背番号10が4人も新加入!浦和レッズに見る補強戦略

2016シーズンで年間勝ち点1位ながら、チャンピオンシップで鹿島アントラーズに敗れてしまい、年間チャンピオンの称号を戴けなかった浦和レッズ。(年間勝ち点は1位)
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が就任して5年目の昨季、ミシャ監督初のJリーグタイトルであるルヴァンカップを制するも、悲願のJリーグタイトルは又今年に持ち越しました。

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監督就任以後、常にJリーグ上位に位置する浦和レッズを率いて早6年。1シーズン制に戻った事もあり、今年こそはJリーグタイトルの獲得に燃えている事でしょう。
その為の今シーズンの補強は、背番号10にまつわる珍しいニュースも飛び出しました。浦和レッズの今年の新戦力補強戦略を考察してみましょう。


by URAWA RED DIAMONDS

プロサッカークラブにおける補強の意義

組織には去って行く人あり、新加入の人ありで、新陳代謝を繰り返しながら成長を目指して変化しています。民間企業でもサッカークラブでも同じです。
会社では、事業計画の変更や実行、人事の異動、ポジションの新設廃止などがある様に、サッカークラブにも、戦術やコンセプトの変更や実行、選手の退団移籍、フォーメーションの変更などがあります。
サッカーチームの編成や運営は、サッカー界独自の事柄もあれば、世の中の組織論と同じ事も多々あるのです。
コンセプトと人材の育成や活用が最も大事な事柄であるのは、企業でもサッカークラブでも同様です。各企業で事業計画や戦略が違う様に、サッカークラブでもコンセプトや選手の育成活用方法には自ずと違いがあります。収益性や資本力によって違いも生まれます。
人材の補強は、大きく分けて二つの意味合いがあります。一つは即戦力の獲得であり、もう一つは組織風土に根差した人材の育成です。
プロサッカークラブにおける人材の補強では、各クラブによってそのバランスに差異が生じます。望ましいのは両者のバランスが偏らない事です。
海外の著名選手を集客の目玉にする場合もあれば、Jリーグ内で実績を残した外国人を獲得する場合や、自チームに戦力の欠けているポジションの日本人を獲得するケース、能力があるけれども現状のメンバーでは出場できない選手をゲームに出る事ができるクラブにレンタル移籍させる事もあります。
この様に、様々な側面で、選手を獲得したり放出したりする訳ですが、得点能力の高い外国人選手頼りになってしまうクラブがあったり、経営規模の関係で有力選手を移籍で獲得できないクラブがあったりと、自ずと違いがあります。
現在の浦和レッズの補強は、過度に外国人選手頼りではなく、能力があるのにチームで活用されていない選手を移籍で獲得しながら、下部組織から浦和レッズらしい選手を育成して、見事に融和させています。それは自ずと監督のポリシーが大きく影響しています。

かつてはサンフレッチェ浦和と揶揄されて

ミシャ監督が就任して6年目になりますが、この間の補強に関して言えば、当初はミシャ監督が前任監督だったサンフレッチェ広島から主力選手を引き抜いて来た印象があるのは事実です。
現在の浦和レッズの主力選手の中で、サンフレッチェ広島から移籍して来たのは、MF柏木陽介選手、DF森脇良太選手、GK西川周作選手。プレミアリーグのサウサンプトンから移籍したFW李忠成選手と、ブンデスリーガの1FCケルンから移籍のDF槙野智章選手、今シーズンベガルタ仙台に移籍した石原直樹選手も元サンフレッチェ広島の選手でした。
全員が日本代表経験者ですから、浦和レッズにとって大きな意味のある移籍だったと言えます。当時はこれらの移籍結果から、サンフレッチェ浦和と揶揄もされました。
しかし、その後はJリーグの各クラブで、力量があるにもかかわらず活かされていない選手を獲得する方向に変化がありました。それらの選手は、浦和レッズに移籍後、多くのチャンスを与えられて、見違える様にピッチで活躍し、主力選手と呼ばれる存在になっています。武藤雅樹選手(前ベガルタ仙台)、高木俊幸選手(前清水エスパルス)、駒井善成選手(前京都サンガ)などが好例です。
特に武藤選手が浦和レッズに移籍が決まった時などは「武藤、WHO ?」と囁かれていた位、全国的には無名な選手でした。しかし、移籍初年度から目の覚める様な大活躍で、瞬く間にスタメンに名を連ねる様になってしまいました。
武藤選手の例は、サッカー界以外でも多々起こっている現象で、部署の異動や転職の結果、輝きだす人材や事例は少なくありません。あるマネージャーに干されていても、活かす事のできる別のマネージャーが存在しているのです。簡単に言えば相性という事になります。
浦和レッズとミシャ監督は、自らのサッカーコンセプトに応じて、相性の良い選手を獲得しているのです。たやすく得点力のあるビッグネームの外国人選手を獲得するという補強をしていません。
あくまでもコンセプトありきで、広く他チームに目を凝らしつつ、自らもアカデミーから育成に注力して、全てをミックスさせているクラブであると言えます。
それができるのも、フロントが監督を信頼し、Jリーグでは珍しい6年という長期政権を任せているからに他なりません。

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下部組織からの育成とレンタルによる実践経験

移籍で他チームから選手を獲得するのと共に、当然ながら忘れてはならないのが、自らの手で少年期から選手を育成してトップチームに引き上げる事です。
昨年までの浦和レッズでは、関根貴大選手や宇賀神友弥選手(※正確には宇賀神選手は大学4年間を経ています。)がその好例です。

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最も成功例は、現在ブンデスリーガのヘルタ・ベルリンに所属し日本代表で活躍を遂げている原口元気選手です。ジュニアユースから浦和レッズに入団して、順調にユースに昇格し、フィンケ監督時代に高校生ながらトップチームに昇格しました。Jリーグで優勝の経験ができなかったものの、ブンデスリーガのヘルタ・ベルリンに移籍し、現在も主力選手として活躍を遂げています。

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一方で、国内で最も高いレベルの選手が集う浦和レッズでは、下部組織から育成されて昇格しても、なかなかゲームに出場できるチャンスが生まれません。そこで、下部組織から育成して将来の浦和レッズを担う有力な若手には、期限付き移籍をさせて、出場の機会を与えて成長を促し、再び呼び戻しています。
今年、二名の選手がレンタル先から復帰しました。これは後段でご紹介致します。そして現在も、湘南ベルマーレにFW山田直輝選手とDF岡本拓也選手、水戸ホーリーホックにMF斎藤翔太選手、モンテディオ山形にDF茂木力也がレンタルされています。
アカデミーでの育成と、他チームへのレンタル移籍で実践経験を踏ませるという両面で、将来の浦和レッズを担う逸材の成長を促しています。


by サッカー情報

背番号10を背負った4人が集結

さて、今シーズンの浦和レッズの新戦力ですが、今年は例年になく特徴のある選手補強が為されました。
一つは、他チームで活躍していた得点力のある外国人選手を獲得した点。アルビレックス新潟からFWラファエル・シルバ選手を獲得しました。ブラジル・コリンチャンスの下部組織出身で、昨シーズンは11ゴールを決めています。久しぶりに得点能力が期待できる外国人FWを獲得しました。
二つ目は、他チームで活躍していた日本人選手を獲得した点。横浜F・マリノスからGK榎本哲也選手を獲得しました。榎本選手は文字通り横浜F・マリノスの正GK。今シーズンはACLの出場と国内リーグ、カップ戦、日本代表の正GKとして西川選手の出場試合数が大幅に増える事が予想されますから、ターンオーバーするGKとして横浜F・マリノスの正GKを獲得できたのは大きな事です。
三つめは、大きな話題になっていますが、他チームの背番号10を4人も入団させた事です。湘南ベルマーレからMF菊池大介選手、ファジアーノ岡山からMF矢島慎也、ジェフ千葉からMF長沢和輝選手、そして前述のラファエル・シルバ選手の4名です。
矢島選手と長澤選手はレンタル移籍からの復帰ですが、この4人は全員前所属チームでは背番号10というエースナンバーを付けていた選手なのです。
ご承知の通り、サッカーにおける背番号10というのは、そのチームのエースが付ける番号です。所属先の力量は様々とはいえ、チームの顔と言える背番号10の選手を4人も移籍入団させるというのは、珍しく且つ成果が期待できるというものです。
更にご承知の通り、浦和レッズの背番号10はMF柏木選手。元背番号10の4人が、柏木選手から背番号10を奪う様な、活躍を期待したいですね!


by URAWA RED DIAMONDS

昨シーズン惜しくもJリーグの年間チャンピオンの称号を手に入れる事ができなかった年間勝ち点1位の浦和レッズ。
ミシャ監督就任6年目の今シーズンは、是が非でもタイトルを手に入れるという宿願の達成に燃えています。
前クラブで背番号10を背負った4人の新戦力も含めて、新旧の総合力で2017年Jリーグを盛り上げてくれる筈です。

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