Shooty

ナポリ 1-3 RBライプツィヒ トランジションで試合が決まる

ぱこぱこ・へめす

2018/02/22 08:20

2018/02/21 20:43

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

NEWS

2月に入り、チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグが再開した。今年はワールドカップイヤーであり、各国は選手が怪我をせず調子を上げることを期待しているだろう。欧州各国のリーグ戦を見てみると、プレミアリーグのマンチェスター・シティやラ・リーガのバルセロナなど、優勝に大きく近づいているチームがある。あまりにはやくリーグ優勝してしまうと、コンディショニングで難しい局面を迎える可能性もあるだろう。チャンピオンズリーグ出場権をかけた2位以下の戦いが熾烈になれば気の抜けない試合を重ねることになる。

ナポリとRBライプツィヒはともに、チャンピオンズリーグのグループリーグで3位敗退し、ヨーロッパリーグにまわってきた。ナポリはボール保持で力を発揮するチームであり、グループリーグのマンチェスター・シティとの試合は非常に注目された。

(参照:ナポリの幾何学的な美しさを生み出すトライアングル)

一方のRBライプツィヒはレッドブルがスポンサーを務めるグループの一員であり、南野拓実を擁するザルツブルクなどの兄弟チームである。ドイツの伝統的な3バックによる2トップのマンツーマンディフェンスに非効率性を覚え、4バックのゾーンディフェンスによるプレッシングを導入したラルフ・ラングニックのアイディアを、豊富な資金源を生かしてテクノロジーも使って実践している。彼らはイタリアのアリゴ・サッキを深く研究し、ユルゲン・クロップなど門下生たちはカウンタープレッシング(ゲーゲンプレッシング)の系統を極めている。

グアルディオラがクライフから受け継いだポジショナルプレーを発展させるためにボール保持局面だけではなくネガティブトランジション(ボール喪失)局面を重視し、一方のリアクション型で直接的なゲームモデルを採用しているチームもトランジションを発展させたことは興味深い。

スターティングメンバー

ホセ・ マヌエル・レイナ
クリスティアン・マッジョ、ロレンツォ・トネッリ、カリドゥ・クリバリ、エルセイド・ヒュサイ
マルコ・ログ、アマドゥ・ディアワラ、マレク・ハムシーク
アダム・ウナス、ホセ・カジェホン、ピオトル・ジエリニスキ

ペーテル・グラーチ
コンラッド・ライマー、ヴィリ・オルバン、ダヨ・ウパメカノ、ルーカス・クロスターマン
マルセル・ザビツァー、ケビン・カンプル、ナビー・ケイタ、ブルマ
ユスフ・ ポウルセン、ティモ・ヴェルナー

キックオフは発展するのか

現在では、試合を4つの局面、すなわちボール保持、非保持、ネガティブトランジション、ポジティブトランジションに分けて考えられる。しかし忘れてはならないのは、これはあくまでオープンプレーでの分類であり、これにセットプレーの局面を加える必要がある。ただ実際にはセットプレーで勝敗が決することも多いにも関わらず、トレーニングで多くの時間を割くチームが少ないのが現状である。過密スケジュールでトレーニングの時間が取れないことや、セットプレーは動きが少なく汗が乾いてしまうなどコンディショニングの面でもなおざりにされてしまう。

(参照:トランジションの定義を考察する)

数年前のルール改正で、キックオフでバックパスができるようになった。一度前に蹴る必要がなくなったため、多くのチームが直接ボールをセンターバックや中盤の選手に下げ、ほとんどのチームが前線に放り込んでいる。ナポリの場合は毎回、バックパスを受けたらボールをトラップして止め、クリバリが右サイドに緩やかなロングフィードを蹴る。同じポイントへ蹴ることで選手を密集させ、セカンドボールを高い位置で拾うことが目的だ。

ナポリのボール保持とRBライプツィヒのプレッシング

ボール保持を強みとするナポリが、序盤からポゼッションする形で試合が進んだ。ベストイレブンとは言えず若手を多く起用する中、左インサイドハーフのハムシークを中心に左サイドのトライアングルからの攻撃を試みた。

RBライプツィヒはハーフウェイラインの少し前辺りのミドルサードで守備ブロックを形成してプレッシングを試みた。ボール保持を強みとするチームに対して立ち上がりはハイプレッシングをかけることも多いが、冷静に対応した。2トップは片方がボールを保持するセンターバックに寄せ、もう片方がディフェンシブハーフをカバーする。ナポリ対策としてクリバリにFWをデートさせもう一方のCBにボールを持たせるという左右非対称の形を取るチームもセリエAでは良く見るが、ライプツィヒは特にそのような対策を取らなかった。

ライプツィヒは4-2-2-2とフォーメーションを表記されることが多いが、両サイドがワイドに張らず中盤や前線の選手と群れをなす。ザビツァーとブルマはサイドバックとインサイドハーフの中間ポジションを取り、外循環に対してプレッシングをかけつつ、中盤で挟み込んでボールを奪うことを狙った。


by footballtactics

ナポリは通常通りの方法で前進を試みた。ハーフスペースの入り口、ハーフスペーススクエア、サイドでのトライアングルを活かし、ショートパスを多用しながら縦パスを入れる。ショートパスによって死角の補完ができるとともに、相手にとっては視線がボールに集まりやすく、背後のスペースを使いやすくなる。良いポジショニング(配置的な優位性)に加えて、近づく動きと離れる動きを隣り合う選手がユニットとして行うことで、フリーな選手を使った前進ができる。以下の図では、ハムシークが近づく動きでハーフスペースの入り口に来ると同時に左ウイングのジエリニスキが内側に入り込み、ヒュサイが離れる動きでサイドの高い位置を取っている。他にもハムシークがハーフスペーススクエアへ離れる動きをするなどの形もある。


by footballtactics

クリバリなどからのDF-MFライン間への縦パスに対して、簡単にボールを落とすことが多いが、前向きの選手を利用し視野の補完をしている。またライン間でのポジショニングでは縦パスを受ける選択肢として、上図の紫線のように相手に解決しなければならない問題を与えることもうまい。

ライプツィヒのボール保持とナポリのプレッシング

ライプツィヒは基本的に、ピッチをワイドに使ったボール保持を目指していない。ボールを奪ったら同サイドから素早く攻撃し、ボールを失ってもネガティブトランジションでプレッシングをかけてポジティブトランジションの局面を作り続けてしまう。トランジションで優位性を得るために、サイドチェンジをせずに同サイドから攻めれば人口密度が高まるのでインテンシティが上がり、攻守がシームレスな状況で相手ゴールに近づくことができる。

前半の半ばくらいから、ライプツィヒがボールを保持する時間帯が出てきた。DFラインでは外循環でサイドチェンジをすることもあったが、基本的にはプレッシングが激しければロングフィードを入れ、あとは簡単に中盤の選手にパスをつけてドリブルや同サイドでのパスによって前進した。

ナポリのボール非保持は4-1-4-1である。守備の基準点において、他のチームと比べて相手選手の位置への依存度が低く、味方選手との距離感を保ってゾーンを埋める意識が高い。立ち上がりは中盤から追い越してハイプレッシングをかけ、4-4-2へと変形する。

ナポリの先制点で見られたポジショナルプレー

スペイン語でJuego de Posicion(JdPと省略されることもある)、英語でPositional Play(ツイートではPPと省略されている)と呼ばれるポジショナルプレーについて、日本でも徐々に広まってきている。グアルディオラがバルセロナやバイエルン、マンチェスター・シティで見せているゲームモデルについて、ティキタカと呼ばれてボール保持に目が行きがちであるが、本質はスペースの支配による配置的な優位性である。定義は包括的であり、長文で難解な説明も多いが、5レーン理論やトランジションへの適応によって近年大幅に発展してきた。

(参照:ク゛アルテ゛ィオラやトゥヘルか゛信奉するホ゜シ゛ションフ゜レーとは何か)
(参照:フットボール統計学から考えるハーフスペース活用法)
(参照:トランジションの定義を考察する)

DF-MFライン間に広がったスペースに縦パスを通し、さらに逆サイドのフリーマンの活用でゴールが生まれている。DFラインを上げるのが遅れることでライプツィヒの守備ブロックは間延びしてスペースが生まれ、ライプツィヒ左サイドバックはボールに視線を向けてしまったことでナポリ右ウイングを確認できなかった。

パワープレーで中盤空洞化の弊害

ライプツィヒの3点目は試合終盤、ナポリがクリバリを前線に残した状態の時のカウンターアタックによって生まれた。チーム全体が前掛かりになり中盤が空いてしまうことで、ボール喪失の際にカウンタープレッシングが機能せず、セカンドボールを拾われて簡単に繋がれてしまい、ネガティブトランジションで簡単に数的優位を作られてしまった。

xGプロットでのまとめとセカンドレグの展望

xG(期待点)では0.63-2.63であり、妥当な得点結果となった。ナポリがメンバーを温存したこともあり、質の高いシュートを作り出せなかった。一方ライプツィヒはペナルティーエリア内から何本か質の高いシュートを放っており、3得点という結果に結びつけられた。プレッシングから同サイドで縦に素早い攻撃という形からゴールを奪えており、アウェイの試合で最高の結果を得られた。

セカンドレグでは、ナポリがボールを保持して前掛かりに攻撃を仕掛けることが期待される。ハムシークとインシェーニがスターティングメンバーで出場し、左サイドから何度も攻撃を仕掛ける姿を見たい。ライプツィヒにはホームなので、高い位置からのプレッシングをかけ、エネルギッシュでインテンシティの高いプレーを期待したい。

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう