by Hannover 96
ボスニア・ヘルツェゴビナ代表に1-2と敗れ、惜しくも準優勝に終わったキリンカップでの日本代表。
ただ、日本は本田圭佑選手と香川真司選手を負傷で欠く苦しい台所事情。そんな中で清武弘嗣選手は決勝でも先制点を決めるなど、ここ最近の代表戦では多くの得点に絡み、2大エースに匹敵する活躍を披露しています。
そんな清武選手が所属していたハノーファーは今季、清武選手自身が2度の負傷で長期離脱している間に極度の不振に陥り、ブンデスリーガ最下位で2部降格へ至りました。
チームの10番を背負い、リーグ21試合の出場で5得点6アシストで6度のマン・オブ・ザ・マッチを受賞。個人としては活躍を見せた清武選手の下にはドイツ国内外から獲得のオファーが殺到。そしてスペインのセビージャへの移籍が決定しました。
El #SevillaFC y el @Hannover96 llegan a un acuerdo para el traspaso de Kiyotake https://t.co/OwVs1iqOv9 pic.twitter.com/duIcP3Y9We
— Sevilla Fútbol Club (@SevillaFC) 2016年6月10日
1996年当時は前園真聖さんの獲得も狙ったセビージャ。あのアルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナも在籍したクラブに迫ります。
今季のセビージャ~EL3連覇の快挙とアウェイ未勝利
by SOCCER KING
スペイン南部のリゾート地であるアンダルシア州のセビージャに本拠を置くセビージャFCは、今季のUEFAヨーロッパリーグで大会3連覇の偉業を成し遂げたクラブです。
ただ、その裏では国内リーグのアウェイ戦を未勝利(9分10敗)で終える極端な内弁慶ぶりも露呈していました。
今季のセビージャは、昨季のEL優勝チームとして欧州最強の座を決めるUEFAチャンピオンリーグにも参戦。グループリーグ3位で敗退しましたが、ELの決勝トーナメントに回っての偉業達成となりました。
その過程ではスペイン国内カップの決勝進出も含め、公式戦を全63試合も戦うという超過密日程を乗り越えた末の戴冠だったのです。
今季セビージャの全公式戦数
敏腕モンチSDの慧眼で欧州トップレベルに成長
ラモン・ロドリゲス・ベルデホ=通称”モンチ”SDby The Independent
セビージャを語る上で外せないのは、「世界ナンバーワンの強化担当」とも言われる、ラモン・ロドリゲス・ベルデホ=通称”モンチ”SD(スポーツ・ディレクター/写真)の存在です。
2000年夏にモンチ氏がやってくるまで、セビージャは1部リーグと2部リーグを行き来する”ヨーヨークラブ”でした。それよりも電気代を払えないほどの深刻な経営危機に直面していたのです。
しかし、選手の移籍金ビジネスの高騰に着目し、モンチ氏主導の下で無名の有力な若手選手を、「安く買って、高く売る」というポリシーを貫いてチームを強化して来ました。
その甲斐あって、2006年と2007年にもELの前身に当たるUEFAカップで連覇しながら、国内の1部リーグでも5位前後をキープできるようになりました。
主力に成長した若手選手が去ってしまうのは寂しいですが、その選手が残した移籍金で3人の有力選手を獲得出来れば、チーム力も選手層も確実に上がります。
また、移籍金収支で得た資金はチーム強化と借金返済はもちろん、育成組織への投資でも成功を収めています。
セビージャの下部組織からは、現チームの10番を着るMFホセ・アントニオ・レジェス選手や、レアル・マドリーのDFセルヒオ・ラモス選手、マンチェスター・シティのMFヘスス・ナバス選手、リヴァプールのDFアルベルト・モレーノ選手などスペイン代表選手も多く輩出しています。
セビージャ直近20年の成績
セビージャのクラブ事情に適した知将~懸念されるエメリ監督の退任
ウナイ・エメリ監督by Liverpool Echo
ただし、来季以降を懸念されるのが、2013年1月の就任以来、3年半に渡って指揮を執って来たウナイ・エメリ監督が退任してしまうことです。EL3連覇を毎年のように大幅に選手が入れ替わる中で成し遂げられたのは、エメリ監督の存在あってこそでした。
エメリ監督自身も主力選手が引き抜かれる中でのチーム作りは、2008年から2012年までのバレンシアの指揮官として経験しており、クラブ史上初の3年連続CL出場権獲得という結果も残している知将です。
特筆すべきは、スタイルや哲学に拘りがないことです。毎年チーム編成が変わるため、チーム作りは単年ごとにやり直しを強いられるので、逆にスタイルに拘らない事に拘りがあるくらいです。
また、国内リーグでバルセロナやレアル・マドリーのようなメガクラブと対戦する事もあるため、実力が格上の相手には守備的な戦いを、格下には攻撃的な戦い方を選択できるように、選手個々やチームにその「肌感覚」を植え付けるのに長けているのです。
そのため、セビージャで活躍した選手はどんなチームでも適応できる選手が多くなります。それがそのまま「ブランド力」となり、ELのタイトル覇者の肩書も付くのですから、移籍金も跳ね上がる好循環を呼び込んでいるのです。
そんなエメリ監督の退任で、クラブは大きな転換点を迎えるでしょう。
モンチSDにも退任説?スペイン版セレッソ大阪の未来は?
また、ここへ来て、前述のモンチSDにも退任説が頻繁に流れています。今回は残留する事になりましたが、マンチェスター・ユナイテッドへの引き抜きに遭ったようで、近未来に退団する可能性もあるでしょう。
有力な若手選手の輩出、移籍市場での巧みな交渉術を持つ強化担当、それを理解しながら魅力的なチームに仕上げる監督。ここまで聞いていると、「どこかで聞いた事がある話だな?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
そう、清武選手が所属していたセレッソ大阪に似ているのです。もちろん、規模が比較の対象にもならないですが、清武選手が加入するという意味では興味深いと思います。
セレッソはレヴィー・クルピ監督と梶野智強化部長の同時退任により、一気にJ2降格に陥り、未だに負の連鎖から逃れられていません。当コラムでもそうした記事を執筆したのですが、ある読者の方からその状況を、「現在は特定の個人に依存した中小企業のような経営から脱しようとしています。」とのコメントをいただきました。
もしかすると、今のセビージャもこの段階にいるのではないでしょうか?来季もEL優勝チーム枠により、CLに参戦する事が決定しているセビージャですが、国内リーグでは7位に終わっています。6年連続でCL出場枠の4位以内には入れていません。
ここがセビージャの限界で、実際に2011年と2012年にリーグ9位となり、有力選手も台頭せずに頭打ち状態になった事もありました。エメリ監督との”結婚”で元いた場所へは戻ってきましたが、欧州最高クラスにまでは脱皮できていないのも現実と言えるでしょう。
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そんなセビージャに、イタリアのインテル・ミラノへの移籍が濃厚な司令塔=エネル・バネガ選手の代役として加入するであろう清武選手。セビージャをもう1段上に引き上げられた時、清武選手は本田選手や香川選手と肩を並べるどころか追い越す存在になるでしょう。