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ユヴェントス 1-4 レアル・マドリー 変化しないという判断により分かれた明暗

ぱこぱこ・へめす

2017/06/09 12:43

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NEWS

アッレグリの3シーズン目となった今シーズンは2季ぶりに決勝まで辿り着いた。また前回とは異なり着実に補強を行い今度こそ強いスカッドを作ったという点から、ユヴェントスの優勢と考えている人も多かったのだと思う。ピルロやヴィダル、ポグバ、モラタを失ったとは言え、国内外から実力を備えた選手を買い揃えていた。

一方のレアル・マドリーは、昨シーズンに解任されたベニテスの後任として指揮官に就任したジダンが、リーグ優勝は逃したもののチャンピオンズリーグを制覇。トップチームの監督として華々しいスタートを遂げた。これまで監督としての評価はまちまちだったが、現役時代からのカリスマ性でBBCも迷わずローテーションできている点はMSNを抱えるバルセロナとは異なる点だろう。イスコやルーカス・バスケス、アセンシオが計算の立つ選手としてしっかりと試合に出ている。

なお、試合前のオッズではマドリーの方が若干上回っていたことはどれだけの人が知っていただろうか。もちろんここまで結果に差が出るとは誰も考えていなかっただろう。


by @11tegen11

期待点(ExpG)では2.09-0.44という点差で試合が終わった。前半は特に拮抗した試合展開だったが、後半にマドリーが修正したこととユヴェントスがうまくいかなかったことがあり、マドリーの勝利となった。もちろんカゼミロの得点など、多少運にも恵まれたことは明らかである。

スターティングメンバー:変化しないという判断


by @11tegen11

ジャンルイジ・ブッフォン;アレックス・サンドロ、ジョルジョ・キエッリーニ、レオナルド・ボヌッチ、アンドレア・バルザーリ(-66′);サミ・ケディラ、ミラレム・ピャニッチ(-70′);マリオ・マンジュキッチ(27’ゴール)、パウロ・ディバラ(-78′)、ダニエウ・アウベス;ゴンサロ・イグアイン
フアン・クアドラード(66′-、84’退場)、クラウディオ・マルキジオ(70′-)、マリオ・レミナ(78′-)

ケイラー・ナバス;マルセロ、セルヒオ・ラモス、ラファエル・ヴァラン、ダニエル・カルバハル;トニ・クロース(-89′)、カゼミロ(61’ゴール)、ルカ・モドリッチ;イスコ(-82′);クリスチアーノ・ロナウド(20’、64’ゴール)、カリム・ベンゼマ(-77′)
ガレス・ベイル(77′-)、マルコ・アセンシオ(82′-、90’ゴール)、アルバロ・モラタ(89′-)

両チームともに準決勝と同じラインアップを選んだ。いくつかのフォーメーションやメンバーの選択肢がある中、すでに手の内を見せている形が最も優位性を生むと判断した点は興味深い。特に戦列に戻ってきたベイルをベンチに置くという決断だった。

ユヴェントスのハイプレッシングと可変式システム

ユヴェントスは3バックと4バックのハイブリットのような可変式システムで試合を開始した。ボール保持時は3バックでダニエウ・アウベスとアレックス・サンドロをウイングバックとしてサイドの高い位置へ押し出す。ボール非保持時はディバラを1列目に上げて4-4-2でプレッシングを行う。

ユヴェントスは立ち上がりにハイプレッシングを行った。ボールを失ったネガティブトランジションで、1列目のイグアインとディバラがボール保持者に寄せ、2列目も連動して高い位置を取った。マドリーはボールを循環させたり前進させたりすることができずに、サイドバックからロングボールでプレッシングを回避する場面が目立った。


by http://spielverlagerung.com/

サイドハーフのマンジュキッチとダニエウ・アウベスは、サイドバックに対してプレッシングを行い、センターハーフのピャニッチとケディラも中盤の選手を掴んで内側へのパスコースを潰した。

by outsideoftheboot.com


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マンジュキッチvsカルバハル、右ハーフスペースのディバラ対策

ユヴェントスは主にサイドを起点とした攻撃を行った。マドリーの中盤が3-1で中央に密集したフォーメーションであり、また立ち上がりはイスコが1列目に上がってプレッシングしたり2列目に下がったり不安定だったため、多くのクロスが行われた。

特に見られた形は高さでの優位性である。空中戦に強いマンジュキッチがカルバハルと競り、アレックス・サンドロがセカンドボールを拾ってサイドから前進するという形である。比較的スピードが求められ高さがないことが多いサイドバックに対して空中戦に強い選手をぶつけることはよく見られ、昨シーズンであればポグバ対ラームでの優位性があった。ただしマドリーがボール非保持時にイスコが2列目のサイドハーフの位置に戻ることが修正されてから、セカンドボール争いが五分五分に近くなってしまった。

ロングボールの精度の高さを誇るボヌッチやピャニッチに対してクリスティアーノ・ロナウドとベンゼマの1列目が曖昧な守備を行ったこともサイド攻撃に繋がった。

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また試合前の会見で最も警戒している選手に挙げられたディバラは、右ハーフスペースかつライン間のスペースでのプレーを得意としているが、左インサイドハーフのクロースやセンターバックのセルヒオ・ラモスを中心に激しくプレッシングを行った。

レアル・マドリーのボール保持:数的優位、質的優位、位置的優位

イスコをトップ下に起用した4-3-1-2では、インサイドハーフ落としやイスコのフリーロールによる中盤での数的優位や、ベンゼマとクリスティアーノ・ロナウドによる2トップの質的優位を生かしている。陣形の重心が低く横幅の役割を担うサイドバックもそれほど高い位置をとっているわけではないため、配置的な優位性に優れているわけではない。しかし中盤でのボールの循環や前進のスキルの高さがあり、前線へ放り込んでも質の高さがある。

なお位置的優位とは一般的に言うと、ワイドに開いた選手が高い位置を取り、相手の陣形を縦と横の両方向に引き伸ばし、ライン間にできるだけ多くの選手を送り込むことである。この時センターバックや守備的MFが相手を揺さぶり、縦パスを供給することが求められる。

ボール非保持時のユヴェントスは4-4-2のような形であり、フォーメーション的にはアトレティコ戦に似ている。ビルドアップの時にハーフスペースの入り口に下がってくるインサイドハーフ落としに対して、これまでアトレティコはセンターハーフが前に出ることで対応していたが、その空いたスペースにイスコがポジショニングすることで時間と空間を得ることができた。

しかしこの試合の前半のイスコは、両インサイドハーフとともに低い位置に下がってきてボールを受ける場面が多く、後方での過剰な密集が起こってしまった。本来であれば相手の中盤の隙を探し、ビルドアップの出口として前線へと繋げたり後方からの攻め上がりを促したりする必要があった。

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レアル・マドリーの1点目

マドリーは全てがうまくいっていたわけではなかったが、狙っていた形から先制点を奪うことができた。警戒していたディバラに対して激しい守備でボールを奪うと、左サイドの数的優位からボールを前進させ、ユヴェントスの守備陣がスライドして大きく空いた逆サイドに展開して攻撃を加速させ、最後はクリスティアーノ・ロナウドがボールをネットに流し込んだ。

マンジュキッチに対して高さの優位性を取られていたカルバハルがトランジションでスピードでの優位性を生かした。また試合を通してマドリーは左サイドでのプレーが多かったが、右サイドで常にワイドなポジショニングを続けてチームに横幅をもたらし続けた。

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レアル・マドリーの後半の修正

ハーフタイムを挟み、マドリーは少し修正を加えた。イスコを下がりすぎないようにして、特に左のハーフスペースを中心にボールを引き出した。また、ユヴェントスの右サイドバックのバルザーリを押し下げるためにマルセロから裏へ直接パスを送った。これにより右サイドハーフのダニエウ・アウベスが守備時に孤立するようになる。

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またネガティブトランジションでも、素早くボール保持者に寄せるカウンタープレッシングで強度を高めた。特にマドリーの3点目などが典型的な形である。これによってボール保持の局面を長くしユヴェントスに迫ることができた。

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インサイドハーフも少しワイドな位置取りをしてビルドアップを行った。特にダニエウ・アウベスに対してマルセロとクロースの2つの守備の基準点を作り、さらにイスコによって密集によるボール循環を多用した。


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by @11tegen11

まとめ

ユヴェントスが優勢であると思わせるだけの完成度を誇ったチームであるとともに、それでも勝利を収めてしまうマドリーの力を感じさせられた試合だった。ともに戦術的柔軟性のあるちーむだが、マドリーの中盤のインテリジェンスは目を見張るものがある。特にモドリッチは最高の選手と言える。

一方のユヴェントスは4-2-3-1への変更で極限まで攻撃的な選手を起用することを推進していたが、若干の前線の駒不足も否めなかった。また懐疑的な判定もあったが、クアドラードは大舞台で試合にうまく入り込むことができずに、悲惨なプレーを見せていたので結局はマドリーの勝利へと傾いていただろう。

現行のシステムに変わってから初めてチャンピオンズリーグを連覇し、指揮官としてのジダンの有能さを大きく知らしめることとなった。

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