ユヴェントス 2-1 モナコ ジャルディムの奇襲とそれを破壊したダニエウ・アウベスのプレー

レポート


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ユヴェントスがモナコに対してファーストレグにアウェイで2-0の勝利を収めたため、ほとんど勝敗が決している状況でのセカンドレグとなった。モナコとしては、ファーストレグで見られた課題を解決しながらさらに得点を奪いに行かなくてはならない。そんな中でフォーメーションを大幅に変更し、積極的なプレッシングを見せるなど立ち上がりは良い出方だったが、流れを引き寄せられなかった。

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モナコは通常の4-4-2ではなく、3-5-2のシステムで勝負に出た。攻撃での貢献度が高い両サイドバックを高い位置に置くとともに、マッチアップをはっきりさせるために、守備面では3バックに変更した。一方のユヴェントスはシステムはそのままにマルキジオに代えて負傷明けのケディラを起用した。しかしケディラが前半のうちに負傷退場してマルキジオが投入される。

モナコのプレッシング

モナコはよく計画されたインテンシティの高いプレッシングで試合を開始した。試合序盤は5-2-3のフォーメーションで、ベルナルド・シウバが2トップの間に1列上がって3バックにプレッシングをかけた。ビルドアップで中盤にグラウンダーのパスを出させず、3バックに時間と空間を与えずにロングボールを強いた。“背後のカバーリング”(Cover Shadow)と呼ばれる、パスコースを切ることで背後の相手をマークする動きで中盤のピャニッチやケディラへ簡単にパスを出させなかった。

ユヴェントスの3バックやゴールキーパーがプレッシングをロングボールで回避した時、マンジュキッチやイグアインがターゲットとなり身体能力を生かして競り勝つこともあったが、モナコはディフェンシブハーフのバカヨコやインサイドハーフのジョアン・モウチーニョを中心にセカンドボールをよく拾えていた。


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プレッシングにおけるもう1つのポイントは、横幅の役割を担うウイングバックへの対応である。ファーストレグでは4-4-2による中央圧縮により逆サイドのウイングバックが空いてしまっていたが、この試合では5バックだったためウイングバック対ウイングバックでマッチアップがはっきりしていた。そのためサイドでフリーマンを作ることができず、立ち上がりのプレッシング回避のロングボールでもサイドに散らすことができなかった。

モナコのプレッシングに対して、ユヴェントスはボールを収められるポイントがなく相手のカウンターアタックへの予防も十分に行うことができなかった。これにより、キリアン・ムバッペはダニエウ・アウベスの背後のスペースで何度もバルザーリと対峙して仕掛けることができた。

ユヴェントスの“縦に速い攻撃”

15分ほどして、アッレグリはモナコの守備ブロックを別の方法で攻撃することに決めた。逆サイドを効果的に攻撃することができないことを見て、ボールを中盤から前進させることにした。中盤のピャニッチとマルキジオの動きにより、降りてくる前線の選手へのパスコースを作って縦パスをつけ、ディバラやイグアインがファーストタッチでターンして前を向けるようになった。モナコの中盤がユヴェントスの中盤に気を取られてしまえば前線へのパスコースが空く。ユヴェントスはモナコの守備ブロックの中でフリーマンを作り出せるようになった。


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また、ユヴェントスは中盤の2枚が縦関係になることで効果的にセカンドボールを拾えるようになった。本来ディフェンシブハーフであるマルキジオが低い位置に、またもともと10番の選手だったピャニッチが前に出て楔へのサポートをすることで、DFラインの裏やウイングを狙うことができた。


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ユヴェントスの守備ブロック

ユヴェントスは立ち上がりにケディラが負傷交代し、マルキジオが投入されたこともあって、バランスを取り戻すことができた。予想外のシステムに初めは中盤にフリーマンを作ってしまうこともあったが、1列目と2列目が中央圧縮することで中盤のルートを塞ぐことができた。モナコはバカヨコが中盤の底でビルドアップを行い、ジョアン・モウチーニョとベルナルド・シウバがその両脇に降りてくることでビルドアップの出口になろうとしたが、ユヴェントスは中盤へのパスコースを切った。


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低い位置での守備では、ユヴェントスは5-3-2と6-2-2の中間のような守備ブロックを作った。右サイドは比較的マンマークに近く、高い位置を取るウイングバックのメンディに対し同じくウイングバックのダニエウ・アウベスが対応。また2トップの一角であるムバッペは左ウイングのようなポジショニングを取り、バルザーリがぴったりと対応した。バルザーリは試合終了間際に足をつってベナティアと交代していた。

左サイドは、マンジュキッチが低い位置まで下がってウイングバックのシディベに付いていくことが多かったが、ベルナルド・シウバが自由な動きを見せたこともありマークを受け渡すことが多かった。従ってこちらのサイドでもウイングバック同士が対応する機会が多かった。またファルカオも右の“ハーフスペース”に流れてボールを受けることが目立ったが、キエッリーニが対応していた。

ユヴェントスは全体的にマンマークに近い守備を行っていたため、モナコはそれを突いて中盤の選手をずらして楔のパスを入れようとした。しかしパスが通ってもユヴェントスのDFラインの守備によりサイドに押し出されてしまった。そしてユヴェントスの守備陣の高さによりクロスは全然成功していなかった。


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モナコは3バックにしたことで両サイドバックをさらに高い位置へ送ることができたが、その反面3センターが高い位置を取れなかったこともあり、前線やサイドの選手が孤立してしまった。

ダニエウ・アウベス:1ゴール1アシスト

モナコとの2試合を通じてダニエウ・アウベスの活躍は素晴らしかった。ともにウイングバックとして起用され、攻撃参加から質の高いクロスを供給し続けた。マンジュキッチの得点シーンはモナコのセットプレーからのカウンターアタックだったが、何人もの選手が前へ走り込む中サイドを変えることにより、モナコの守備陣は後ろ向きに走りながら視野をリセットしなければならず、ファーサイドに走り込んだマンジュキッチを捉えることができなかった。

また得点を決めたシーンは距離が遠く抑えることが難しいシュートだったが、しっかりとしたインパクトでボールを捉えることができていて素晴らしかった。

期待点とパスマップ


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期待点では1.95-1.57となった。モナコはムバッペの得点も含めて3本しかペナルティーエリア内でのシュートがない。クロスもあったがことごとく跳ね返され、ユヴェントスの守備ブロックを攻略できなかったということである。ユヴェントスとしては2点のリードがあり、全体としてホームで落ち着いて試合を進めることができた。


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パスマップを見ると、期待点関与でダニエウ・アウベスがチームトップであった。また途中交代のディバラが2位であったことも見逃せない。一方のモナコはムバッペが左サイドの高い位置でプレーできていたことがわかるが、ファルカオは高い位置でボールに関与できていなかったことになる。

まとめ:決勝の展望ユヴェントス編

ユヴェントスは最近4-2-3-1を使ってきたが、この試合のように5バックなど可変式や左右非対称のシステムなど、どうなるのかわからないというワクワク感がある。選手たちが複数のポジションをこなせるユーティリティ性があって、いろいろなフォーメーションを使えている。

今後は選手に位置と役割が与えられるのではなく、位置に役割が与えられその位置にいる選手がその役割をこなすという形が流行するかもしれない。

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