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背番号10が4人も新加入!浦和レッズに見る補強戦略

扇ガ谷 道房

2017/01/27 20:00

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NEWS

2016シーズンで年間勝ち点1位ながら、チャンピオンシップで鹿島アントラーズに敗れてしまい、年間チャンピオンの称号を戴けなかった浦和レッズ。(年間勝ち点は1位)
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が就任して5年目の昨季、ミシャ監督初のJリーグタイトルであるルヴァンカップを制するも、悲願のJリーグタイトルは又今年に持ち越しました。

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監督就任以後、常にJリーグ上位に位置する浦和レッズを率いて早6年。1シーズン制に戻った事もあり、今年こそはJリーグタイトルの獲得に燃えている事でしょう。
その為の今シーズンの補強は、背番号10にまつわる珍しいニュースも飛び出しました。浦和レッズの今年の新戦力補強戦略を考察してみましょう。


by URAWA RED DIAMONDS

プロサッカークラブにおける補強の意義

組織には去って行く人あり、新加入の人ありで、新陳代謝を繰り返しながら成長を目指して変化しています。民間企業でもサッカークラブでも同じです。
会社では、事業計画の変更や実行、人事の異動、ポジションの新設廃止などがある様に、サッカークラブにも、戦術やコンセプトの変更や実行、選手の退団移籍、フォーメーションの変更などがあります。
サッカーチームの編成や運営は、サッカー界独自の事柄もあれば、世の中の組織論と同じ事も多々あるのです。
コンセプトと人材の育成や活用が最も大事な事柄であるのは、企業でもサッカークラブでも同様です。各企業で事業計画や戦略が違う様に、サッカークラブでもコンセプトや選手の育成活用方法には自ずと違いがあります。収益性や資本力によって違いも生まれます。
人材の補強は、大きく分けて二つの意味合いがあります。一つは即戦力の獲得であり、もう一つは組織風土に根差した人材の育成です。
プロサッカークラブにおける人材の補強では、各クラブによってそのバランスに差異が生じます。望ましいのは両者のバランスが偏らない事です。
海外の著名選手を集客の目玉にする場合もあれば、Jリーグ内で実績を残した外国人を獲得する場合や、自チームに戦力の欠けているポジションの日本人を獲得するケース、能力があるけれども現状のメンバーでは出場できない選手をゲームに出る事ができるクラブにレンタル移籍させる事もあります。
この様に、様々な側面で、選手を獲得したり放出したりする訳ですが、得点能力の高い外国人選手頼りになってしまうクラブがあったり、経営規模の関係で有力選手を移籍で獲得できないクラブがあったりと、自ずと違いがあります。
現在の浦和レッズの補強は、過度に外国人選手頼りではなく、能力があるのにチームで活用されていない選手を移籍で獲得しながら、下部組織から浦和レッズらしい選手を育成して、見事に融和させています。それは自ずと監督のポリシーが大きく影響しています。

かつてはサンフレッチェ浦和と揶揄されて

ミシャ監督が就任して6年目になりますが、この間の補強に関して言えば、当初はミシャ監督が前任監督だったサンフレッチェ広島から主力選手を引き抜いて来た印象があるのは事実です。
現在の浦和レッズの主力選手の中で、サンフレッチェ広島から移籍して来たのは、MF柏木陽介選手、DF森脇良太選手、GK西川周作選手。プレミアリーグのサウサンプトンから移籍したFW李忠成選手と、ブンデスリーガの1FCケルンから移籍のDF槙野智章選手、今シーズンベガルタ仙台に移籍した石原直樹選手も元サンフレッチェ広島の選手でした。
全員が日本代表経験者ですから、浦和レッズにとって大きな意味のある移籍だったと言えます。当時はこれらの移籍結果から、サンフレッチェ浦和と揶揄もされました。
しかし、その後はJリーグの各クラブで、力量があるにもかかわらず活かされていない選手を獲得する方向に変化がありました。それらの選手は、浦和レッズに移籍後、多くのチャンスを与えられて、見違える様にピッチで活躍し、主力選手と呼ばれる存在になっています。武藤雅樹選手(前ベガルタ仙台)、高木俊幸選手(前清水エスパルス)、駒井善成選手(前京都サンガ)などが好例です。
特に武藤選手が浦和レッズに移籍が決まった時などは「武藤、WHO ?」と囁かれていた位、全国的には無名な選手でした。しかし、移籍初年度から目の覚める様な大活躍で、瞬く間にスタメンに名を連ねる様になってしまいました。
武藤選手の例は、サッカー界以外でも多々起こっている現象で、部署の異動や転職の結果、輝きだす人材や事例は少なくありません。あるマネージャーに干されていても、活かす事のできる別のマネージャーが存在しているのです。簡単に言えば相性という事になります。
浦和レッズとミシャ監督は、自らのサッカーコンセプトに応じて、相性の良い選手を獲得しているのです。たやすく得点力のあるビッグネームの外国人選手を獲得するという補強をしていません。
あくまでもコンセプトありきで、広く他チームに目を凝らしつつ、自らもアカデミーから育成に注力して、全てをミックスさせているクラブであると言えます。
それができるのも、フロントが監督を信頼し、Jリーグでは珍しい6年という長期政権を任せているからに他なりません。

次ページ:下部組織からの育成とレンタルによる実践経験

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