシア大会には、FIFA傘下の6連盟の各地区で行われた予選大会を勝ち抜いた32カ国が参加する。
【FIFA傘下の連盟と出場国数】
・欧州サッカー連盟・・・出場14チーム(総加盟国:55)
・南米サッカー連盟・・・出場5チーム(総加盟国:10)
・北中米カリブ海サッカー連盟・・・出場3チーム(総加盟国:41)
・アフリカサッカー連盟・・・出場5チーム(総加盟国:57)
・アジアサッカー連盟・・・出場5チーム(総加盟国:47)
・オセアニアサッカー・・・出場0チーム(総加盟国:11)
※注釈・・・各連盟の加盟国にはFIFAが認可していないナショナルチームもあるため、総数はFIFAの加盟国数と必ずしも一致しない。
本大会はこの32カ国がワールドカップトロフィーを目指し戦うのであるが、まずは最初にグループリーグと呼ばれる試合が行われる。
昨年12月に行われたくじ引きにより、以下の通りグループリーグの組み合わせが決まっている。
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■2018 FIFAワールドカップ グループリーグ組み合わせ
【グループA】ロシア、サウジアラビア、エジプト、ウルグアイ
【グループB】ポルトガル、スペイン、モロッコ、イラン
【グループC】フランス、オーストラリア、ペルー、デンマーク
【グループD】アルゼンチン、アイスランド、クロアチア、ナイジェリア
【グループE】ブラジル、スイス、コスタリカ、セルビア
【グループF】ドイツ、メキシコ、スウェーデン、韓国
【グループG】ベルギー、パナマ、チュニジア、イングランド
【グループH】ポーランド、セネガル、コロンビア、日本
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The groups for the 2018 FIFA World Cup!
Which Barcelona player/players will go furthest in the tournament next summer? pic.twitter.com/gHkapDsEOl
— Grup 14 (@G14_en) 2017年12月1日
【グループリーグの基本ルール】
・各グループで総当たり戦を行い、勝ち点を争う。
・取得できる勝ち点は、勝利で「3」、引き分けで「1」、敗北で「0」
・1試合は90分で終了、延長線は行われない。
・1チーム最大3試合のグループリーグを終えて、
グループ上位2チームが優勝へ向けた最終ステージとなる決勝トーナメントへ駒を進める。
そして最終ステージとなる決勝トーナメントは、グループリーグを突破した16チームによって行われる。
この段階まで来るとグループリーグからの連戦による疲労が目立ち始めるので、毎回のごとく死闘が繰り広げられる。
【決勝トーナメントの基本ルール】
・必ず勝者を決めるノックアウト形式のため引き分けは無し。
・通常90分で決着がつかない場合は30分の延長戦(前後半15分)が行わる。
・延長戦でも決着がつかない場合は両チーム代表者5名によるペナルティキック戦で決着をつける。
ワールドカップにおける実力の相場
ここまでは主に仕組みについて説明をさせて頂いたが、他に知っておいて頂きたいのは試合を見る際に参考となる国・地域ごとの実力の相場である。
FIFAワールドカップが1930年に始まり今回で88年目となるが、その間に優勝した国はたったの8カ国しか出ていないという事実がある。
しかもヨーロッパと南米の2地区からしか出ていないのである。
【優勝経験国と回数】
・ブラジル・・・5回
・ドイツ、イタリア・・・4回
・ウルグアイ、アルゼンチン・・・2回
・イングランド、フランス、スペイン・・・1回
ヨーロッパは言わずもがな、イギリスがサッカーの母国であり、スペインのレアル・マドリード、FCバルセロナ、イングランドのマンチェスター・ユナイテッド、イタリアのユベントス、ドイツのバイエルン・ミュンヘンなど、暴力的なまでに強い俗に言う「ビッグクラブ」と呼ばれるチームが多数あり、クラブチームにおける世界最高峰の大会であるUEFAチャンピオンズリーグを開催している。
世界各国のスーパースターが集まるヨーロッパは、各国がFIFAワールドカップの上位を占める可能性を持った圧倒的な国力を誇り、そもそもの地区予選のレベルが他の地区に比べて高すぎるため、勝ち残ったチームの強さがいかに凄いかを本大会で体感できる。
双璧をなす南米は、ヨーロッパ地区とはまた一線を画す攻撃的なスタイルを伝統的にしている。
少し乱暴ではあるが、チーム・組織集団で戦うのを得意とするのがヨーロッパであれば、それすらも凌駕するハイレベルな個人テクニックを誇るのはブラジル、アルゼンチンに代表される南米である。
もはや説明不要な世界最高峰の選手の一人であるリオネル・メッシや、ネイマールなどテクニックが別次元の選手が多い。
そしてこの2地区の対抗馬である北中米カリブ海、アフリカも実力は高い。
前述したヨーロッパや南米に比べると、スーパースターと呼ばれる次元の選手は減るが、いつの時代もハイレベルな身体能力を持つ選手を擁するアフリカ各国や、
ヨーロッパの組織力と南米のテクニックを程よく織り交ぜるメキシコ、前回はイングランド、イタリア、ウルグアイが同グループにいながら決勝トーナメント進出を果たしたコスタリカなど、グループリーグをかき乱す台風の目となる可能性を常に秘めている地区である。
そして、毎回大穴になってしまうのは我らが日本も属するアジアであろう。
2010年南アフリカ大会からオーストラリアがオセアニアからアジアに転籍し、非常に広大なエリアと他民族を擁するアジアであるが、これまでの地区に比べると歴史も実力も圧倒的に差があるのは否めない。
主にワールドカップでアジアサッカーを牽引してきたのは、日本、韓国、北朝鮮、サウジアラビア、イランといった東アジアと中東の国である。
しかし、長いワールドカップの歴史でも決勝トーナメントに進出した回数は数えるほどになっている。
【アジアサッカーのワールドカップ決勝トーナメント実績】
・韓国・・・準決勝(2002年)、ベスト16(2010年)
・北朝鮮・・・準々決勝(1966年)
・日本・・・ベスト16(2002、2010年)
・サウジアラビア・・・ベスト16(1994年)
※オーストラリアはオセアニア所属時の2006年にベスト16に進出。
本大会前にも、ワールドカップ出場が決まった5チーム中4チームが最終予選突破後に
代表監督を変えてしまうなど、チーム作りにおいてはネガティブな状況である。
ライト層に向けた観戦の手引き
今回は、FIFAワールドカップの位置付けや本大会の基本ルール、地区ごとの実力相場という主に3点に注力して説明させて頂いた。
あまり普段はサッカーを観戦しない方もこの点を押さえた上で、日々各メディアで発信される情報を噛み砕いていくことで、少しづつ興味を高めて頂けるのではないかと感じている。
ぜひこのワールドカップの機会に、少しでもサッカーに興味を持って頂けるよう筆者も努力したい。次回の連載では今回説明した各グループごとに注目選手を紹介させて頂く。