ファーストレグ
リヴァプール 3-0 マンチェスター・シティ クロップが敷いたハーフスペース突撃への秘策
スターティングメンバー
エデルソン モラエス
カイル ウォーカー、ニコラス オタメンディ、アイメリック ラポルト
フェルナンジーニョ
ケビン デ ブライネ、ラヒーム スターリング、ダビド シルバ
ベルナルド シウバ、ガブリエウ ジェズス、レロイ ザネ
by @11tegen11
ロリス カリウス
トレント アレクサンダー=アーノルド、デヤン ロブレン、フィルヒル ファン ダイク、アンドリュー ロバートソン
アレックス オクスレイド=チェンバレン、ジョルジニオ ワイナルドゥム、ジェームズ ミルナー
モハメド サラー、ロベルト フィルミーノ、サディオ マネ
by @11tegen11
マンチェスター・シティのビルドアップ
3点のビハインドを追いかけるホームのシティは、立ち上がりから高いインテンシティで相手ゴールに迫り、ファン・ダイクの中途半端な縦パスのカットからカウンターアタックでジェズスの先制点を生み出した。
この試合は特にシティのフォーメーションを数字で表記するのは難しい。選手たちが流動的に動き回っており、従来の捉え方では決して理解できないだろう。しかしそこにいる選手の並びには変化があっても、ピッチ全体での配置には規則性が存在する。
ファーストレグでシティは3-2ビルドアップであり、2CMFに2インサイドハーフが噛み合う形でクリーンにボールを前進させることに苦労した。セカンドレグでは得点を奪わなければならない状況もあって3バックを敷き前線に選手を多く配置したのだが、ビルドアップでも左右非対称を使いリヴァプールのプレッシングを回避することができた。
シティは3-1ビルドアップの変化形である。フェルナンジーニョが中央にいることでリヴァプールのインサイドハーフが寄せづらく、浮いたところでDFラインからボールを引き出し前進することができていた。
シティのインサイドハーフは右のデ・ブライネと左のシルバ。ビルドアップでは基本的にデ・ブライネがフェルナンジーニョの右脇に降りて3トップのギャップボールを引き出し、またよりワイドに開いてインサイドハーフ落とし(レアル・マドリーのクロースなどが行う、高い位置を取ったサイドバックの位置に降りてビルドアップを行うこと)の形を取ることもあった。
先制点が決まった後から少しずつリヴァプールのプレッシングが機能しだす。ボール保持者に寄せる選手は中盤へのパスコースを切りながら(Cover Shadow)、その他の周辺の選手たちは中間ポジショニングでパスが出るとすぐに寄せに行く。サイドにボールを追い込めばタッチライン際でボール奪取、中盤にパスが出れば挟み込む。シティがビルドアップで判断が中途半端になる場面もあった。
試合の時間経過によりビルドアップにも流動性が出てくる。ひとつはシルバの降りる動きである。しかしシルバが降りるとインサイドハーフのチェンバレンが付いていき、中間ポジショニングでフェルナンジーニョの配置的な優位性を消し去ることになりうるので、必ずとも良い形とはなっていなかった。
もうひとつはベルナルド・シルバの降りる動きである。ビルドアップでサイドバックの位置まで落ちてパスコースを作り、ロバートソンを引き出すことで右サイドにスペースを作ることができ、スターリングが流れてボールを引き出してファン・ダイクをサイドに誘い出して仕掛けることができた。
マンチェスター・シティのボール保持とリヴァプールのハーフスペース突撃対応
シティのボール保持はサイドからの仕掛けとハーフスペース突撃を中心に、相手をゴール前に押し込んで愚直に繰り返す。左サイドではサネがワイドで縦へのスピードを活かし、シルバなどがハーフスペース突撃でコンビネーションを見せる。ラポルトやフェルナンジーニョが起点となり、さらにスターリングやジェズスも絡むことで攻撃にバリエーションを生む。
右サイドではベルナルド・シルバがワイドな位置から内側に仕掛けながら、ハーフスペースを攻略するデ・ブライネやスターリングとコンビネーションを見せる。ボールを運ぶ際常に足元にボールを置き、ドリブルのフォームから素早くパスやシュートを放つことができるベルナルド・シルバはポスト直撃の惜しいなどで決定機を作った。またハーフスペース突撃をするスターリングもチャンスを作れていた。
リヴァプールのハーフスペース突撃への対応はファーストレグと同様である。ワイドな選手(サネとベルナルド・シルバ)へのマッチアップはSB(アーノルドとロバートソン)が行い、SB-CB間のギャップにはインサイドハーフ(チェンバレンとミルナー)やワイナルドゥムがシティの選手を捕まえる。サラーやマネはハーフスペースに下がり、起点となるハーフディフェンダーや中盤の選手を抑えていた。
ハーフスペース突撃への対応は徹底されていた一方、サイドチェンジに関しては左右でバラツキが見られた。右サイドからサネへのサイドチェンジに対しては、アーノルドがスライドし過ぎずサイドチェンジに備えており、パスミスやクリアも多く見られた。しかし左サイドからベルナルド・シルバへのサイドチェンジでは深い位置でも成功する場面が見られ、シュートに直結していた。
リヴァプールのボール保持
リヴァプールのボール保持は4-3-3。ウイングとインサイドハーフはハーフスペースにポジショニングし、外外循環の際片方がサイドに流れる。ボール前進からSBが高い位置を取ると、ウイングはハーフスペースから裏抜けを狙う。
リヴァプールではフィルミーノが偽9番的に振る舞う。ライン間に降りたりサイドに流れて起点となり、インターセプトやタックルでもチームを助ける。そしてフィルミーノが空けたスペースを両ウイングが狙うのである。
ジェズスはこの試合ではロブレン側にポジショニング。スターリングはワイナルドゥムをスタートにファン・ダイクへプレッシングをかけ、シルバがワイナルドゥムへスライドする。
シティはリヴァプールの3トップに対して3バック。ハーフディフェンダーがサイドに流れた場合はフェルナンジーニョがギャップを埋めて4バックとなる。そのスペースにはシルバが埋める。
フェルナンジーニョの穴
後半からフェルナンジーニョがDFラインに入り、デ・ブライネがその前に位置。その意図は不明だが、後方に守備ブロックを固めるリヴァプールに対して3バックも必要ないと判断し、2枚を残してSBも上がらせ、さらにDMFの位置にもデ・ブライネを使ってボールを展開しようとしたのかもしれない。しかしフェルナンジーニョが下がったことで中盤の守備の強度が下がり、同点ゴールを喫して試合を殺してしまった。
リヴァプールは後半から前線の並びを代え、右からマネ、サラー、フィルミーノとなる。サラーを前線に残しカウンターアタックの脅威を与え、フィルミーノを左サイドに下げることで守備での貢献をもたらす。パスコースをうまく切りながらオタメンディに寄せてボールを奪い、フィルミーノは特徴を生かして追加点を奪った。
まとめ
イングランド勢対決となった準々決勝のこの組み合わせはリヴァプールに軍配が上がった。シーズンを通してのトレンド、マッチアップでの戦術、180分で決着をつける形式。リヴァプールとシティの試合での駆け引きを定点観測するのは非常に興味深い。
by @11tegen11
by @11tegen11
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— David Sumpter (@Soccermatics) April 14, 2018
チャンピオンズリーグ準決勝はレアル・マドリー対バイエルン、ローマ対リヴァプールに決まった。スペイン勢の独占とはならず、国がばらけた。いよいよレアル・マドリーの3連覇が迫ってきている。