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なでしこジャパン世界への船出!アルガルベ杯の注目は、『個の見極め』

hirobrown

2017/03/01 12:35

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NEWS

3月1日からポルトガルで開催される『FPFアルガルベカップ2017』に参戦する日本女子代表=なでしこジャパン。昨年4月に指揮官へと就任した高倉麻子監督体制では初の国際舞台になります。

今後のなでしこジャパンは、すでに前回大会の優勝国として来年4月にヨルダンで開催されるAFC女子アジアカップへの出場が決定。2019年のFIFA女子ワールドカップ・フランス大会の出場権もかかるアジアカップへ向けたチーム強化を図らなければいけないのが現状です。

なでしこジャパンは、現地ポルトガルには2月24日に到着。余裕を持って現地入りし、みっちりとトレーニングを組んでいる事からも分かる通り、このアルガルベ杯から高倉監督による新たなチーム作りが本格化して行く事になります。

アルガルベ杯は『”個”の能力診断テスト』


高倉監督の下で迎える初の国際大会では『個の見極め』が行われる。by jfa.jp

いよいよ、世界へ向けた航海に出る「なでしこジャパン・高倉号」。しかし、船には定員オーバーがあるため、まずは船長・高倉監督による船員(選手)の選抜が必要です。

そんな中、今年7月に開催される女子のEURO2017に出場するスペインやアイスランド、ノルウェーと対戦できるアルガルベ杯。個の力量を図りたい日本、EUROへの最終チェックとして真剣勝負の場が欲しい欧州勢の思惑はピタリと合致しており、面白い大会となりそうです。

グループリーグ3試合+順位決定戦1試合の合計4試合を中1日で3試合、中2日で1試合過ごす強行日程も、『”個”の能力診断テスト』に近い日本の目的からすれば、多くの選手のパフォーマンスをチェックする重要な機会と受け取りたいところ。

今回のコラムでは、アルガルベ杯に招集されている23選手をポジション別に分け、個の能力や組み合わせについて解説。アルガルベ杯開幕前に是非1度、ご閲覧ください。(以下、招集メンバー23選手)

【アルガルベカップ2017 女子日本代表】

<GK>
1 山根 恵里奈 ヤマネ エリナ(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)○
12 山下 杏也加 ヤマシタ アヤカ(日テレ・ベレーザ)
23 池田 咲紀子 イケダ サキコ(浦和レッズレディース)※
<DF>
3 鮫島 彩 サメシマ アヤ(INAC神戸レオネッサ)○
2 有吉 佐織 アリヨシ サオリ(日テレ・ベレーザ)○
5 川村 優理 カワムラ ユウリ(アルビレックス新潟レディース)○
④ 熊谷 紗希  クマガイ サキ(オリンピック・リヨン/フランス)○
18 中村 楓 ナカムラ カエデ(アルビレックス新潟レディース)
15 高木 ひかり タカギ ヒカリ(ノジマステラ神奈川相模原)
21 北川 ひかる キタガワ ヒカル(浦和レッズレディース)
<MF>
10 阪口 夢穂 サカグチ ミズホ(日テレ・ベレーザ)○
6 宇津木 瑠美  ウツギ ルミ(シアトル・レインFC/アメリカ)○
7 中島 依美 ナカジマ エミ(INAC神戸レオネッサ)
19 佐々木 繭 ササキ マユ(ベガルタ仙台レディース)
8 千葉 園子 チバ ソノコ(ASハリマアルビオン)
14 中里 優 ナカサト ユウ(日テレ・ベレーザ)
17 長谷川 唯 ハセガワ ユイ(日テレ・ベレーザ)
<FW>
9 菅澤 優衣香 スガサワ ユイカ(浦和レッズレディース)○
11 岩渕 真奈 イワブチ マナ(FCバイエルン・ミュンヘン/ドイツ)○
20 横山 久美 ヨコヤマ クミ(AC長野パルセイロ・レディース)
16 田中 美南 タナカ ミナ(日テレ・ベレーザ)
13 増矢 理花 マスヤ リカ(INAC神戸レオネッサ)
22 籾木 結花 モミキ ユウカ(日テレ・ベレーザ)

※GK平尾知佳 ヒラオ チカ(浦和レッズレディース)欠場のため変更。
○はカナダW杯登録メンバーで、合計9選手、背番号の○囲いは主将

【守護神不在のGK】山根VS山下のバトルに浦和勢が切り込む!


国内リーグで着実に実績を積み上げるGK山下。by ntssports

GKは準優勝した2015年のカナダW杯を最後に人選が様変わり。海堀あゆみさんが現役を引退し、現在33歳となったベテランの福元美穂選手(INAC神戸)もリオディジャネイロ五輪アジア予選後は選外に。

そのカナダW杯の初戦でスイスを完封したGK山根恵里奈選手と、プレナスなでしこリーグで2連覇中と国内で確実に実績を積み上げているGK山下杏也加選手の一騎打ちになっています。

187cmとカナダW杯参加国全選手の中で最も身長が高い選手だった山根選手。そのワールドクラスの高さは、さらに1cmの”伸び”を見せた模様。誰もがワールドクラスの身体能力を持つ彼女に成長を願う中、肝心のパフォーマンスにはあまり”伸び”が見られないのがもどかしいところ。

逆に21歳とまだまだ若さのある山下選手が確実に経験と実績を積み上げ、安定感のあるプレーで山根選手に刺激を与える以上の存在=ファーストチョイスに名乗りを上げています。

ただ、山根選手も山下選手も「守護神」と形容できる水準には達してはいません。今回3番手として招集されながら体調不良により辞退したGK平尾知佳選手と、代替招集されたGK池田咲紀子選手は共に浦和レッズLに所属しており、クラブでの切磋琢磨から飛躍の可能性も十分にあります。

 尚、1月の代表候補合宿でGKは4選手招集されていましたが、その4人も今回招集(代替含む)された4選手だったため、当面はこの序列は変わりなしと考えられます。

【人材不足のCB】熊谷はアンカーか?若手抜擢の兆候


なでしこの新主将となった熊谷。代表でもMFとしてプレーさせるのか?今大会の注目ポイントだ。by lequipe.fr

1月の合宿最終日に高倉監督から新主将に任命されたDF熊谷紗希選手は絶対的な存在ながら、欧州最高峰のクラブである所属元=オリンピック・リヨンではボランチとして起用されており、その攻撃性能を代表でも活かす考えは高倉監督の構想でも顕著になっています。

DFの選手を中盤で起用するとなると、守備重視や中盤の守備を引き締めて攻守の切り替えの速さからカウンターを狙う策か?と考えられますが、熊谷選手は攻撃面でもミドルシュートやゴール前のクロスに合わせる能力などを持ち合わせるダイナミックなプレーをリヨンで披露しているため、これは攻撃面を考えてのトライです。

実際に昨年のスウェーデン遠征でも試された事実が証明されている事に加え、今回のアルガルベ杯に新潟LのDF中村楓選手がサプライズ選出された事は、今大会で熊谷選手をボランチ起用する際の備えだと考えられます。

しかし、熊谷選手以外の3選手は、本職がCBではない川村優理選手と、あまりにも代表経験が乏しい高木ひかり選手(代表キャップ1試合)、中村選手(同、0キャップ)となり、経験面では何とも心許ない陣容。それでも昨年から2部でプレーしていた高木選手を代表に定着させていた高倉監督ならではの人選にも感じられます。

本職ではない選手が多くなるCBですが、そもそも熊谷選手も浦和レッズLではボランチを務めていた選手で、川村選手も攻守にダイナミックに絡むボランチ。高木選手も所属のノジマではCBとしてプレーしていますが、登録はMF。中村選手もロングフィードに長けています。

全選手が「蹴れる」CBであるのは共通しており、その中でも2部の高木選手や決して攻撃的なチームではない新潟LでCBを務め、泥臭い仕事もできる選手が抜擢された印象。中でも昨季2部の新人賞に選出された高木選手は、高倉監督が継続的に代表招集をかけながらも実戦起用が少なかったため、今大会でまとまった出場機会が与えられると考えられます。

【関連記事】『女子欧州最高峰のUWCLで躍動する熊谷紗希に注目』

【U20代表組の合流で人材豊富なSB】鮫島の奮起に期待

U20代表から昇格した北川(後列右から2人目)や、U23代表の清水など、SB陣は一気に層が厚くなりそう。by jfa.jp

 CB同様に若手の抜擢が予想されるのは現在19歳の左SB北川ひかる選手。彼女にとって高倉監督は2014年のFIFA-U17W杯優勝、昨年のU20W杯3位入賞時の指揮官でもあり、言わば「高倉イズム」を最も体現できる選手。

これまで不動の存在でありながら、世界大会では守備面でフィジカルの弱さと背後への守備の脆弱さを問われていた左SB鮫島彩選手の弱点を補強できる1対1や対人守備の強さも兼ね備えています。

右サイドにはカナダW杯でMVP候補にもノミネートされたDF有吉佐織選手が君臨。攻守に高いレベルを保っている彼女が不動の存在で、今大会では代役は招集されていません。

ただし、アルガルベ杯と並行開催されるラ・マンガ国際大会(スペイン)に参戦するU23日本代表の右SB清水梨紗選手は北川選手同様に「高倉チルドレン」であるため、今回は先発起用の可能性が高いU23代表に回ったと考えられます。

以上の事から、下部年代の代表を率いて来た高倉監督のイズムが最も濃く出て来そうなのは、このSB陣。ラ・マンガ組の台頭も注視しつつ、アルガルベ杯では北川選手の攻守に積極的なプレーに注目です!

W杯や五輪など最も経験豊富の鮫島選手とのポジション争いは注目の一つになってくるでしょう。鮫島選手の奮起にも期待です!

【阪口のパートナー不在のMF】構成が定まらない中、宇津木をどう活かすか?


海外クラブでの経験が豊富なMF宇津木。熊谷以上に身体能力とオールラウンドな能力に長ける彼女をどのポジションで起用するのかも見所だ。by thebold.net

日本が2年前に参戦したアルガルベ杯は、参加12カ国中の9位と惨敗した大会でした。世界の女子サッカーのトレンドや世代交代の遅れにより、日本の中盤の選手に求められる要素が劇的に変化した大会でした。

その大会唯一の収穫が、MF阪口夢穂選手とMF宇津木瑠美選手によるボランチコンビの誕生。外国人選手相手にも全く当たり負けないフィジカルの強さと、驚異的なボール奪取能力を持つ宇津木選手のボランチ起用は、その直後のカナダW杯準優勝に大きく繋がりました。また、宇津木選手がボランチに入る事で、それまでは澤穂希さんとのコンビではサポート役だった阪口選手の攻撃面でのポテンシャルが発揮され、一味違ったなでしこジャパンが完成されました。

しかし、その変化はW杯直前になっても得点力が上がらない事を受けての受身の変化であり、実際に宇津木選手はカナダW杯では試合の主導権を握れると想定されたグループリーグでは左SB起用。シビヤな試合が想定された決勝トーナメント開始と共にボランチに固定されていました。

背番号10を着る阪口選手が中盤のエースである事は周知の事実で、そのパートナーを誰にするか?そこで候補に上がるのがDFの熊谷選手。昨季はリヨンで欧州チャンピオンに輝き、女子の欧州チャンピオンズリーグのMVPにも選出されたボランチとしての能力をなでしこジャパンでも活かしたい流れは、熊谷選手以外のCB陣の出来と共に、このアルガルベ杯で見極めが行われるでしょう。

カナダW杯決勝・アメリカ戦、リードを許す展開で超攻撃的なスクランブル戦術に出た日本は<3-4-3>の陣形をとりましたが、その3バックは阪口選手・熊谷選手・宇津木選手。この3選手が高倉監督体制での新チームでも中心になる事は明白です。世間では「熊谷のポジションは何処か?」に注目が集まるでしょうが、実は「宇津木のポジションが何処か?」も重要なポイントとしてアルガルベ杯は見るべきでしょう。

また、<4-1-4-1>システムを採用する際は、アンカーに的確なポジショニングやミスの少ないプレーで攻守を繋げる頭脳派MF佐々木繭選手が、インサイドMF要員としては司令塔タイプでありながら激しいプレーも厭わないMF中里優選手が起用されるでしょう。

【関連記事】『新星なでしこの大黒柱へ!新主将候補のMF宇津木瑠美~時代も求めた異彩を放つ攻守の要』

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