アトレティコ・マドリー 2-1 レアル・マドリー 得点状況がもたらす変化とインテンシティの設計

レポート


by uefa.com

ファーストレグでまさかの3失点を喫しもう後がないアトレティコは、ホームの大声援を受けわずかな可能性に望みをかける。一方のレアル・マドリーは大きなリードを手にしているためゆっくりと時計の針を進めていけば良いだけという内容である。

スターティングメンバー


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ホームのアトレティコは、前の試合で問題となった右サイドバックにヒメネスを起用する。本職が右サイドバックの選手を負傷で欠く中、今度はセンターバックの選手を使うことにした。また2トップにはフェルナンド・トーレスも入っている。一方のレアル・マドリーは右サイドバックにカルバハルではなくダニーロを起用した以外は前の試合と同じ布陣となった。

試合序盤:アトレティコが2得点を奪うまで

恐らく立ち上がりの10〜15分程度はハイプレッシングで積極的に仕掛けようという作戦だったのだろう。そしてその立ち上がりに2得点を奪うことに成功している。1列目の2トップのプレッシングに連動して2列目のセンターハーフがレアル・マドリーのインサイドハーフの落ちる動きに付いていき、ビルドアップ隊に時間と空間を与えなかった。

ボールを奪うとシンプルに前線に放り込み、セカンドボールを拾うか拾えなければプレッシングをかけるという形で相手を低い位置に押し込んだ。また右サイドハーフのカラスコによる仕掛けも多く見られた。

ファーストレグと同様にイスコを起用したということは、レアル・マドリーとしてはボールを保持したかったということになる。アトレティコの激しいプレッシングに対して、イスコはセンターハーフが前に出ることによってできるディフェンダーと中盤の鎖の“ライン間”でボールを受けようとしていた。

試合を落ち着けたシメオネ

グリーズマンがPKを決めて2-0とすると、アトレティコの指揮官シメオネは落ち着くように指示をする。それまでの激しいハイプレッシングをやめ、ハーフウェイラインあたりを守備の開始地点とするミドルプレッシングに切り替えた。

この変化を時間の経過によるものと捉えるのか、得点状況の変化によるものと捉えるのかは難しい。前者としては、10〜15分程度を試合序盤をして捉えハイプレッシングを行うという形はよく見られる。一方後者としては、あと1点を加えれば2試合合計で同点に追いつけるというなかで、試合を落ち着かせながらどこかのタイミングでギアを上げたいということだろう。昨シーズンの決勝についてもそうだが、あと1点という状況で勢いそのままに仕掛けるということにシメオネは躊躇する傾向にある。

レアル・マドリーのポジティブトランジションとポゼッション

イスコを起用しボール保持を高めて対応しようとしていたが、アトレティコのハイプレッシングにより自陣に押し込まれてしまい、レアル・マドリーは立ち上がりに2失点してしまう。しかしシメオネの指示によりプレッシングの開始地点を下げたことにより、試合前の計画通りに徐々にボールを保持できるようになる。

ボール奪取後、すなわち“ポジティブトランジション”においてレアル・マドリーが見せた形は、2トップの片方がボールサイドに流れて起点となることだった。中央と比べてサイドの方がプレッシャーが弱く、またボール喪失でもあまりリスクが高くないためよく用いられる。それに対してサイドバックやインサイドハーフがサポートに入りプレッシングを回避して、中盤での数的優位や逆サイドの空いているスペースを使ってボール保持を安定させた。

またボール保持の局面では、イスコがDFラインとMFラインの“ライン間”のスペースを狙ったり、中盤に落ちてきて数的優位を作ることでボール循環を支えた。またモドリッチやクロースによる“インサイドハーフ落とし”も行われ、アトレティコを自陣に押し込めるようになる。また2トップはボールサイドの“ハーフスペース”に何度も流れ、サイド攻撃の起点となった。イスコの得点のシーンも、ベンゼマが左“ハーフスペース”でボールを受けて仕掛けたことが起点となっている。


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期待点とパスマップ


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期待点では1.81-1.67となり、両チームともに最大のチャンスをきっちりと得点できたということになる。ただ基本的には早い時間帯での得点は良い影響をもたらすことが多いのだが、この試合ではどうだったのか疑問が残る。アトレティコはシュート本数で下回ったのだが、もっと積極的な姿勢を見せる時間帯が長くできなかったのか心残りである。


by @11tegen11

試合全体を通してレアル・マドリーの方がボールを保持していた。特にモドリッチ、クロース、イスコ、カゼミロのボールタッチ回数は多く、イスコは“期待点関与”でも金星でチームトップだった。一方のアトレティコは、ガビとカラスコが攻撃の中心だったと言える。

まとめ:決勝の展望レアル・マドリー編

これまでBBCによるカウンターアタックの強烈さを中心としたスタイルで戦ってきたが、モラタやルーカス・バスケス、アセンシオをローテーションで起用して成長させ、イスコを10番として起用してボール保持を高めるなど戦術の幅を見せているジダン。最近はシステムをいじっているため決勝ではお互いに相手のことが読みづらく、準備の差が勝敗を分けるような気がする。

これまでチャンピオンズリーグでは連覇したチームがないが、2年連続で決勝進出はそれだけでも十分に快挙である。良い試合が見られることを祈っている。

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