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サッカー漫画紹介「GIANT KILLING(ジャイアントキリング)」

佐藤文孝

2019/05/11 23:11

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破天荒な振る舞いを繰り広げながら監督としてチームを率い、「弱小」と言われるチームを成長させ勝利に導く達海猛(たつみたけし)。EAST TOKYO UNITED(ETU)の若き指揮官が強大な相手に「ジャイアントキリング」を成し遂げていく物語だ。

見どころとなる達海猛のチーム構築

「タッツミー」と呼ばれ、イングランド5部のクラブを率いてFAカップを勝ち抜いていた達海猛が日本への帰国を決断することからストーリーは始まる。現役時代の古巣でもあるETUの監督に就任すると同時に、あらゆるトラブルが勃発。フロント、サポーターとの衝突のほかレギュラーメンバーの解体など、まさに「豪腕」をふるう。

真っ先にぶつかってきたのはチームの顔でもあるベテラン・村越茂幸。過去の因縁もある仲であり、監督・選手として起用法やチームコンセプトに不快感を隠さなかった。達海の就任以前より「ETUに自分の全てを懸けてきた」と迫る村越に対し、達海は「これからは半分を命がけで俺が背負う」と語る。周囲の感情を逆なでし続けてきた達海のチームへの決意を表すこのシーン、一気に物語を引き締める名場面だ。

また第十巻では達海が強豪との試合前にクラブで、とあるパーティーを企画、試合を控える選手の他、関係者からも批判の声が挙がる。だが、そこにクラブチームとしての在り方を映し出そうとする、ピッチ外での達海の描くストーリーに強い共感を抱く人は少なくないはずだ。

群を抜く痛快さ、Jリーグとのコラボも

ETUが所属するリーグジャパンフットボールでの試合中、達海猛がみせる具体的な采配やチーム内のコミュニケーションがこの漫画の最大の魅力であることは言うまでもない。さらに試合以外でも達海の存在感、さらにその独特の発想は一つのサッカー漫画の域を超えていると言えるだろう。

さらに2007年の連載開始から今年まで発刊された単行本が50巻にまで到達したことを記念し、Jリーグとのコラボ企画として、50人のJリーガーが表紙となる特別カバーの製作が行われるなど、様々な方面に強い影響を及ぼしている。サッカーファンのみならず、現役選手の中にも数え切れないほどの「ジャイキリ」フリークが存在することは言うまでもないだろう。

登場人物一人一人が見事なまでに個性豊かに描かれジャイアントキリングという壮大なテーマのもと、勇気と爽快感が得られるサッカー漫画史上屈指の名作。ただ、指揮官、達海猛が若くして指導者の道を選んだその理由を知った時、それまで得られていた痛快さとは全く違った感情が胸を覆うのも事実だ。

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