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サッカーだけでなくスポーツ界で活躍する人材を養成するFIFAマスターとは

扇ガ谷 道房

2017/04/24 11:48

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NEWS

FIFAが国際サッカー連盟という事をご存じの方は少なくないと思います。サッカーの国際統括団体でスイスのチューリッヒに本部が置かれています。
そのFIFAがスポーツに関する大学院を運営している事は余り知られていません。
通称FIFAマスターと呼ばれるこの大学院は、サッカーに限らず、スポーツ全般に関する人文科学的な教育を行う目的で、全世界の人に門戸を開いています。
定員は少ないので、入学するのは困難ですが、日本人学生も合格している実績があります。どのような所なのかをご紹介致します。


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サッカー監督を養成する教育機関ではありません

FIFAは国際サッカー連盟ですから、サッカーに関する事業を行うのは当然ですが、FIFAマスターはサッカーだけに限定した教育機関ではありません。FIFAの運営する教育機関ですから、サッカー監督を養成する目的だと思われがちですが、そうではありません。
  
当然サッカーも含まれますが、あらゆるスポーツやスポーツ関連の人文科学的なカテゴリーについて学習し、幅広くスポーツ界で活躍する人材を養成することを目的として設立されています。
  
FIFA本部と同様にスイスに拠点を置くスポーツ教育機関CIES(The International Centre for Sports Studies スポーツ研究国際センター)とFIFAが提携して運営されている形態ですから、FIFA単独で設置されている大学院でもありません。
  
独自のキャンパスを有する訳ではなく、年間を通じてイギリス、イタリア、スイスの大学を持ちまわって、それぞれ違う分野の授業を受けた後、卒業論文を提出して卒業するという、独特のカリキュラムと運営方法を採用しています。
  
世界的にも希有な教育機関ですから、世界中から学生が集まっています。
とはいえ、定員は約25名という狭き門なので、入学できる生徒は世界中の入学希望者の中から選ばれた精鋭と言えるかもしれません。
  
巨大なキャンパスを持ち多数の学生を擁する大学とは趣を異にします。 

    
  

入学に必要な条件

では、この狭き門に入学する為にはどうすれば良いのでしょうか?入学希望者には先ず5種類の書類の提出が求められます。
  
高校卒業証明書、大学の卒業・成績証明書、英語力証明書(TOEFL、Cambridge Certificate of Proficiency、IELTSの何れか1つ)、GMAT、スポーツや志望動機等の5つの質問回答書、これら5種類の書類を全て英語で作成して提出しなければなりません。
  
書類審査に合格すると、電話面接等が行われ、最終的に世界各国から約25名の合格者が決定します。
合格者が年間授業料2万5千スイス・フラン(約280万円)を支払った段階で入学手続きが完了します。
  
最も大きな課題は英語力です。世界中から学生が選抜されて、ヨーロッパ3カ国の大学において勉学に励む訳ですから、やはり共通言語としての英語力が問われてしまいます。
  
ちなみに、GMATというのは、経営大学院への入学希望者を対象に行われる入学適性テストの事を言います。  
  

独特なカリキュラム

FIFAマスターでは、大きく三つの分野でカリキュラムが設定されています。そのそれぞれのカリキュラムはヨーロッパの別々の大学で講義が行われます。
  
入学は多くの国々の入学時期と同じ9月。先ず9月から12月は、イギリスのレスターにあるド・モンフォル大学で”スポーツ人文科学”を学びます。
翌年1月から3月は、イタリアのミラノにあるボッコーニ大学で”スポーツ経営学”を学びます。
4月から7月には、スイスのヌーシャテルにあるヌーシャテル大学で”スポーツ法学”を学び、講義は終了します。
その後数名のグループに分けられて、所属グループ毎に卒業論文を作成し、発表会が行われます。
発表会にはFIFA、IOC、UEFA、ECA、大学教授等から関係者が出席し、様々な観点から質問を行い評価されます。
  
3カ国の大学で行われる講義の間は、全学生に寮が割り当てられて、各国の学生達と寝食を共にしながら多様な価値観を体験する事になります。
  
講義自身も、単に講師の授業を聴くという形式に留まらず、講師と学生の間で活発に議論できる自由闊達な雰囲気が保たれています。
  
スポーツに関心がある世界各国の学生と交流し異文化に触れる事も、グローバルにスポーツ界で活躍しようとする学生にとって、極めて意義深い経験になります。 
この様に、世界中から選抜された数少ない学生が、独特なカリキュラムと生活の中で、一年間勉学に励む環境が用意されています。
       

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卒業者の進路

卒業論文は、単なる成績評価の為の発表に留まらず、論文がきっかけとなって実際に創設された事例が多々あります。
国際Aマッチデーに出場した各国の代表選手に対する保険導入や、イスラエルとパレスチナの子供達によるサッカーキャンプなどがその実例です。
  
この様に、FIFAアカデミーの学生の卒業論文は、極めて実践的な側面を有している事からも、単なる受動的な講義主導の教育機関では無い事がおわかりになると思います。
  
その結果として、卒業者はどんな進路に就いているのかというと、やはり多くの卒業者がスポーツに関連したビジネスに従事されています。
  
運営主体であるFIFAは元より、UEFA、IOC、AFC、各国サッカー協会、国際スポーツ連盟等の団体や、スポーツメディア、スポーツマーケティング会社、各国のサッカーリーグやサッカークラブ等が主な進路です。
  
卒業生はFIFAマスター同窓会協会(FIFA Master Alumni Association。略称FMA)に登録され、同協会は2年に一度世界規模の同窓会を開催しており、OBのグローバルなネットワークの一員としても名を連ねる事ができます。

FIFAマスターに入学した日本人

とても狭き門ながら、今までに日本人学生もFIFAマスターに在籍し卒業されています。その筆頭格は、現在ガンバ大阪U23監督の元日本代表キャプテン宮本恒靖さんです。
  
2012年に日本人元サッカー選手として初めてFIFAマスターに合格し、13期生として卒業されました。元Jリーガーでありながら、入学に必要な条件を全てクリアして入学し卒業されておられるという事は特筆すべき事です。


  
そして昨年、新たに二人の日本人女性がFIFAマスターに入学を果たされました。辻翔子(つじ しょうこ)さんと大滝麻未(おおたき あみ)さんのお二人です。
  
辻翔子さんは、2011年3月に早稲田大学スポーツ科学部スポーツ文化学科を卒業後、スペインのバルセロナを拠点としてリーガエスパニョーラの取材活動をされて来ました。

大滝麻未さんは、2012年3月、早稲田大学スポーツ科学部スポーツ医科学科を卒業されましたが、卒業前の2012年1月にフランスのサッカークラブであるオリンピック・リヨンに入団し2シーズン所属。この間にUEFAチャンピオンズ・リーグで優勝という輝かしい経験をしておられます。
2013年になでしこリーグの浦和レッズレディースに入団、その後フランスのEAギャンガンへ移籍後に現役を引退した元女子日本代表選手でした。  

このお二人の女性が、現在FIFAマスターの現役学生として在籍されているのです。

◾️参考記事:早稲田大学 スポーツ科学部”OGに聞く FIFAマスター日本人合格者2名はいずれもスポ科出身~その1″
  
ちなみに現在のFIFAマスターには、元京都パープルサンガ、元マンチェスターUで元韓国代表選手の朴智星さんも在籍しています。

FIFAマスターの存在は余り知られていませんが、サッカーに留まらないスポーツ全般に関する国際修士のカリキュラムとして、グローバルで活躍する人材を輩出している教育機関です。
非常に狭き門ながら、現在在籍している学生の中に、お二人の日本人女性がいるというのも何だか誇らしいではありませんか。
興味を持って頂けたなら、次の募集に応募されてみては如何でしょうか。  

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