プレミアリーグの2016−17シーズンの中でも、優勝争いを左右する一戦は首位を走るコンテ監督率いるチェルシーがアーセナルを3−1で退けました。この結果を受け、2位トッテナムとの勝点差は「9」となり、就任初年度でのプレミアリーグ制覇が大きく近づきました。
今回の“ビッグロンドンダービー”ではチェルシーの堅守と、攻撃への切り替えの速さが光りました。
どのようなシステムでアーセナルを封じたのかを、簡単ではありますが解説していきます。
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チェルシーは3−4−3を採用。シーズン途中から連勝を積み重ねてきたベストメンバーで臨みました。
対するアーセナルは4−3−3。今シーズンからトップにサンチェスを起用して、より細かいパスワークと前線からのプレスを可能としています。しかし、カソルラやラムジーを故障で欠き、エルネニーはエジプト代表としてアフリカネーションズカップに出場中、ジャカが出場停止とボランチが駒不足に陥っており、本来は攻撃的なポジションを務めるチェンバレンがイウォビと共に普段より1つポジションを低くして臨みました。
徹底した「堅守速攻」。アーセナルの長所を封じた守備陣形とは?
エデン・アザールがアーセナル戦で記録した1対1の成功率100%は、欧州5大リーグで今シーズン初の数字👏 #CFCJapan pic.twitter.com/O88fuUYxbr
— チェルシーFC日本語版 (@ChelseaFC_Japan) 2017年2月7日
チェルシーは守備においてチームとしての決まり事がハッキリしていました。
ピッチを3分割にして、前線の1/3のエリアと中盤から後方2/3のエリアで行うべき守備を使い分け、アーセナルの攻撃を単調でなおかつスローダウンさせることに成功しました。各エリアでのディフェンスを振り返ってみましょう。
前線1/3のエリアでは、3トップを筆頭に積極的なプレスをかけ、単調なロングボールを蹴らせるか、パスミスを誘います。
アーセナルはこの日、1トップ気味にサンチェスを起用していたことで、高さという点では圧倒的にチェルシーが優位に立っていました。単調なロングボールを蹴らせることで、セカンドボールはチェルシーが拾う場面が多々見られ、アーセナルは相手陣に押し込むことが出来ませんでした。
そのことに加えて前線からのプレスにパスミスを連発。チェルシーは奪ったボールでショートカウンターを何度も仕掛けることでアーセナル守備陣を混乱に陥れました。
中盤から後方2/3のエリアにおいては、アーセナルが攻撃方向を向いた状態でボールを保持した際は、チェルシーは1トップを務めたD・コスタだけを前線に残し、潔く自陣深くに撤退。
サイドに配置されたM・アロンソとモーゼスが3バックに加わり、5バックでブロックを形成しました。その前にボランチの2人とアザール、ペドロが横一直線となり2つ目のブロックを形成しアーセナルを待ち構えました。
この2つのブロックはお互いに近い距離にポジションを取り、サッカーで最も危険なスペースといわれる「バイタルエリア」(センターバックとボランチ間のスペースのこと)を極力狭く保つことに労を惜しみませんでした。
アーセナルとしては、いかに「バイタルエリア」内で2枚看板のエジルとサンチェスがパスを受け、前を向きチャンスを演出するかに懸かっていましたが、狭いスペースでボールを受けることが出来ず、チェルシー守備陣の外でパスを回さざるを得ませんでした。また、チェルシーの最終ラインが深い位置で待ち構えていたために、後方のスペースを利用し、ゴールに迫ることも出来ませんでした。
狭いスペースの中で攻めあぐねるアーセナルに対してチェルシーは、ボールを奪うや否や、3トップのD・コスタ、アザール、ペドロが空いたスペースにスプリント。自陣深くまで攻め込ませたアーセナルの選手たちに考える暇を与えさせない、「電光石火」のカウンターを仕掛けて何度もチャンスを作りました。
3トップの動きに続くように、ウィングバックを務めたM・アロンソとモーゼスもワイドにポジションを取ることで、攻撃の選択肢を広げることに貢献。実際にM・アロンソはペナルティエリアに侵入し、得点を奪って見せました。
この守備から攻撃へ移る一連のプレーを、まるで訓練された「軍隊」のように繰り返し遂行させた、情熱溢れるイタリア人指揮官。
昨シーズンとは打って変わって別のチーム、いや別次元のチームに生まれ変わらせた名将が優勝に近づいたのは間違いないでしょう。
チェルシー攻撃時フォーメーション:
チェルシー守備時フォーメーション:
筆者が選ぶMOM 〜#11 ペドロ〜
今回の“ビッグロンドンダービー”では、アザールがスーパーゴール、クルトワがスーパーセーブを見せる中、
筆者は3トップの右サイドを務めたペドロをMOMに選びたいと思います。
決め手となったのは彼の「ハードワーク」にあります。
カウンターの際には一目散にスプリントを行い、ボールロストの際には素早く切り替え、ボランチの2人と相手を囲い込む場面も多く見られました。奪われてもすぐ奪い返すことで厚みのある攻撃を作り出すことに成功したチェルシー。これを可能にしたのもペドロのハードワークあってこそだと感じました。
1点目のシーンでは、相手サイドバックの裏にタイミング良く走り込み、CBを引きずり出し、質のいいクロスで得点を演出しました。戦術理解度の高さにも定評があります。
バルセロナではMSNの陰に隠れ、思うような出場機会を得ることが出来なかった彼は、昨シーズンイングランドに挑戦の場を移しました。プレミアリーグに適応するまでに時間はかかりましたが、コンテ監督が作り上げる新生チェルシーに欠かせない選手として輝き始めています。今後の活躍に期待しましょう。