恩師の元へ。セレッソ大阪へ移籍したMF水沼宏太のこれまでの歩み

2016シーズン明治安田生命J1リーグを年間総合順位9位で終えたFC東京。同シーズンから「タイトルを獲得するため」と世代別代表時代の恩師である城福浩監督が率いるFC東京に4シーズン過ごしたサガン鳥栖からの完全移籍での加入となった水沼宏太。しかし、城福監督解任の煽りを受け、公式戦19試合1ゴールと満足のいく結果を残すことが出来たとは言えませんでした。
そんな水沼選手が、2017年シーズンより、サガン鳥栖時代の恩師である尹晶煥(ユンジョンファン)監督が就任したセレッソ大阪へ1年間の期限付き移籍が発表されました。
復活を懸けた水沼宏太選手の経歴をみてみましょう。


by Jleague.jp

父親は元日本代表の水沼貴史氏。挫折も経験し再起を懸けて新天地へ。


by imgrum

2017年シーズンよりセレッソ大阪へ期限付き移籍が決定した水沼宏太選手。中盤での豊富な運動量、また正確なプレースキックを武器とした中盤のダイナモの水沼選手の簡単なプロフィールを紹介します。

プロフィール

水沼宏太(みずぬま・こうた)選手
神奈川県出身
在籍クラブ:あざみ野FC→横浜F・マリノスジュニアユース→横浜F・マリノスユース→横浜F・マリノス(2008〜2012)→栃木FC(2010年7月〜2011 期限付き移籍)→サガン鳥栖(2012 期限付き移籍)→サガン鳥栖(2013〜2015 完全移籍)→FC東京(2016〜)→セレッソ大阪(2017〜 期限付き移籍)

父はかつて金田喜稔氏や木村和司氏らと共に日産自動車サッカー部(現横浜F・マリノス)の黄金期を築いた水沼貴史氏。華麗なドリブルやピンポイントクロスを武器に日本代表としても活躍し、日本サッカー創成期を支えた選手の1人です。

父がかつて在籍していた横浜F・マリノスの下部組織からトップチームに昇格。各世代別の日本代表にも選出され、2007年に韓国で開催されたFIFAU-17ワールドカップではキャプテンを務め3試合に出場し、U-21日本代表では背番号「10」を背負い2010年に行われたアジア競技大会で金メダル獲得に貢献。将来ロンドンオリンピックへの出場はもちろん、父親である水沼貴史氏が辿ってきた日本代表への選出を期待せずにはいられませんでした。しかし、まさかのロンドンオリンピックサッカー日本代表メンバー落選。皮肉にもロンドン大会で日本代表は4位という好成績を収めます。

その一方で、2012年シーズンはJ2から昇格し、J1初参戦のサガン鳥栖をACL(アジアチャンピオンズリーグ)出場まであと1歩と迫る5位へと導く立役者として公式戦38試合出場7ゴールの納得のいく結果を残しました。その後3シーズンをサガン鳥栖で過ごし、2016年タイトル獲得を目指してFC東京へ完全移籍を果たします。しかし、世代別代表での恩師である城福宏監督の解任もあり、十分な出場機会を得ることが出来ませんでした。

そして、2017年シーズンは、サガン鳥栖時代の恩師である尹晶煥新監督を迎えるセレッソ大阪に期限つき移籍が発表されました。持ち前のハードワークで輝きを取り戻せることが出来るのか。水沼選手の活躍が期待されます。

次ページ:セレッソ大阪で求められる選手像【動画有り】

水沼宏太選手のプレースタイルからみるセレッソ大阪で求められる選手像


by Cerezo OSAKA

水沼宏太選手のプレースタイルとして1番最初に思い浮かぶのは「ハードワーク」ではないでしょうか。

2015年シーズンを例にしてみると、サガン鳥栖がシーズンを通して最も走行距離が長かった試合は、2ndステージ第14節vs名古屋グランパスの試合でチーム合計122.46kmを記録しました。この数値は2015年に行われたJ1全試合のなかで第6位となる数値です。この試合、水沼選手は90分のフル出場を果たし、走行距離はチームTOPの12.52km、スプリント回数(スプリント:時速24km以上の走行)もチームTOPとなる26回を記録しています。数値からチームへの貢献はとてつもなく大きいことがわかります。

ハードワークに加えて、プレースキックやミドルシュート、クロスの精度も大きな武器です。サガン鳥栖時代のアシスト数を振り返ると、2012年は8本(チーム内1位)、2014年は6本(チーム内1位)と素晴らしい記録を残しています。サガン鳥栖には豊田陽平という屈強で高さもあるFWがいることも要因のひとつではありますが、右足だけではなく、左足のクロスも非常に精度の高いボールを供給することが出来ます。2015年シーズンはアシスト数こそ3本と低調でしたが、ゴール数は豊田陽平の16得点に次ぐ7得点を記録しています。父である水沼貴史氏を彷彿とさせるペナルティエリア内でのドリブル突破からのゴールや、前線からのプレスでボールを奪取してからのショートカウンターでのゴール、直接FKを沈めるなどゴールパターンも多彩であることも魅力です。
このプレースタイルが「堅守速攻」を掲げるサガン鳥栖のサッカーを支えてきたと言っても過言ではありません。

2017年シーズンからセレッソ大阪を率いる尹晶煥新監督はサガン鳥栖躍進の土台を作ってきました。彼は規律を重んじる監督であり、早くも就任直後から尹晶煥流の改革に着手しています。例として「茶髪禁止令」の可能性を示唆したり、体力面、戦術面だけではなく若手のプロ意識向上させるために早朝6時50分開始の「3部練習」を取り入れたりするなど真摯にサッカーに向き合うことを選手に課しています。目標は一桁順位でのフィニッシュと謙虚ではありますが、「守備を堅くするのは当たり前。」と昨シーズンJ2で42試合46失点の守備陣を再建することは至上命令だと言えます。水沼選手の加入は尹晶煥新監督が目指すサッカーに欠かすことが出来ないピースであることは間違いありません。チームには世代別代表での戦友である柿谷曜一郎や日本代表の山口蛍が在籍しています。彼らとの息の合ったプレーを披露することが出来れば、2012年シーズンのサガン鳥栖のようなJ1昇格初年度の上位進出も可能となるでしょう。

セレッソ大阪への移籍を後押しした恩師への恩返しを果たすための、水沼宏太選手のチャレンジはまだ始まったばかりです。

動画

直接FK

ループシュート

強烈なボレーシュート

水沼貴史ボレーシュート

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