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金崎夢生=柳沢敦+鈴木隆行?『鹿島FWの流儀』を科学する!

hirobrown

2017/01/21 22:00

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NEWS

『鹿島の流儀』は”勝点を奪えるFW”~一切無駄のない動き出しの優先順位


鹿島のレジェンドFW柳沢。鹿島でリーグ戦2桁得点は僅か2回(他に京都で1回)。得点は量産できないかもしれないが、勝点を量産する『鹿島の流儀』を体現するFWは、現在コーチとして鈴木優や赤崎ら若手FWの指導にも取り組んでいる。by サッカー各国クラブユニフォーム

 そんな鹿島のFWを注意深く見ていると、ある特徴が発見できました。それは『動き出し』の部分です。

 カウンターや速攻時には相手DFライン裏へ抜ける事を優先しますが、基本的にはまずは①最前線でパスを受ける事を模索し、クサビとなる縦パスを足下で受けてワンツーの的や自ら攻撃の起点になろうとします。そこでパスを受けられなかった場合、次は②中盤へ降りてワンタッチやツータッチでシンプルにボールを捌きます。

 それでもボールを受けられなかった場合は③サイドへ開いて足下へ受け、味方が攻めあがるタメを作るため、あるいはサイド攻撃で数的優位を作る仕掛けに関与します。

 そこでも受けれなかった場合は④サイドに開いたポジションから相手DF裏へのスペースへ走り込みます。すでに自分がいったん中盤へ引いてからサイドに開く動きをしているため、相手DFライン裏にはたいていスペースが拡がっています。そのためスペースを自ら作る予備動作は必要ありません。と言うよりも、通常の動きが全てスペースを作るための予備動作となるよう、その動き出しの順番や組み合わせに一切の無駄がない抜け目のない動き方が備わっているのでしょう。

 ちなみに④の動きをしてもボールが来なかった場合はオフサイドラインに入ってしまいますが、オンサイドに戻った場合に次は①のクサビのパスを受ける動きに戻りやすくなります。FWに限定されているとはいえ、そのFWの動きを効果的に使うという意味でも、これこそまさに、『鹿島の流儀』を見た気がします。

鹿島FWの動き出しルーティーン

①クサビとなる縦パスを受ける。
②中盤に引いてシンプルにボールを捌く。
③サイドに開いて起点となる。
④サイドに開いたポジションから裏のスペースへ抜ける
以上の①~④を順番に繰り返し、④が終わると①に戻る。

金崎夢生=柳沢敦+鈴木隆行=鈴木優磨


現在のエースFW金崎(左)と20歳の鈴木優(右)は柳沢と鈴木隆のプレースタイルを兼ね合わせたようなFW。by アニマルジャーニー

 ただ、面白い事にこれだけ優秀なFW陣を輩出し続け、チームとしてはJリーグで断トツのタイトル獲得数を誇っているにも関わらず、鹿島所属で得点王を獲得したのは2008年のマルキーニョス選手の1回限りです。

 そのマルキーニョス選手が歴代FW陣の中でも最も守備に運動量を割いたハードワーカーだった事が象徴しているように、鹿島のFWには攻守に渡って運動量を要求されます。その負担が個人としての得点量産にはあまり繋がらず、得点王どころか1シーズンで15得点を越える選手も少ない傾向にあります。実際、マルキーニョス選手も得点王を獲得したシーズン以外は15得点以下に終わっています。

 また、鹿島はチームとしてカウンター攻撃を必殺の武器として常備しているため、水準以上のスピードは必要不可欠。典型的なポストプレイヤーはフィットできないのは歴史が証明しており、田代選手や長谷川選手のようなストロングヘッダーでもスピードを兼備していました。

 「FWも11人の1人」として守備参加はもちろん、組織的な攻撃の一部として機能性を求められるのはサッカーという競技が進めば進むほどに、その度合いは増しています。鹿島はFWを11分の1として見立ててチーム作りをして来た日本では最初のチーム。それゆえ、FWに対する要求が多岐に渡る現代に置いて、その継続の強みが出ているからこそ強さを発揮しているように感じます。

 その点に置いても面白いのが現在の鹿島のエースFW金崎夢生選手。彼は欧州移籍を経験し、技巧派ドリブラーからタフなFWへと変身した『海外組』でもあるため、現在のチームの若手にマジーニョ選手やマルキーニョス選手が与えたような影響や刺激、経験を注入しています。海外組がJリーグに復帰して与えられる影響力はJリーグが25年目を迎える成長の証です。

 しかも上記したように、現在のチームの2トップには土居選手のような攻撃的MFが組み込まれる実質は1トップ。金崎選手のプレースタイルを見ていると、上記したような『鹿島FWの流儀』の動き出しを繰り返しながらも、柳沢選手のような技巧的な部分と鈴木隆行選手の野性的な部分を兼ね備えているように見えます。鹿島のFWもスケールアップしているのです。

 そんな金崎選手を見ながら日進月歩の成長を見せ続ける20歳のFW鈴木優磨選手もまた、金崎選手のように1人で前線を任せられるタフなFWに成長しそうな気配が漂っています。

 鹿島のFWは動き出しに鋭さがあり、相手との駆け引きに優れていますが、自らの得点はそれほどでもない。でも代表クラスのFWは輩出していて、何よりチームは歴代で考えると他クラブに比類なき強さを見せている。鹿島のFWは「得点」を奪う事よりも、「勝点」を奪う事に長けているのもかもしれません。

 2列目の選手が欧州クラブに高く評価される日本。FW以上に得点力のある彼等を活かすためにも、日本代表はストライカーの不足を嘆いたり、課題に挙げたりするよりも、鹿島のようにFWにも組織的な攻撃に関与するような役割を与えた方が良いのではないでしょうか?

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