by Jリーグアナライズ
明治安田生命J1リーグ第1ステージの第9節、4月30日のアルビレックス新潟線で今季6得点となる直接フリーキックによるゴールを決めたヴァンフォーレ甲府のブラジル人FWクリスティアーノ選手。
直接FKによる得点は今季初でしたが、ことFKに関しては、”CR7″こと、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド選手(レアル・マドリー/スペイン)にも負けない本家顔負けのフリーキッカーです。
昨年末に行われた天皇杯準々決勝の柏レイソルVSベガルタ仙台戦、当時は甲府から柏へのレンタル移籍中だったクリスティアーノ選手は、なんと直接FKだけで3得点のハットトリックを記録したのです。
【補足】直接FKだけハットトリック、セットプレーだけ、世界的記録
ちなみに直接FKだけでのハットトリックというのは、Jリーグ創設から今年で24年目を迎える現在までの歴史上たった1度も達成された事がありません。
尚、ジュビロ磐田の日本代表MF藤田俊哉選手が2000年5月3日の川崎フロンターレ戦でPKだけでのハットトリック。アルビレックス新潟でMFマルシオ・リシャルデス選手が2010年7月24日のベガルタ仙台戦でPKと直接FK、直接CKという3種類のセットプレーからのハットトリックを達成しております。
そして、実はこの時のクリスティアーノ選手のハットトリックは3点目が延長戦で記録されているので、90分では2得点だったのですが、過去のJ1リーグでの90分間での直接FK2得点も6人のみの達成という偉業です。
シニシャ・ミハイロビッチby Golaco
世界的に見れば、1998年12月18日の対サンプドリア戦で当時のラツィオに所属していた旧ユーゴスラビア代表DFシニシャ・ミハイロビッチ(上記写真/直近までACミラン監督/イタリア)選手が直接FKのみでのハットトリックを90分以内で記録しています。尚、ミハイロビッチ氏はイタリア・セリエAで通算315試合の出場で38得点しているのですが、そのうちの史上最多となる27得点を直接FKから決めています。
華やかなプレースタイルを持つオールラウンダー~栃木SC悲願のJ1昇格への切り札となったが・・
by TOCHIGI SC
そんなセットプレーのキッカーとして飛び道具を持つクリスティアーノ選手は、単独ドリブルでの局面打開力にも優れ、”違い”を作れるアタッカーです。
現在29歳のクリスティアーノ選手は、母国では下部リーグでプレー。鳴かず飛ばずのブラジルでのプロ生活を経て、2012年、25歳で渡欧。入団テストを経て、現在は日本代表FW南野拓実選手が所属するオーストリアの強豪=レッドブル・ザルツブルグに加入。初年度から背番号10を着てプレーしていたものの、加入2年目から就任したロジャー・シュミット監督の構想から外れてしまいました。
そんな2013年、26歳になった彼が日本にやって来たのですが、加入したのはJ1ではなく当時はJ2に所属していたの栃木SCでした。しかもザルツブルグからのレンタル移籍という身。
ただ、その加入した栃木にはチームの主将をブラジル人ながらMFパウリーニョ(現・湘南ベルマーレ)選手が務めており、そのシーズン16得点を挙げる得点源のFWサビア選手と共にこのブラジリアン・トリアがJ2を席巻。クラブ史上初のJ1昇格も見えていました。しかし、攻守の要でもある絶対的支柱のパウリーニョ選手が怪我を負ってからはチームが一気に失速。その中でクリスティアーノ選手はFWやトップ下などの本来の攻撃的なポジションだけでなく、パウリーニョ選手の代役としてボランチでもプレーするなど大車輪の活躍。16得点14アシストという数字に残る結果を残した事も高く評価されました。また、それ以上に時間帯ごとにポジションを変える万能性やボール際でも競り勝つフィジカル能力でも異彩を放っていました。
苦労の連続のキャリアも、今ではJリーグ屈指の名物外国籍選手
by Kohei’s Blog
しかし、2013シーズンに悲願のJ1昇格をクラブ運営としても賭けていた栃木はシーズン終了を待たずに経営危機が表面化。翌年からの緊縮路線を経てブラジリアン・トリアは全員退団となり、クラブは今季からJ3へ降格しています。
一方、個人として国内外で高く評価されたクリスティアーノ選手は、翌年から甲府へ完全移籍で加入。城福浩監督(現・FC東京監督)が植え付けたチーム戦術をこなしながらも個の能力を結果に結びつけるという難題はこなしきれませんでした。それでもヤマザキナビスコカップでは6ゴールを挙げて、大会得点王を獲得。
2015年シーズンはAFCチャンピオンズリーグを戦う柏へレンタル移籍し、アジアの舞台でも9試合の出場で3得点とチームのベスト8進出を牽引。J1リーグでは全試合出場を果たして14得点を挙げています。
今季から甲府へ復帰したクリスティアーノ選手ですが、2年前とは違って今季は甲府の絶対的なエースとして大車輪の活躍。
現在はドイツのバイヤー・レヴァークーゼンで指揮を執り、新世代の戦術家として高く評価されるシュミット監督やJリーグで豊富な経験がある城福監督のような戦術家タイプの指揮官には合わないようですが、彼は決して献身的なプレーができないわけではありません。個人としての能力が高すぎるからこそ、緻密な役割を与えられるよりも全てを任される方がプレーしやすいのかもしれません。
Jリーグでプレーを始めて4年目。Jリーグファンの間で「クリスティアーノ」と言えば、CR7ではなく彼を想起させる名物外国籍選手となっています。
そんな彼のセットプレーやドリブル、ミドルシュートなどの個人技は、現地観戦でこそ楽しむべきモノ。皆様も是非とも現地でクリスティアーノ選手の美技や力技に触れてみて下さい☆