家長昭博選手去りし大宮アルディージャで司令塔としての期待が高まる大前元紀選手
2016シーズンの大宮アルディージャの活躍は見事でした。2015シーズンはJ2で優勝を果たして臨んだ復帰シーズンを5位で終えたのです。その原動力であり中心プレーヤーだった家長昭博選手が今シーズンは川崎フロンターレに移籍してしまいました。
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家長選手と共に攻撃の要であった左サイドアタッカーの泉澤仁選手もガンバ大阪に移籍してしまいました。
躍進した大宮アルディージャの中心選手が移籍してしまい、不安視される今シーズンの大宮アルディージャに、不安を払拭してくれそうな選手が移籍しました。
その人の名前は、大前元紀選手。今シーズンの大宮アルディージャに元気を注入してくれそうです。
by Jleague.jp
高校3大大会全てで得点王の快挙
大前選手は神奈川県横浜市出身。1989年12月生れ。身長166cmと小柄なサッカー選手です。ポジションはFW。
大前選手が一躍脚光を浴びたのは、流通経済大学柏高校時代の事でした。
チームは高円宮杯全日本ユース選手権、全国高校選手権で2冠を達成し、個人的には前出の2大会に全国高校総体を加えた高校3大大会全てで得点王を獲得したからです。
高校3大大会全てで得点王を獲得した選手は史上初という快挙でした。この事が示す通り、抜群の得点能力を持った選手と言えます。
サッカー選手としても小柄な身長な上に、ピッチ上を小気味良く動き回る俊敏な動きは、守備する側にとってはとても捕まえ難い厄介な選手と言えるでしょう。
その上で、得点能力が高いのですから、Jリーグ各クラブの衆目が集まる事になりました。大前選手が高校卒業時点で選択したクラブは清水エスパルスでした。
清水エスパルスで入団3年目から開花
注目の高校3大大会得点王が新入団するのですから、即戦力として活躍する事を期待されていた筈ですが、入団した2008年にリーグ戦出場は2試合、2年目は1試合にも出場する事ができませんでした。
当時の清水エスパルスは、どちらかというとベテラン選手が主体のチーム構成で、若手選手への移行がなされていない過渡期の状態でした。高校3大大会得点王だった大前選手にとっては、忸怩たる思いの2年間だったのではないかと推察します。
入団3年目の開幕戦は、とうとうスタメンで出場する事ができて、しかもこのゲームでJリーグ初得点を記録します。2010年のシーズンから、大前選手は徐々にスタメンに定着する事ができる様になりました。
イラン代表監督だったアフシン・ゴトビ監督が就任した2011年には、完全にスタメンに定着し、背番号も11に変わり、プレースキッカー役を任される様になりました。
正に、清水エスパルスの顔としての選手に急成長を遂げたのです。
ヨーロッパリーグへの挑戦
清水エスパルスとの契約満了に伴い、大前選手は海外移籍の道を選択します。選んだのはドイツ・ブンデスリーガ。
清水エスパルスのエースは2012年末にフォルトゥナ・デュッセルドルフに完全移籍を果たします。
大柄選手の多いヨーロッパ・リーグで、小兵の大前選手がどの様に活躍するのか期待されますが、持ち前の得点能力を活かす事ができずに、出場7試合ゴール0という個人成績に終わり、チームも2部に降格してしまいました。
2部で1試合出場した後、所属はフォルトゥナ・デュッセルドルフのまま古巣の清水エスパルスに復帰することになりました。
完全移籍でフォルトゥナ・デュッセルドルフに移籍してから8カ月。厳しい言い方ですが、ブンデスリーガで定着することができずに、已む無く古巣に復帰した形になりました。
そして翌2014年には完全移籍で清水エスパルスに戻り、背番号10が与えられました。
謂わば海外移籍に失敗してのJリーグ復帰ですが、エースナンバーを与えられた大前選手は、清水エスパルスに復帰後は、エースナンバーに相応しい力量を発揮し、4年間でリーグ戦42得点という成績を上げました。
波紋を起こした大宮アルディージャへの移籍
2015年シーズンで清水エスパルスはクラブ史上初のJ2に降格してしまいます。大前選手にはヴィッセル神戸からオファーがありますが、清水エスパルスに残留します。
J2で臨んだ2016年シーズンで、クラブは見事2位でJ1復帰を果たし、個人的にもJ2得点ランキング4位となる18得点を決めて、チームのJ1復帰に大きく貢献しました。
J2降格時に移籍をせずに、J1復帰の立役者となった大前選手ですから、清水エスパルスで今季も活躍すると想われましたが、以外にもJ1の大宮アルディージャに移籍をしてしまいました。
この移籍は、清水エスパルスのサポーターの間で波紋を呼ぶ結果になってしまいました。それは、移籍金ゼロでフォルトゥナ・デュッセルドルフに完全移籍したにも関わらず、活躍できずにいた大前選手を清水エスパルスが移籍金を支払って呼び戻したという事実があったからです。
そして今回の大宮アルディージャへの移籍も又移籍金はゼロ。せめて清水エスパルスに移籍金が支払われる移籍であるならまだしも、クラブに対する恩義をないがしろにしているのではないかという想いが、多くの清水エスパルス・サポーターには渦巻いているのです。
移籍の真相は本人のみぞ知る事ですが、退路を断った同一カテゴリー他チームへの移籍ですから、大宮アルディージャで確固たる地位を占めない限り、移籍を繰り返す選手になってしまう可能性もあります。
ですから、今シーズンの大前選手のサッカーは、真価が問われているのです。
by OMIYA ARDIJA
期待される家長選手の後任としての役割
移籍の経緯は別にして、大宮アルディージャにも大きな動きがありました。チームの中心選手であった家長昭博選手と、伸び盛りの攻撃的サイドアタッカーの泉澤仁選手が他チームへ移籍してしまった事です。
両名は大宮アルディージャにとっては攻撃の中心的な存在で、昨シーズン大躍進を遂げた大宮アルディージャの今シーズンに暗雲が立ち込めたのです。
特に家長選手は、司令塔であり得点能力のある天才的なプレーヤーでしたから、その穴をどうやって埋めるのかが問われていました。そこに飛び込んで来たのが大前選手の移籍というニュースでした。
清水エスパルスでエースナンバー10を背負ってチームの中心として活躍した大前選手には、大前選手同様に大宮アルディージャの中心として活躍した家長選手の抜けた司令塔の役割が、必然的に期待されています。
真意はともかくも、結果的に波紋を呼んでしまった移籍の渦中にある大前選手にとって、大宮アルディージャで活躍する事は、ご本人が最も意識していることだと思います。
長身FWが多い大宮アルディージャで、小兵の司令塔がゲームをかき混ぜながらコントロールできれば、面白い結果が期待できる筈です。
今期大宮アルディージャに移籍した大前選手の背番号は10。この事からも、期待値の高さがおわかりになると思います。家長選手の後任選手という位置づけではなく、大宮アルディージャで独自の大前像を作ってエキサイティングなプレーを見せて欲しいですね。