負けたら終戦、勝って優勝へ望みをつなげたい。ビジタースタンドを埋め尽くす3500人のサポーターの声援を背に、この日の川崎は鬼気迫るものがあった。
自分たちのサッカーとは程遠い内容だった。——試合後の鬼木監督の言葉どおり、アジア王者の激しいプレッシングを前に華麗なパスサッカーは影を潜めた。アタッキングサードの支配率の低さがこの一戦の苦悩を物語っている。
ゲームをコントロールすることができたが。——対する浦和堀監督は、ACL優勝の歓喜から中3日という過密日程の中、ターンオーバーを採用、先発メンバーを6人入れ替えて臨んだ。
右サイドバックに森脇 良太を据え、遠藤航をアンカーに上げ、菊池 大介を左サイドバックに、インサイドハーフに矢島 慎也を登用。菊池 大介が鋭いクロスでチャンスを演出すれば、矢島 慎也が果敢にシュートは放つなど、今シーズン、ベンチでくすぶっていた両選手が瑞々しく躍動する。
一瞬の緩みがあった。——スコアが動いたのは前半13分、中盤でボール奪取した谷口 彰悟が素早く右サイドの家長 昭博へパス。強引なドリブル突破を挑んだ家長に対して、菊池 大介とマウリシオが挟み込む形で対応するも、2人がもたつく隙に家長が前に抜き出る。そのままドリブルで持ち込みGKとディフェンスの間に絶妙な高速クロスを供給、走り込んだ小林 悠が合わせ川崎が先制する。
なりふり構わず逃げ切った。——試合は終盤を迎えるに連れて次第に浦和ペースへ。槙野 智章がフリーの決定機を逸するなど、梅崎 司、柏木 陽介と攻撃的な選手を次々に送り込み果敢にゴールを狙い続けた浦和だが、最後まで集中力を切らさない川崎の粘り強い守備を前にタイムアップ。小林 悠のゴールを死守した川崎が執念で勝利をもぎ取った。
勝利という形で結果を残せたこと、これが一番良かったこと。(鬼木監督)意地というか、なんとか最後につなげたいという思いでみんなが戦えた。(小林 悠)
優勝の行方は最終節までもつれ込んだ。首位を走る鹿島の結果次第という状況は変わらないが、先ずは勝つしかない。クラブ史上初タイトルを賭けた舞台はすでにソールドアウト、等々力劇場の開演まで残り2日と迫った。
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