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『世界最高額のSB』アーセナルDFベジェリン~「変化」への適応が促す「進化」

hirobrown

2017/02/01 21:35

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NEWS

 1月16日、スイスのスポーツ研究機関=CIESが発表する『サッカー選手の市場価値ランキング』が発表となり、これまでトップだったバルセロナ所属のアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ選手に替わり、クラブのチームメイトであるブラジル代表FWネイマール選手がトップに選出されました。

 評価額の算出には、試合の出場時間数や得点数を始めとしたパフォーマンス数値に加え、年齢や契約内容も多く関わって来ます。

 特に最近の移籍市場ではどこの強豪クラブにも人材不足であるセンターバックの希少価値が高いため、昨夏にエヴァートンからマンチェスター・シティへ移籍したイングランド代表DFジョン・ストーンズ選手を始めとする若手DFには高額な移籍金が必要となるケースが増えています。

 そのため、今回のランキングトップ100にはそのストーンズ選手を始めとするDFが多く選出されました。

世界最高額のSBとなったベジェリン~40m走でウサイン・ボルトを越える超絶のスピード


40m走では『人類最速の男』ボルト選手よりも速いため、現地高級紙でこんな加工写真も掲載された。by The Independent

 その中でも未だにプロデビューを果たしたクラブから移籍をしていないにも関わらず、『世界最高額』を維持するサイドバックがいます。

 イングランドの名門アーセナルに所属する、エクトル・ベジェリン選手。昨夏の段階ではDF全体でも同ランキングで最も評価額が高かった、21歳の若きスペイン代表の右SBです。

 ベジェリン選手の特徴は何といってもその爆発的なスピード。2014年にはアーセナル夏キャンプ恒例の40m走で、それまでの最速だったセオ・ウォルコット選手を抜く4.42秒、翌年には4.41秒を記録。

 この記録はあの「『人類最速』の陸上選手=ウサイン・ボルトが100m走で世界新記録を出したレースでも、40mの段階ではベジェリンの方が2m先を走っている」、という驚くべき記録となっています。

偶然が重なったアーセナル加入とSBへのコンバート


トロフィーにキスするバルセロナ下部組織時代のベジェリン。by Indobolapost.com

 2011年、バルセロナの下部組織に所属していたベジェリン選手は、当時のアーセナルの主将だったスペイン代表MFセスク・ファブレガス選手(現・チェルシー)がバルセロナへ移籍するのと入れ替わりでアーセナルに加入しました。

 当時16歳だったベジェリン選手はウイングを務めるアタッカーでしたが、偶然にもアーセナルのスカウトが視察に訪れた試合では、負傷者が出た関係でDFとして出場していました。

 ベジェリン選手自身はウイングとして攻撃力に自信を持っていたものの、先頃ACミランへ高額な移籍金で加入したスペイン代表歴のあるFWジェラール・デウロフェウ選手を筆頭に、当時のバルセロナではBチームを含めた下部組織でも将来を嘱望されるアタッカーが数多く在籍していました。

 そんな世界最高の育成組織の中ではさほど目立つ存在ではなかったベジェリン選手は、「このままではプロ契約すらままならない」と考え、16歳でアーセナルの下部組織へ移籍する事を決断。

 その上でアーセナルは彼にDFとしての可能性を見ており、「守備の事など何も知らない」ままに異国で右SBへコンバートされる事になりました。

ハードワークと出会いを大切にする好青年


ベジェリンの恩人、アーセナルのヴェンゲル監督(左)とボウルド助監督(右)by Sportskeeda

 ただ、幸運だったのは彼がアーセナルに加入した当時、クラブの黄金時代を支えたDFでもあったスティーブ・ボウルド氏がアーセナルのU-18チームの監督を務めていた事。

 その1年後の2012年夏からトップチームの助監督へと昇格する事になるボウルド氏は、ベジェリン選手にDFとしてのポジショニングや自陣でのゾーン守備を手取り足取りの指導で叩き込んでくれた恩人です。

 そんな恩人がトップチームから見守ってくれる状況の中、2013年の夏にトップチーム契約を交わしたベジェリン選手。プライベートではトップチームで同時期にレギュラーへと定着する事になるフランシス・コクラン選手らを預かった事もある温かなホーム・ステイ先で安心して生活を送る事が出来ていました。

 恩人との出会いを大切にし、生活環境の基盤を安定させた事で、「ハードワークは絶対に裏切らないし、それが自信にもなる」と語る意欲的な好青年はさらなるステップを踏む事になります。

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