「試合終了後DAZNの抜かれ方を知っているセレ女」「味スタにてハーフタイムのトイレ待ちで話しかけてくるFC東京のお母さんサポーター」「もしも中島美嘉さんが川崎フロンターレのチャントを歌ったら」など。「ゴール裏女子サポーターものまね」も持ちネタに、黒柳徹子さんのものまねを中心にテレビやラジオなどで活躍中の、シンディーをご存知だろうか。
もしあなたがJクラブのサポーターなら、試合当日のスタジアムイベントで、彼女の芸を目の当たりにしたかも知れない。
現在、彼女は、川崎フロンターレをはじめ、モンテディオ山形やFC町田ゼルビア、ツエーゲン金沢など、全国
各地のスタジアムイベントに引っ張りだこなのだ。
そんなシンディーが初めてスタジアムに訪れたのは2011年、自身が山形県出身ということもあり、モンテディオ山形戦を観戦。
初観戦で、いきなりゴール裏の熱狂地帯に連れてこられたシンディーは、その場での熱狂に戸惑いながらも、この日を境に足繁くスタジアムに足を運ぶようになった。
サッカーのルールも分からない、山形にJリーグクラブがあったことも知らなかったという彼女だが、次第にサッカー観戦に魅了されていったという。
以来、彼女は、「サッカー観戦の魅力を伝えたい!」「サッカースタジアムは、女子一人でも楽しめる場所である。」ことを伝えたくて。自主的に啓蒙活動を始めた。そのコンテンツの一つが『女子サポーターものまね』なのだ。
今回、シンディーさんとの対談を通じてお届けしたいのは、Jリーグ隆盛のヒントである。「満員のスタジアムを実現するには、女子のハートを掴むことが必要。」だと彼女は言う。
サッカーに熱狂する女子サポーターが一人でも増えるように、女子サポーターが安心してスタジアムに来られるように。自身の体験に基づいて、シンディーに御指南いただいた。
初のスタジアム観戦は2011年
(シンディー)私はサッカーに詳しくないですし、ざっくりとサッカーが好きなだけ。サッカースタジアムが好き、サッカーの試合を観るのが好き、でもルールは正直、100%解っていません。どうして今ここで笛を吹かれたの?みんなが「おおー」って言うからきっといいシーンなんだ、みたいな。未だにそういうフワッとした観戦をしています。でも、私はいろんな観方があっていいと思います。
私の場合は、スタジアムの雰囲気とか、試合に行った時に、周りにいる人たちと段々顔馴染になってきて、「久しぶりー」とかいう、あの感じ。週末に会うか、何カ月に一回か会うくらいなのに、ギュッと距離が縮まる感じとか、そこにいる人たちが好きなんだろうなって。
みんなでわぁーって応援したり、時にはブーイングしたり、そこの空間が好きなんです。多分、みなさんは試合が好きとか、誰々選手が好きとか、あると思いますが、私はサッカーの現場が好き。
——初観戦はいつ頃ですか?
2011年、結構最近の話ですね。私が山形出身なので、だったらモンテ(モンテディオ山形)の応援行こうよと誘われました。その時、いきなりゴール裏に連れていかれて、応援歌もわからないし、選手ももちろんわからないし、まずサッカーが何人でやるかもわからなくて。しかも、サッカーを縦から観るという初体験。横から観るのが普通だと思っていましたから。(笑)それに、いきなり青と白の流れるような川のような布があるじゃないですか。
——タスキね。
(シンディー)それをいきなり持たされて。とにかく怖かったですよね、声を出していない、手拍子も知らない、応援できない人がこの場(ゴール裏)にいることは、きっと悪いことなんだろうなって。
でもここで諦めたくなかった。だから私は、それから一人でゴール裏に行って一生懸命勉強して、ここで「山形ディオ!」ってやるんだとか、この太鼓の音の時はあのチャントだみたいな。少しずつ慣れていきました。
私がディーオになった訳
——それ以来、足繁くスタジアムに通い始めた訳ですね。
(シンディー)はい。でもずっと一人でした。友達もいないし、話せる人もいない、一人でシャトルバス乗って、一人でスタグル食べて、一人で応援して。ハーフタイムも一人で過ごして、試合終わったらまた一人でシャトルバスに乗って帰る。
試合が始まれば、みんな同じ方向を向いて応援しているけど、やっぱり一人では行きづらい。私と同じように感じている女子がたくさんいるんじゃないかと思うようになりました。女子だって楽しめるんだ、もっと女子を増やそう、女子の味方が欲しいと思って。その時、パッと思いついたことがありました。
モンテディオ山形には「ディーオ」というマスコットがいます。試合前後とハーフタイムに会場を盛り上げてくれるディーオ君だけど、試合中はスタジアム内にいないんです。だったら試合中は、私が代わりになろうと思って、特注でディーオの頭を作ってもらって、それを被りながら応援を始めました。
勇気いりましたよ。吐きそうになるくらい。こんなことやったらゴール裏の人たちに絶対に怒られるだろうなって。でも誰からも反応はなかった。(笑)みんな気にはなっていたと思うんですよ。ただ誰も話かけてこなくて、それでも何10試合、名古屋の豊スタでも、北九州でも、ホームでもアウェーでも一人で行って被って応援していました。
そうやっていくうちに、DAZNで抜かれたり、山形だったら山形新聞、山形のテレビでパッと抜かれた時に、ゴール裏でもこんな格好をした人が普通にいられるんだって思ってもらえれば、女子が一人でも観られる場所なんだということを伝えたくて。そんな思いでディーオを被り始めたんですよね。
目立ちたいからでしょ、話題になりたいんでしょって言われたこともありましたが、私の目的はゴール裏に女子が集まること。結果、女子が増えたのかわかりませんが、SNSを見てくれた山形のサポーターさんから「今度どこの試合行きますか?」「今度話かけてもいいですか?」とか、少しずつ広がって、最近では、ハーフタイムに子供たちが遊びに来てくれたりして。すごく嬉しいし、そうだよ、みんなで楽しもうよって。
でもまだ、「サッカー行ってみたいけどルールがわからない」とか、まだそこのハードルは超えられていないなと思いました。
一緒にサッカー観戦行こうよ!
(シンディー)それから、ルールわからなくても楽しく観戦できる方法はないかなと思って、サッカーを観たことない女芸人を中心に何十人か集めて、ツアーみたいなものをやりました。
ガイドさんじゃないけど、何時に集合、何時にどうしてこうしてとか、スタグル(スタジアムグルメ)の案内とか、サッカー観戦の仕方を全部説明して、ブーイングがあるかもしれないけど、これは別に怒っているわけじゃないからとか、とりあえず「山形ディオ!」を覚えてもらって、参加してみない?とか。
疲れたら座ってもいいし、好きに見ていいよって言って。そしたら男の子なんか、一番前に行って一緒に応援を始めて。女の子はスタグルを食べながら「今どうなってるんですかぁ」とか。私はそれでいいと思いました。で、帰りに「どうだった?」って聞いたら、ルールも選手もわからなかったし、山形に縁もゆかりもないけど、すごく面白かったって。また行きたいと言ってくれました。
今度はサッカー初観戦という後輩を連れて、味スタに試合を観に行きました。そしたらその後輩は、応援の迫力に驚いていて、「サッカーの応援ってこんなにすごいんですか、ちょっと恐いですね。」って。その時はメインスタンドで観ていたので、左右からの応援合戦に、私みたいなサッカー好きな人からしたら、おーってなるけど、そうか、初めて来た人とっては、やっぱり恐いのかと。
次にハーフタイムにトイレに行ったら行列ができていて。私が時計見て「これちょっと後半のキックオフ間に合わないかもなぁ」と言ったら、「え、待ってくれないんですか」って言ったんですよ。(笑)そうかこういう感覚もあるんだと思って。
その子には、「誰か一人カッコいい選手がいたら、その選手を追いかけて観るのもありだよ。」と教えてあげたら、「はい!そうします!」って。試合後に選手が挨拶しに来てくれるじゃないですか。その時どういう反応するのかなと思ったら、勝手に前に行って、その選手の写真を撮って、手を振っているんですよ。そして何を言うのかと思ったら、「私、今選手と目が合いました」って言って。(笑)
サッカーが私の人生を変えてくれた。
私は別にサッカー界の偉い人でもないし、ただ一人で地味にこういう活動をちょこちょこさせてもらっているだけですけど、SNSで私がいつもサッカーのことばかり投稿しているので、サッカーに興味のないフォロワーさんからしてみたら、「なんかいつもサッカーだよね。」「サッカー以外のことはしてないの?」とか指摘されることもありますが、逆に、よくモンテディオ山形のことをツイートしているので、「モンテディオ山形と聞くと、シンディーさんのことを思い出すようになりました」と言ってくれて。
サッカーが、私の人生を変えてくれたというと大袈裟ですが、こんなにもハマって、女子サポーターをもっと呼びたいって勝手に思ったときに、自分がものまねの仕事をしているというのがあったので、ものまねとサッカーを融合できないのかなと。
以前は一人でスタジアムに行っていたので、試合前やハーフタイムとか、ずっと椅子に座ってスタグル食べながらネタ帳開いて、自分のライブのネタを書いていたんですね。
そんな時、ふと周り見たら、女子サポが楽しそうにキャッキャッしている姿を見て、なんか面白いなって。スマホの写真見ながら、わぁーなんとかだカッコいいって話していたり、みんなで写真撮ろうと言って盛り上がっている女子を見ていたら、なんかゴール裏の女子って面白いな、試合中の女子サポも面白いけど、
チームの状況だったり成績だったり、いろんなアクションがあって、あ、コレだ!って思ったんです。
私は、サッカーにおける女子サポーターの真実をものまねという形で伝えたい、こういう女子サポがいるんだよっていう。きっとサッカー好きな人からしたら、あぁーなんかわかる、あるあるかもしれないし、サッカーを知らない人からしても、そんな人本当にいるの?そんな人いるわけないじゃん?と思っていただけたら、ぜひ観に来てください!って言えるし!これ、いけるなって思って、それで女子サポーターものまねをつくろうと思いました。
それから私は、スタグルに行っている時も、女子サポーターを見て、あぁこういうのあるんだとかメモして、ゴール裏でも、あぁこういうのがあるねとか、敵チームの女子同士だけど、こんな会話で盛り上がっているんだとか、ネタのストックを作っていって、それを発表させてもらったのが、『燃えろ!J2党』という阿佐ヶ谷ロフトAさんでやっているイベントが最初でした。あとは黒柳徹子さんがもしもモンテのチャントを歌ったらとか、そこから広がっていった感じです。
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