by Jleague.jp
「寡黙な男は脚(イタリア語で”ガンバ”)で語る~!万博のファンタジスタ~」のキャッチフレーズで語られるガンバ大阪の元日本代表MF二川孝広選手の東京ヴェルディ1969へのレンタル移籍が発表、7月3日に新天地でのデビューを飾りました。
シャイ過ぎる性格ゆえ、結婚した同僚選手がいても直接口に出して、「おめでとう」と言えず、急にその選手のロッカーに花束を置いて帰るというエピソードもあった二川選手。
そんな無口な二川選手がレンタル移籍とはいえ、トップチーム昇格から17年半、高校年代となるガンバ大阪ユース時代からの加入とすると約21年間を一筋に過ごしたG大阪を離れる決心をしました。
類まれなスルーパスを武器とする”イ二エフタ”の恋人は得点量産のブラジル人助っ人FW
2000年にトップチームへの昇格を果たし、2003年シーズンからG大阪のエースナンバー10番を着てからも13年半を過ごして来た二川選手。
その類まれなパスセンスは、特に2002年から10シーズンの長期政権を築いた西野朗監督に重宝されました。西野監督はチームの選手の背番号も全て決めていたという事からも、二川選手への信頼と愛情を感じさせました。
二川選手の活躍と共に、チームもクラブ史上初タイトルとなる2005年のJ1リーグ優勝を皮切りに、2007年のヤマザキナビスコカップ、2008年のAFCチャンピオンズリーグ、2008,2009年度の天皇杯2連覇など、数多くのタイトルを獲得。さらに2005年から2012年までの8シーズン中5シーズンで「リーグ最多総得点チーム」となり、攻撃サッカーの看板を掲げるチームで重要な役割を担っていました。
二川選手の代名詞は、狭いスペースの中でもワンタッチで前を向けるトラップの正確さや、その独特の間から繰り出される極上のスルーパスの数々。その華麗なプレースタイルから、イタリア語で「想像力のある選手」を意味するファンタジスタをもじった”ファンタジフタ”や、スペイン代表やバルセロナで得点に直結するプレーを披露し続けるアンドレス・イニエスタ選手から”イ二エフタ”という異名をとるほどの攻撃的MFです。
その類まれなパスセンスに支えられて来たのが、ユース時代の同級生である元日本代表FW大黒将志選手(現・モンテディオ山形)。そして、マグノ・アウべス選手やバレー選手、レアンドロ選手(現・ヴィッセル神戸)など、得点を量産して来たブラジル人の助っ人FW達です。
特にマグノ・アウべス選手(上記写真)は2006年シーズンに26得点でJリーグ得点王にも輝きました。どう見ても奥手の二川選手にとって、または得点を量産させてくれるブラジル人助っ人FW達にとっても、彼等は相思相愛の”恋人”同士のように見えました。(注:2005年もアラウージョ選手が33得点で得点王になりましたが、二川選手は控えか左ウイングバックでした。)
ガンバのJ2降格よりも驚かせた急転直下の結婚発表
2011年シーズン限りで退任した西野監督が10年間の長期政権の中で「心残りは?」と聞かれると、「二川を結婚させられなかった」と冗談交じりに語った言葉は、ファン・サポーターの方々ならば、「思わず納得」、してしまうエピソードの1つです。
そんな二川選手は2013年の1月に急に一般女性との結婚を発表。チームメートも「クラブの公式HPの発表で知った」というビッグサプライズでした。
実はG大阪は2012年シーズンにJ1リーグで17位に終わり、2013年シーズンのJ2降格が決まっていました。このシーズンもJ1最多得点を記録し、新旧の日本代表選手が揃ったG大阪のJ2降格も驚きでしたが、二川選手の結婚はそれ以上の驚きでした。
チームは2013年にJ2リーグで優勝し、翌年にJ1リーグとナビスコカップ、天皇杯と史上初のJ1昇格初年度の3冠を達成するわけですが、この”福”を呼び込んだのは二川選手なのかもしれません。以前より笑顔が増えましたし。
長谷川ガンバでは出場機会に恵まれずに移籍を決断
by GAMBA〜常勝軍団へ〜
二川選手自身はJ2へ降格した2012年シーズンも好調だったのですが、2013年のクラブ史上初のJ2リーグを戦うシーズンから就任した長谷川健太現監督の下では、出場機会を毎年のように減らして行きました。
特に2014年シーズンの後半戦から著しく出場機会が減り、チームが3冠を達成する中で二川選手の先発出場はリーグ戦では僅か6試合に限られました。さらに翌2015年シーズンのリーグ戦に限っては、僅か2試合の途中出場のみと激減。
今季はACLで1試合プレーしただけで、リーグ戦ではベンチ入りすらなし。J3で新設された23歳以下の選手で構成されるガンバ大阪U23チームのオーバーエイジ枠選手としての出場をメインにプレーしていました。
これでは長谷川監督が日本代表FW宇佐美貴史選手のドイツ・アウクスブルクへの移籍に伴い、「重要な選手だから」と慰留されても納得は出来ないでしょう。
少し前に筆者が当コラムで執筆した記事に、今季からG大阪に加入したFWアデミウソン選手がチームにフィットしない理由を述べましたが、二川選手もこの理由に似た部分があるのでしょう。
攻撃的かどうかと言うよりも、現在のG大阪ではタレントよりもシステムが優先されるため、今年で36歳となった二川選手は弾き出された格好となってしまいました。
関連記事
タレントかシステムか?アデミウソンがガンバ大阪にフィットしない理由
新たな挑戦先=ヴェルディは理想的な環境のはず?移籍の影にはフッキの影響も
サッカー選手としての実力よりも、コミュニケーション力の部分が心配な二川選手。ただ、東京Vでチーム強化を担当する竹本一彦ゼネラルマネージャーは、二川選手の若手時代にコーチとして直接指導を受けた人物。しかも竹本GMの奥様は、なでしこジャパンの高倉麻子新監督です。
さらに、今季は23歳以下のチームでプレーして来た二川選手にとっては、財政面の乏しさもあって若手偏重のチーム編成となっている現在の東京Vは理想的なはず?です。
尚、この二川選手の移籍には元東京Vに所属したブラジル代表FWフッキ選手がロシアのゼニト・サンクトぺテルブルグから中国・上海上港への完全移籍に伴う移籍金の0.5%となる額が東京Vに振り込まれるという契約条項から捻出した資金で可能になったという噂もあります。色んな事が重なって決定した移籍劇だったのです。
36歳になった二川選手ですが、この移籍が誰にとっても良かったと言えるにしてもらいたい。そして彼の新たなチャレンジを楽しみにしたいと思います。