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日本女子代表なでしこジャパン 4-1 ノルウェー女子代表【トライアングルとハーフスペースの攻略法】

ぱこぱこ・へめす

2018/11/15 08:15

2018/11/14 23:17

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NEWS

2018年11月11日に鳥取市営サッカー場バードスタジアムで行なわれた国際親善試合は、ホームのなでしこジャパンがFW横山久美とFW岩渕真奈、FW籾木結花のゴールによって、ノルウェー女子代表に4-1で勝利した。

スターティングメンバー

山下杏也加;
清水梨紗、熊谷紗希、市瀬菜々、鮫島彩;
中島依美、三浦成美、宇津木瑠美、長谷川唯;
岩渕真奈、横山久美

イングリッド・ヒェルムセット;
イングリッド・モエ・ボル、クリスティーヌ・ビョールダル・レイネ、スティーヌ・ホフラン、クリスティーヌ・ミンデ;
カロリーヌ・グラハム・ハンセン、フィルデ・ビョーエ・リサ、イングリッド・シルスタ・エンゲン、グロ・レイテン;
フリダ・レオンハルセン・モーヌム、リサマリア・カルルセン・ウトラン

なでしこジャパンのビルドアップ

試合はなでしこがボールを保持する時間が長く、ビルドアップにおいて様々な形が見られた。序盤に特に多く見られたのは、両SBが大外の低い位置にいるボックスビルドアップである。両CBが広めにポジショニングし、三浦が2FW間、宇津木がFW-WG間を取る。前線4枚がハーフスペーススクエア(CB、SB、WG、CMFの四角形)を中心に動き出し、ボールを引き出してビルドアップの出口となり、前へ仕掛けた。

その後は左サイドの関係性によりビルドアップに変化を加えた。左SBの鮫島が低い位置にいる場合は大外レーンで外側へのパスラインを作り、鮫島が大外で中盤の高さまで上がるとインサイドMF化してWG-CMF間でビルドアップの出口となる。ノルウェーの2FWに対して中盤から1枚降りた3バック形成も何度か見られたが、鮫島が残る左右非対称の3バック化で数的優位を作ることが多かった。

リスタートに対するノルウェーの守備

最近ではGKでの守備がボール非保持のゲームモデルを示す指標であると考えられる。一方で、GKやスローインでのリスタートは、セットされた状態で守備を開始できる特別な状況とも捉えられる。

ノルウェーのボール非保持は4-4-2でミドルサードからプレッシングを開始したが、ネガティブトランジションではカバーシャドウを使ってパスラインを制限するカウンタープレッシングを行った。また、GKでも高い位置からプレッシングを行った。

カウンタープレッシングの対になる戦術用語はプレッシング耐性である。なでしこでは数的優位を使った素早いショートパスを中心に、中盤のボールスキルを使ってプレッシングを回避し前進する。また、プレッシングに対する逃げ所として大外レーンのSBがあり、外外循環とインサイドへのダイアゴナルパスの選択肢でビルドアップの出口を作っている。

アタッキングサードでのハーフスペースの使い方

なでしこの攻撃の狙いはハーフスペーススクエアの攻略である。例えば右サイドの場合、清水がボールを持った際に中島や2FWが内側でボールを引き出すことができていた。

守備側にとってハーフスペースの埋め方は、現代サッカーの避けられない課題である。ノルウェーは広大なハーフスペーススクエアのスペースをなでしこに明け渡してしまうことが多かった。その原因は、CB-SB間(チャンネル)を閉じなかったこと、またはチャンネルをCMFが閉じた時に逆サイドのCMF、WGのスライドが足りていなかったことによる。

なでしこの2点目を見てみよう。清水がボールを持った時、中島と岩渕でトライアングルができ、岩渕には比較的広いスペースがある。清水がオーバーラップしたことにより岩渕との距離ができてうまく連携できなかったが、今度は逆サイドに展開する。市瀬が前を向くと鮫島がオーバーラップを開始し、MF-FWライン間の広大なスペースで長谷川から宇津木へレイオフする。裏抜けした鮫島の仕掛けからルーズボールになるが、岩渕がCB間をダイアゴナルランでボールを引き出し、ニアサイドへ得点する。岩渕はボールサイドのCBの死角を取り、付いてきた逆CBが触れない位置にトラップした。

なでしこジャパンのプレッシング

なでしこはネガティブトランジション時にカウンタープレッシングを行い、4-4-2でアタッキングサードからプレッシングを行った。宇津木が前に出て相手CMFに寄せたので4-1-3-2気味とも取れる。立ち上がりはマークのジャンプ(自分のマークを捨ててボールを受けた選手にプレッシャーに行く動き)も行いながらインテンシティの高いプレッシングを行った。

なでしこのプレッシングに対して、ノルウェーの中盤はプレッシング耐性を見せた。簡単にボールを失わず、ターンして前を向くプレーも見せた。しかしGKやCBからのビルドアップに関しては、パスミスが散見され、中盤でボールロストしてカウンターアタックを受けることも多かった。例えば横山のFKによる先制点は、ノルウェーのビルドアップのミスを岩渕が拾い仕掛けたことが起点となった。さらに籾木の4点目に関してもノルウェーのビルドアップからのカウンターアタックである。

ノルウェーがチャンスを作ったのはサイドからの素早い攻撃による。なでしこのDFが押し上げられずにライン間を使われたり、スピードによって後ろ向きの守備を強いることで攻撃を生み出した。後半の立ち上がりはこのような形から決定機を作り出している。

また、ノルウェーのSBが大外でボールを持った時に、なでしこはWGが寄せ、CMFが斜め後ろにポジショニングを取る。この時に2FWがCBに対応してしまうと、ノルウェーのCMFがフリーになってしまう。このようなボール循環で逆サイドに展開される場面が見られた。特に大外レーンからハーフスペースへ横方向に運ぶドリブルをされた後にサイドチェンジされると、守備陣形が破壊されやすくなってしまう。

攻撃においては、4-4-2というポゼッション向きではないフォーメーションでも5レーンを意識してトライアングルを作り出せている。一方で守備では、ライン間の対応において曖昧になっているようである。ただ、強豪相手にポゼッション率64%で4得点を奪ったことからも、かなりポジティブな結果だった。

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