よく”ワールドクラス”という言葉が頻繁に使われるサッカー界ですが、我々が生きる世界(業界?)でも”世界基準”という言葉は使われます。
今後はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が実際に導入されれば、我々の生活の至るところでグローバル経済の影響を感じる事になると思います。
と、いきなり堅苦しく入りましたが、本稿ではサッカーにとっての”ワールドクラス”という言葉を音楽に喩えて抽象的ながらも解釈していきたいと思います。
古くは少年ナイフ、現在のCrossfaith~”海外組”が存在する音楽界
by 激ロック
現在の日本代表には欧州トップリーグのクラブで活躍する選手が大勢います。10年前なら一握りの選手だけでしたが、今は日本代表メンバーの半数を少し超えるぐらいなのが日常になりました。これを音楽業界で喩えてみると、「海外でライヴをする、CD(音源)を出す」というのが10年前だったように思います。
日本人サッカー選手の多くが欧州クラブへ渡り、しかもレギュラーとしてプレーしてステップアップとなる移籍をし、完全に拠点を欧州に置く選手が多くなった現在。それは日本人アーティストが単発のライヴではなく、10公演以上の欧州ツアーやアメリカツアーを敢行するのが普通になった現在の音楽界に似ているのかもしれません。実際に欧米のレコード会社と契約する日本人アーティストも増えました。
そうなると、この”海外組”には日本でより欧州での方が評価される選手が存在するようになると思います。現在はスペインのリーガエスパニョーラ1部・エイバルでプレーするMF乾貴士選手などは代表には呼ばれていませんが、今まで誰1人として活躍できなかったスペインの地で主力選手として奮闘しています。また、日本でのプロ選手経験がないまま海外クラブと契約したFW伊藤翔(現・横浜Fマリノス)選手や、FW宮市亮(現・ザンクトパウリ/ドイツ2部)選手などの例も増えるでしょう。
近年の音楽界の”海外組”としては大阪出身の5人組ヘビーメタルバンド=Crossfaith(上記写真と下記のミュージック・ビデオ『Devil’s Party』を参照)が挙げられるでしょう。彼等は2014年10月の日本でのメジャーデビューよりも前に欧州ツアーを敢行していました。遡れば1980年代にアメリカで人気を博した女性3人によるロックバンド=少年ナイフは海外での方が人気がありました。少年ナイフは、あのNIRVANAのカート・コバーンが大ファンで、一緒にツアーを回るのに自らオファーをしたぐらいです。現在のCrossfaithもそういう評価です。「これが欧州で評価されるバンドか」という目線で日本でのライヴを楽しみにしている音楽ファンがいるのです。
“世界基準”のテクニックとは?
それでは”世界基準”のテクニックとは何なのでしょうか?コレにもサッカーと音楽で共通する部分があると思います。
日本人サッカー選手が身に付けているテクニックは、欧州や南米のトップレベルの選手よりも上と言えるモノがあります。それはサッカー番組などで取り上げられる数々のリフティングの美技や細か過ぎるフェイントなどです。実際にそれをサッカーの試合で活かせない技術なので何とも言えませんが、あれだけの美技は欧州トップクラブのスター選手でもあまり出来ないのに、Jリーグの選手の多くは出来ます。(例は上記の乾選手の動画)
音楽界でも、日本のロックバンドのギタリストが披露する速弾きのフレーズやギターリフは、弾く難易度からすれば相当にハイレベルなモノです。日本人ギタリストが海外のヒット曲の奏法をコピーするのは非常に容易なのです。しかし、コチラも「世界に響くかどうか?」が問題で、歌詞が日本語が主体になる限界もあるのかもしれません。Crossfaithや少年ナイフは英詩中心だからこそ欧米で火がついたのでしょう。
“第2の釜本”の誕生には、『上を向いて歩こう』に続く世界的ヒット曲が必要!?
by あす香
とはいえ、普遍的なモノは万国共通で伝わり、評価されるモノです。
欧米で坂本九さんの『上を向いて歩こう』(英国では『SUKIYAKI』など国によってタイトルが違う)が大ヒットした1960年代。サッカー日本代表は1968年のメキシコ五輪で銅メダルを獲得。エースFWだった釜本邦茂さんは大会得点王になる”世界的ストライカー”と評価され、未だに”王様”ペレや、”皇帝”フランツ・ベッケンバウアーと親交がある世界のサッカー界のレジェンドとなりました。
もしかしたら、決定力不足が深刻な日本サッカー界にとって、釜本さん以来の世界的ストライカーの誕生には、『上を向いて歩こう』に続く日本語の大ヒット曲が必要なのかもしれません。