2016年の大晦日、土曜日の夜にクロップ監督率いるリヴァプールはグアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティをホームに迎えました。ドイツでしのぎを削ってきた両指揮官のイングランドでの再戦を多くの人たちが待ち望んでいました。首位を走るチェルシーを追う両チームの直接対決を見ていきましょう。
スターティングメンバー
リヴァプール
マンチェスター・シティ
期待点とパスマップ
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— 11tegen11 (@11tegen11) December 31, 2016
日本ではまだ広まっていない試合分析の方法として期待点というものがあります。例えばこのリヴァプール対マンチェスター・シティの試合では、シュート本数は5対9でした。しかしその全てのシュートが同じ価値を持っているわけではありません。どの位置からどんな状況でシュートを打ったのか、それらの質的データを考慮すればより良い分析をすることができます。この試合では0.31対0.47と両チームともに比較的少ない期待点となりました。0対0が妥当と言え、わずかながらシティが高い期待点を出したことがわかります。ただシティはペナルティーエリア内からのシュートが2本のみであり、どちらも少し外側からのシュートとなったのが低い期待点に繋がっています。一方のリヴァプールは後半の長い間シュートを打てない時間帯が続いています。
次にパスマップを見ると、リヴァプールは左サイドでのパス交換が多く見られ、両サイドバックからのパスが多いことがわかります。そして後方からのビルドアップはあまり行われませんでした。一方のシティは、後方でのポゼッションやサイドからのボール前進は見られたものの、中央のシルバやデ・ブライネ、前線のアグエロへはなかなかボールを配給できなかったことがわかります。
マンチェスター・シティの立ち上がりの失点
7分、ワイナルドゥムの得点によりリヴァプールが早々に先制します。シティは前半立ち上がり早々やハーフタイム直後に失点してしまう試合があり、試合の展開を難しくしてしまいます。リヴァプールの前指揮官であるロジャース率いるスコットランドのセルティックと対戦した時や、昨シーズン王者のレスターとの試合、また逆転勝利できたもののアーセナル戦も立ち上がりに失点してしまいました。鹿島アントラーズの伝統的な“勝負強さ”が最近話題になりましたが、シティは近年巨額の投資により力をつけたチームであり、2013/14シーズンにプレミアリーグ優勝を果たすもヨーロッパでは結果を残せず、勝負弱さを見せてしまっています。そういった意味でこれまでバルセロナやバイエルンと歴史があり結果を出し続けてきたビッグクラブを率いてきたグアルディオラ監督の就任でどうなるのかが注目です。
Wijnaldum's goal against Man City pic.twitter.com/vPZzucS8r3
— ぱこぱこ・へめす (@tenchan433) January 5, 2017
グアルディオラがターゲットとしたのはハーフスペース
Klopp's #LFC triumphed over rivals #MCFC in the final game of 2016.
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マンチェスター・シティはポゼッション時にサバレタのポジショニングによる可変式システムを採用してきました。時には3バックの右センターバックとして、時には右サイドバックとしてプレーしました。左サイドでは左サイドバックのコラロフが高い位置を取って横幅の役割を担い、左ウイングのシルバが中へ入って左ハーフスペーススクエア(ハーフスペースかつライン間のエリア、以下参照)でプレー。右サイドでは右ウイングのスターリングが横幅の役割を担い、低い位置にはサバレタ、右ハーフスペーススクエアにはトップ下のデ・ブライネがプレーしました。シルバとデ・ブライネがハーフスペースを自由に動き回ることができ、これがグアルディオラ監督のプランの重要なカギとなりました。クロップ監督の守備戦略としては、ヘンダーソンが唯一の守備的ミッドフィールダーとしてプレーしており、ヘンダーソンの両脇のスペースを使って中盤のラインを越えて前進するオプションを作り出すことを目指していました。
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代わりに、リヴァプールがハーフスペースを守備するためにより低い位置でプレーしていたならば、フェルナンジーニョとトゥーレはより多くのスペースを得ることができたでしょう。3バックという選択は、数的同数による不安定なビルドアップに繋がるため、リヴァプールの3トップに対して反直感的に感じるかもしれません。しかしながら、これはインサイドハーフのジャンとワイナルドゥムに連動してのハイプレッシングを促すこととなり、ヘンダーソンが孤立して周囲のスペースが空きシルバとデ・ブライネが圧倒できると考えました。