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タレントかシステムか?アデミウソンがガンバ大阪にフィットしない理由

hirobrown

2016/05/09 22:28

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NEWS

ガンバ大阪1
by GAMBA OSAKA

2014年度の国内タイトル3冠王者となり、昨季のAFCチャンピオンズリーグでJリーグ勢最高位となるベスト4へ進出していたガンバ大阪。今季はアジア制覇を現実的な目標と捉えていました。
その上で昨季はJ1・横浜FマリノスでプレーしていたFWアデミウソン選手を獲得。下部年代のブラジル代表で10番を付けていた実力者の獲得により、パトリック選手と宇佐美貴史選手の2トップの個に依存傾向が強まっていた攻撃にバリエーションを加える補強でした。まさに、アジア制覇への「ラストピース」となるはずでした。
しかし、G大阪は今季のACLでグループステージを1試合残しての最下位と敗退が決定。最終的にはクラブ史上初の未勝利(2分4敗)に終わってしまいました。
特に敗退が決まったホームでの第5節・水原三星戦(韓国)でPKを失敗するなど、大会通して無得点に終わったFW宇佐美選手を筆頭に、6試合で僅か4得点(9失点)に終わった得点力の低さは、もともと攻撃型のチームとして鳴らしたG大阪のファン・サポーターの皆様にとっては心苦しかったはずです。

ACL6試合でのシュート数
ACL6試合でのシュート数

ただし、上記の表のように長谷川健太監督が率いる現在のG大阪は20本以上のシュートを放つ事が日常だった西野元監督時代とは全く異なるサッカーをしています。にしても、ACL6試合でのシュート数の合計が54対90では・・・とも思います。
ただ、この際、攻撃的か守備的か?の議論は抽象的ですので、西野元監督と現在の長谷川監督がチーム作りをする上での選手起用の特徴を示したいと思います。
その中でアデミウソン選手も4試合の出場で最終節の終了間際に1得点したのみの結果に終わりました。ここでは、その期待の大物助っ人=アデミウソン選手がフィットしきれない理由をG大阪の歴史も通じて考察します。

「タレントありき」だった西野監督時代

ガンバ大阪2
by サッカーキング・オピニオン

その中でアデミウソン選手も4試合の出場で最終節の終了間際に1得点したのみの結果に終わりました。ここでは、その期待の大物助っ人=アデミウソン選手がフィットしきれない理由をG大阪の歴史も通じて考察します。それについて西野元監督の場合が常々口にしていたのは、「ガンバでは”タレントありき”のチーム(システム)を作る」という言葉です。
象徴的だったのは2005年に悲願のクラブ史上初タイトルとなるJ1リーグの優勝を飾ったシーズンでした。当時の日本代表で主将としてプレーしていたDF宮本恒靖氏(現・G大阪ユース監督)は4バックで組む試合はボランチとして起用されるか、ベンチに座ることすらありました。代表のキャプテンがJリーグで試合に出れない中、”タレントありき”のチーム作りを考えた上で3バックを採用し始めたのが2005年の夏頃でした。

2005年と2008年の基本布陣
2005年と2008年の基本布陣

同時に2人で49得点を挙げるアラウージョ選手(33得点)と大黒将志選手(16得点)を筆頭に豪華なメンバーが揃った攻撃陣に、ユース出身で当時はまだ19歳だったMF家長昭博選手(現・大宮アルディージャ)を組み込むためにも、彼を左ウイングバックに据える事で多くのタレントが共存できる布陣でした。家長選手が控えに回る際は、その位置には二川孝広選手が入っていました。家長選手も二川選手もトップ下が本職の選手なので、如何にタレントを多く組み込ませるか?攻撃に重点を置いて選手をセレクトしていたのかが窺えます。
2008年にACL優勝を成し遂げたメンバーはより日本人色の濃い”和”のテイストがありましたが、本来は右サイドバックの加地亮選手を3バックに組み込んだスクランブル布陣も頻繁に採った西野監督の強気の采配はお見事かつ痛快でした。

「システムありき」の長谷川ガンバは消去法?

長谷川ガンバの基本布陣
長谷川ガンバの基本布陣

逆に現在の長谷川監督は今季で4年目を迎えますが、3バックでスタートする事は一切ありません。1トップには長身FWであるパトリック選手や長沢駿選手が起用され、CBコンビはカヴァーリングでサイドに出る事を許さず中央で構えること、4バックがぺナルティエリアに入って相手のクロスに対応する守備ブロックを優先する基本コンセプトが徹底されています。従って相手のサイド攻撃に対してはサイドMFが戻って対応せざるをえません。
そのため、サイドMFには運動量や守備力が優先されるのですが、これらを守備的かどうかという観点ではなく、システムかタレントのどちらを優先しているのか?と問われれば、それは 「システムありき」なのは明らかです。
「システムありき」で選手を選ぶということは、その選択は既存の概念があって成立します。つまり、その観点から言えば、それは消去法になります。
消去法となった場合、長身FWが最優先される上で、攻撃の仕掛けと崩し、フィニッシュのほぼ全てに多く絡む宇佐美選手も優先されるとなると、もうアデミウソン選手の入る隙間は限られてしまいます。これまで在籍して来たブラジル人FWの選手を輝かせていた二川孝広選手も同じような意味合いで昨季はリーグ戦での出場機会が1試合の途中出場のみと激減しました。

ガンバ大阪3
by SOCCERDIGEST WEB

アデミウソン選手の場合は新加入であるばかりでなく1年間のレンタル契約であるため、他のアタッカーの選手よりも優れている部分は個の能力のみ。しかし、その個の能力ではパトリック(長沢)選手と宇佐美選手が優先されるので・・・。
怪我があったとはいえ、復帰してからもリーグ戦でベンチを外れることもあったアデミウソン選手がフィットしない理由はココにあったと言えるでしょう。

アデミウソン選手の特徴は個人で局面を打開できるだけでなく、周囲とパス交換しながら連動して崩せる部分にありますが、それが「システムありき」でチームを作っている上では不利に働いていると感じられます。もちろん、アデミウソン選手がもっと決定力に長けた選手であれば、その序列を覆すことも可能なのですが、もしそれほどの選手であればJリーグでプレーしている事もないはず。
そのジレンマを多くのG大阪のファン・サポーターの皆様が感じておられることでしょう。

開幕当初はメディアの至るところで「産みの苦しみ」と表現されていましたが、今は検証もなしに期待外れという烙印を押されいるのが残念でなりません。

今後アデミウソン選手が活躍するには長谷川監督が「システムありき」のチーム作りを改める必要があるのではないでしょうか?それとも逆にアデミウソン選手が守備戦術をマスターするのが優先でしょうか?もしそうなら、新スタジアム建設で資金が乏しいはずのクラブがレンタル料や年棒含めて総額1億7000万円以上をかけて1年のみのプレー環境を用意した意味がなくなるのではないでしょうか?

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