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“中田英寿問題”の再燃?久保建英のA代表入りがもたらす福音とリスク

桜井恒二

2019/07/12 07:45

2019/07/11 09:40

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6月4日付けで18歳になり、スペインの名門レアル・マドリード(以下、レアル)への入団が正式発表された久保建英(18)。日本サッカー界に新しい歴史を刻んだ青年をめぐって今後、様々なメリットとデメリットが考えられる。

■ついにA代表入りした天才

 久保は6月9日、エルサルバドル戦でA代表デビューを果たした。17歳322日でデビューした市川大祐に次いで、18歳5日という若さだ。久保は10歳頃から将来を有望視され、幼い時の映像が多数残っている。だからこそ久保がA代表のピッチに立つ瞬間は、卓球少女として名を馳せた元卓球選手・福原愛(30)をオリンピックの檜舞台で見た時のように感慨深いものがあった。

 それ以上に驚かされたのは、久保のパフォーマンスだ。出場時間はわずか20分前後だったがパス、トラップ、ドリブル、シュート、戦術理解、プレイのビジョンなど複数の面で才能の片鱗を垣間見せた。確かな基礎技術に裏打ちされた安定感あるプレイとインテリジェンスは、とても初招集された18歳のものとは思えない。その思いは、コパ・アメリカで一層強まった。本気でぶつかってきた南米の強豪を相手にしながら、何度もチャンスメイクし、日本内外のメディアの注目を集めた。

 何より久保のプレイは、ワクワク感がある。かつてサッカー日本代表には、中田英寿(42)や中村俊輔(41)がいた。優れた技術や戦術眼、高精度のフリーキックなどを誇った彼らは、ボールを持てば何かしてくれそうなワクワク感があった。それは、チームのエースが有する“10番的素質”と言えるかもしれない。久保のプレイに、このワクワク感を感じた人もいるのではないだろうか。

 パスの出し手にも受け手にもなれる久保は、右サイドハーフやトップ下、セカンドトップなど、戦術に応じてポジションをフレキシブルに変更可能だ。森保一監督(50)にとって嬉しい悩みだろう。

 前述のとおり、久保はすでにA代表でも輝きを放ちつつある。精神的にも成熟した印象がある久保には、「若いからまずベンチで」という気づかいは不要だろう。大ケガと成長の急ストップさえなければ、たとえレアル・マドリードに定着できなくても(もちろん定着を期待はしているが)、A代表をこの先10年以上牽引する一人になる公算が大きい。

■“中田英寿問題”の再来?レベル高すぎるがゆえの“異物感”

 しかし「中田以来の選手」などと評すると、複雑な思いが去来する人もいるのではないだろうか。

 中田は現役当時、押しも押されぬ世界トップクラスの選手だった。世界のトップリーグだったセリエA、数々の国際大会で輝いた。世界選抜試合に8度選ばれ、試合の途中でキャプテンマークを巻くこともあった。世界のトップ・オブ・トップが集まった試合でだ。

 しかし日本代表で戦う中田は、「孤軍奮闘」という言葉が似合うことが少なくなかった。当時世界最強だったフランス代表(現在もロシアW杯の覇者だが)の中心選手だったジネディーヌ・ジダンから「日本には中田しかいない」と揶揄されることもあった。現役最後の試合となった2006年ドイツW杯のグループリーグ最終節・日本-ブラジル戦では、ピッチ上で奮闘するも1-4で敗北し、ピッチ上に倒れた。

 サッカーは、言わずもがな11人の味方と11人の敵がピッチに立つ。戦術が重要視される現代サッカーでは、メッシのようにスーパーな選手でも、十分なサポートがなければ活躍が難しい。先日のコパ・アメリカでも、バルセロナで得点を量産するメッシは、大会を通じてPKによる1得点しか決められなかった。

 18歳の久保は、まだ伸びしろが大きい。個の成長は喜ばしいことだが、彼が欧州サッカー界で順調に成長すればするほど、日本代表で浮いてしまった中田やアルゼンチン代表で力を発揮しきれないメッシのようになりうる。言うならば、試合に出ないでチームが負ければ「彼がいなかったせいだ」と言われ、出してもクラブチームでのハイパフォーマンスを発揮できない存在。そんな避けて通れぬ“異物”になる可能性をはらんでいる。

 兆候はある。コパ・アメリカのチリ戦では、同時起用された中島翔哉(24)と意思疎通の不具合が見られ、連携が噛み合わなかった。その後、徐々に関係は良くなったが、課題を残した格好だ。ボールに絡むプレイが好きなサッカー小僧気質の中島と、万能型の久保は、中長期的に調整が必要だろう。堂安律(21)らとの関係もまだ不透明だ。ピッチの横軸の連携に、一抹の不安がある。

 現時点ですでに、”久保建英は日本代表のレベルにフィットできるか”というより、”日本代表は久保建英のレベルに合わせられるか”という問題を突きつけられつつあるように感じる。中田の時に生じた同種の問題に、日本代表ならびに日本サッカー協会は上手く対応できるだろうのか。

■求められる周囲のサポートと監督の好采配、若手の台頭

 久保は、日本代表が過去のW杯の成績を上回るために、絶対必要な存在になるだろう。そんな彼のパフォーマンスを最大限引き出すために、周囲のサポート、特に中盤から前線までの選手のサポートが不可欠だ。

 ピッチでの共演時間はまだ短いが、前線に縦パスを通せるボランチの柴崎岳(27)、ポストプレーや足元の技術に長けた1トップの大迫勇也(29)との関係は悪くなさそうに見える。当面は、彼らとの縦軸の関係が、久保活躍のカギを握るだろう。

 この縦軸の関係を構築しつつ、平行して中島ら横軸の関係も深めたいところだ。特に中島は、ポルトガルの強豪ポルトへの移籍が決定した。欧州リーグで再び揉まれ、久保との連携にも変化が現れる可能性がある。森監督は、久保の若さや実力、選手間の相性なども考慮しながら、難しい舵取りを求められる。

 他方、中田と久保の違いの一つは、代表招集メンバーの海外組の比率だ。例えばドイツW杯の海外組(大会当時)は中田英や中村、中田浩二(39)、高原直泰(40)、大黒将志(39)、稲本潤一(39)の6人(全23人)だった。ブラジル戦に限れば、先発したのはそのうち3人にとどまった。

 一方、今年1月のアジア杯決勝時の招集メンバーを見ると、海外組は23人中13人(青山敏弘の負傷離脱前)。先発は、当時サガン鳥栖に在籍していたGK権田修一(30)以外、10人全員が海外組だ。

 招集メンバーベースで比べると、海外組の比率は約26%から約56%に上昇。日欧の往復や激しい競争などピッチ外の苦労も含め、海外組に対するチームの理解がより深まっていると思われる。久保は、中田よりも多少気持ちよくサッカーに取り組める環境なのではないだろうか。

 また、久保はチームの不足点などに物怖じしないでコメントする傾向もある。和を重んじる日本では、動向に注目するマスコミが拡声器となり(時には誤解を生み)、久保の異物感が増すかもしれない。レアル入りした久保は世界規模で注目されているため、日本サッカー協会は毅然としたマスコミ対応が求められる。

 将来を見据えれば、レアルの下部組織に所属するMF、“ピピ”こと中井卓大(15)ら20歳以下の選手の成長も期待される。世界的ビッグクラブで活躍するほどのキープレイヤーが増えれば(ポルトに移籍した中島もしかりだ)、久保の「孤軍奮闘」は減り、日本代表に相乗効果が生まれる可能性は高くなる。

 ひるがえって、現在注目される久保たちは、ビッグクラブで成功できないかもしれない。世界屈指の選手間競争を考えれば、こちらの公算が高い。それでも彼らが世界の超一流クラブで過ごす1分1秒は、長期的に見て、日本のサッカー界にはプラスでしかない。とにかくまずは、日々ケガをしないでサッカーに取り組むことを祈るばかりだ。 

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