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サッカーとアマチュアのダブルピラミッド(J1湘南)

策山 経義

2018/12/15 11:59

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NEWS

サッカーと、オリンピックの頂点を目指すアマチュアスポーツの2つの道で頂点を目指すJクラブがある。それは湘南ベルマーレ。サッカーはJリーグの運営会社(㈱湘南ベルマーレ)、アマチュアスポーツは公益法人(NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブ)であり、クラブ公式HP「概要ページ」には、そのダブルピラミッドの図がある。サッカーピラミッドの頂点にはJ1湘南トップチームがあって、J1制覇を目指しており、アマチュアピラミッドの頂点には5種類のスポーツチームがあって、その先にオリンピックの金メダルという目標があると思われる。
HPの概要ページには、

湘南ベルマーレスポーツクラブはヨーロッパの総合型地域スポーツクラブのように、多種多様なスポーツをホームタウンの人々が気軽に楽しめるスポーツクラブづくりを目指し、また各競技チームに所属する選手たちは世界の舞台を見据えて日々励んでいます。このスポーツクラブから育った選手が、世界の舞台で活躍することが、私達湘南ベルマーレの大きな願いです。

とあり、総合型地域スポーツクラブとしての、その崇高なスケールに感服する。


by J1湘南公式HP

NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブ

総合型地域スポーツクラブとして、ここまでアマチュアスポーツを追求する点について、2002年のNPO法人設立時に聞いた真壁会長のコメントを今でも覚えている。
「予算規模が少なく、神奈川県にはプロ球団が5つもあり、勝った負けた以外に『売り物』がないと続かないと思った。そこで地域に根差した総合型スポーツクラブに関心を持った。Jリーグ百年構想の原点でもあり、特色が出せると思った。」
神奈川県には現在6つのJクラブがあり、プロ野球など競合先が多い土地柄。長所(付加価値)を高めるために極めた総合型地域スポーツクラブというビジネスモデルだが、現在では「Jリーグ百年構想の優等生」「地域のスポーツ文化の向上」で、他のJクラブから頭一つ抜けた存在になったと思われる。

目指したのは地域に根ざした総合型スポーツクラブ

現在、NPO法人では9つのスポーツを運営している。ビーチバレー、トライアスロン(駅伝含む)、女子ソフトボール、フットサル(Fリーグ所属)、サイクルロード、フットサル、ラグビー(7人制女子)、ビーチサッカー、フィットネス&コンディショニングにサッカーのアカデミー(スクール含む)が加わる。2013年までは女子ソフトボールも運営していた。
スクール事業ではこれらの競技やサッカー以外にも、親子ヨガ&体幹トレーニング、タグラグビーなどの生涯スポーツもバラエティに取り入れている。
真壁会長の話によれば、NPO法人を設立したのは、これらのスポーツチームとサッカーのジュニアユース(中学生)以下の運営を独立させれば、Jリーグクラブの経営状態に左右されずに運営できるという意味も垣間見える。

ベルマーレの名前でオリンピックへ

現在、全「ベルマーレ」の中で、オリンピックに近い競技が2つある。2004年アテネ大会を目指して活動をスタートしたトライアスロン、そしてビーチバレーである。ビーチバレーは白鳥勝浩選手が北京、ロンドン大会でオリンピックに出場しており、現在は国内ランク1位の石井美樹選手が所属して東京大会を目指している。
 つい最近まで、Jクラブと同じ名前でオリンピックを目指せるチームは他には存在しなかったが、今年夏にJ1札幌がカーリングチームを発足させている。札幌もまた湘南に近いスタイルで、湘南の後を追うように成長している期待が大きいクラブである。

by J1湘南公式HP

「オールベルマーレ」ベルマーレワンダーランド

これぞ地域密着というイベントをJ1湘南は毎年開催している。平塚駅前中心街商店街の中に特設ステージを設営し、ファン感謝デーのような内容で実施される。スタジアムの最寄り駅前の商店街という会場も素晴らしいが、出演者にも圧倒される。サッカーのトップチームだけでなく、NPO法人所属のアマチュアスポーツも含めて、「ベルマーレ」と名前が付く全チームの選手が参集する。このイベントの日は全ての「ベルマーレ」選手が集まって、馬入グランドで合同練習会を行うのも素晴らしい光景である。
ここまでできるJクラブは他には見当たらない。つまり、ベルマーレのダブルピラミッドは地域の隅々にまで、スポーツ文化として根を張れている事を実証している。


by 湘南ベルマーレSC公式HP

湘南ベルマーレというJクラブ

フジタ工業サッカー部を前身として、1994年にベルマーレ平塚の名称でJリーグへ加盟。ホームタウンは1999年までは平塚市1市だけだったが、「広域ホームタウン制度」の導入により、現在は神奈川県西部の9市11町にホームタウンを拡大している。当時の親会社フジタの経営難により1999年に経営から撤退し、市民クラブ「湘南ベルマーレ」として再スタートしている。その後20年近く市民クラブとして運営されたが、今年4月に、RIZAPグループが親会社として経営に参画している。
 チームとしては1999年にJ2に降格し、その後10季J2に所属したが、反町監督時代の2010年からJ1に復帰。その後J2と行き来していたが、今季はJ1残留に成功している。
今季のルヴァンカップで優勝し、湘南ベルマーレとなってからは初のJ1でのタイトル獲得となった。タイトル獲得の勝因はひとえに曹監督の力量が大きいと思われるが、親会社発足による経営の安定化も一因と思われる。

復興支援等の社会貢献活動

J1湘南はそのスタイルからも公共財としての色が濃いため、以前より様々な社会貢献活動を模範的に実行している。特に東日本大震災ではトップランナーとして数多くの復興支援活動を実施している。
被災地の子どもたちをGWや夏休みに湘南に招待する「KIDS GUARD SHONAN」、スタジアムグルメ店舗が、被災地に出張して食事を無償提供する「復興支援出張フードパーク」、湘南地域のあらゆるビーチスポーツを集結させ、異種競技プログラムに参加できる「ビーチスポーツフェスタ~絆~」を開催し、クラブとして緊急支援物資の輸送を実施しており、地元への地域貢献活動も含めて多彩である。

今後の期待

市民チームで決して経営的に裕福ではなかったJリーグ百年構想の優等生クラブがついにタイトルを獲得した。確かに「企業チーム」に変わってしまったが、企業としてパワーアップもできたと思われる。
ただ、今後も油断ができない状況ではある。プロチームがひしめき合う関東圏に本拠地があるための激しいクラブ間競争。特にスポンサーの獲得競争については、今後も決して簡単にはいかないと思われる。今年4月にライザップが湘南の親会社となっているが、先日その経営不安についての報道が流れている。
今後もクラブ経営について、苦しいかじ取りが予想されるが、Jリーグ百年構想の優等生であり、湘南地域において優れたスポーツ文化を構築させる先進クラブとして、J1で奮闘して欲しい。「湘南の暴れん坊」として。

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