アーセナルの英雄にしてイングランド代表でも主将を任されたトニー・アダムス(53歳)が、現役時代を振り返り、恩師の「愛情」について語った。
アーセナルで21歳からキャプテンを務めたアダムスは、1980年代、1990年代、2000年代と「3つの年代」で主将としてリーグ制覇を経験したイングランドで唯一無二のレジェンドだ。そんな彼が『The Micky & Woody Show』というポッドキャストの番組で、恩師について赤裸々に告白した。
I will never get tired of posting this.
My third title for The Gunners – 03/05/1998
❤️❤️❤️ @Arsenal pic.twitter.com/4HmjHvmkFG
— Tony Adams (@TonyAdams) May 3, 2020
1996年、それまで日本で指揮していたアーセン・ヴェンゲル監督の就任は衝撃だったという。「全く違う指導法だった。彼は愛、優しさ、考慮、思いやりを持っていたのさ。これまで聞いたことのない単語ばかりさ! フットボールとは常に闘って、闘って、闘うだけだと思っていたからね。」
ヴェンゲル監督がストップウォッチを持って短時間で濃密な練習を行い、選手の食生活も一新させたのは有名な話だが、全ては「愛だ」とアダムスは説明する。「彼には愛情があった。『トニー、今日は調子が悪そうだね。休むかい?』と心配してくれた。彼の指導法を突き詰めれば『愛情』に行きつくと思う。」
当時アーセナルには、クラブ歴代2位の得点数を誇るFWイアン・ライトがいた。ライトは、アーセナルの練習場から遠く離れたロンドン南部に住んでおり、毎日のように練習に遅刻したという。だからアダムスは「監督、何か彼に言わないのかい? ならば私が言おうか?」とヴェンゲルに迫ったという。
アルコール依存症だったアダムスは「まだ6週間しか禁酒できていない私がライトを糾弾するのはおかしいが、彼と話し合おうと思った」と冗談を交えて振り返る。しかしヴェンゲル監督に「止めなさい。彼が間に合うように練習の開始時間を遅らせようと思う」と言われたという。
指揮官は「今は彼が必要だ。要らなくなったときは手放すがね」と説明したという。もちろんアダムスも黙ってはおらず、「午後には学校に子供たちを迎えに行かなくてはいけないので、ちゃんと時間通りに来い!」と裏でライトを叱りつけたと明かす。
Nice mention in the @MetroUK regarding the Tony Adams podcast pic.twitter.com/9qpZUXDdtK
— TheMickWoodyShow (@MickyWoodyShow) June 4, 2020
アダムスは、こういうエピソードを出してヴェンゲルの指導法について「常に対立を避けていた。何か起こると、その場から立ち去った。興味深いよね」と懐かしがった。
名将の手腕を間近で見てきたアダムスは、自身も引退後に監督業に乗り出し、ポーツマスやスペインのグラナダを率いるのだが、結果を残せずに長続きしなかった……。