【JリーグCS】チャンピオンシップはドリブラーに注目!前編

 11月3日に終了した明治安田J1リーグのレギュラーシーズン。

 そして、「勤労感謝の日」で祝日となる本日、いよいよ明治安田生命Jリーグチャンピオンシップが開幕します。

 J1リーグは来季から1ステージ制に戻るので、しばらくチャンピオンシップ(以下CS)とお別れになるのは2ステージ制への賛否とは関係なく寂しさも感じます。

 そんな暫定ラストCSは、「年間勝点3位以内、もしくは第1ステージか第2ステージの優勝チーム」に該当するチームが参戦条件。今季は年間勝点首位及び第2ステージ優勝の浦和レッズ、年間勝点2位の川崎フロンターレ、年間勝点3位及び第1ステージ優勝の鹿島アントラーズの3チームによる対戦となり、年間首位の浦和が決勝までシードされる形で開催されます。

年間勝点1位でCS決勝までシードされる浦和レッズ。ルヴァン杯との2冠なるか?by エキサイトニュース

集中力と張り詰める緊張感、息詰まる試合展開の連続

 スケジュール上の過密日程を理由に批判が集中するCSですが、昨年のCSは準決勝1試合+決勝2試合の合計3試合は全て見応えのある素晴らしいゲームでした。過密日程の影響は感じないほどに、逆に「普段のリーグ戦でここまでできないのか?」とも思える程でもありました。

 CSはカップ戦の準決勝・決勝レベル以上の価値があることは、魅力的なプレーを披露してくれた選手達によって表現されました。

 とはいえ、これだけ懸かっているモノが大きいビッグマッチだけに、拮抗したレベルのチームの選手達の集中力が研ぎ澄まされ、極限の緊迫した戦いになります。

 今季CSに進出した浦和と川崎はリーグ屈指の攻撃的なチームですが、それでも失点しない事を優先させる試合運びをする時間帯は出て来るでしょう。

前進守備でも後退守備にでも脅威のドリブル

今季はボーンマスでプレーするMFウィルシャー。負傷続きの「ガラスの天才」が期待され続ける理由は、中盤でのドリブルにある。by Yahoo Sports

 単純に自陣に引いてスペースを消すリトリートした「後退守備」を選択する場合もあれば、意図的に相手にボールを持たせて前線や中盤でのボール奪取からのショートカウンターを狙う「前進守備」もあるでしょう。鹿島の得意とする駆け引きの部分はこの選択の妙にあると言えるでしょう。

 また、失点しない事を優先させると言っても、攻撃的なチームでいつもコンパクトな陣形を心がけているチームは中盤でのプレッシング合戦による潰し合いになる場合もあります。

 後退守備でも前進守備でも中盤での潰し合いにしても、それらの守備を打開するには「人より速く走れる」ボールを動かす=パスが重要になるわけですが、そこはリーグ屈指のチームの対決。前進守備のプレスを外されても後退守備に切り替えて守れる二重三重の守備網となるだけに、パスだけでは打開しきれません。

 むしろ現代サッカーの流れの中では前進守備でも後退守備でも中盤でのプレッシングが必要不可欠なため、そのパサーが揃っているはずの中盤のエリアで、「横へのドリブル」で相手のプレス網を外せる選手が重宝される傾向にあると言えます。

 過去5シーズンほどは怪我に悩まされて満足に活躍する姿を披露できていないのに、イングランドの強豪アーセナルで「10番」を背負い続け、復帰すれば代表にも選出されるMFジャック・ウィルシャー選手(今季はボーンマスにレンタル移籍中)が期待され続けるのは、パサーとしての魅力はもちろん、この「横へのドリブル」でプレス網を外せる選手だからです。

 日本代表に照らし合わせると、やはりドリブルとパスのコーディネイションに優れたMF清武弘嗣選手(セヴィージャ/スペイン)がこれに該当する選手で、清武選手が今季から加入したチームでインサイドMFやボランチとしても試される事があるのは、こうした現代サッカーが求める稀有な能力を持ち合わせているからでしょう。

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Jリーグのドリブラーは現在どこへ?

ドリブルとパスを織り交ぜた清武のプレースタイルは、「組織」も「個人」も重要であるサッカーの魅力に溢れている。by Twitter@weeklysd

 サッカーは「組織」も「個人」も重要で、「個人」として仕掛けられるドリブラーには「組織」として彼等を活かす術も必要になります。

 では最近のJリーグではドリブラーはどう活かされているのでしょうか?

 Jリーグの特徴としては、昨季までの4年間で3度のJ1リーグを制覇したサンフレッチェ広島の<3-4-2-1>システムを発明したミハイロ・ペトロヴィッチ監督が浦和に”移籍”した事もありますが、世界的に4バック全盛の時代に珍しく3バックが流行しているリーグです。

 3バックを採用すると、両サイドに配置されるウイングバックの選手はサイド限定の動きになるのですが、それが攻撃面ではよりドリブルでの局面打開を仕掛けやすい、あるいはそうせざるを得ない役割を担う事になります。

 より自由なイメージが強いドリブラーですが、組織や規律に特徴がある日本サッカーの中ではやや堅苦しい仕事になる事もありますが、現在のJリーグのドリブラー達はこのウイングバックで活かし活かされています。

現在のJリーグのドリブラーを象徴する広島・ミキッチ

現在のJリーグで唯一無二の「サイド職人」ぶりを感じさせる広島・ミキッチ。Jリーグに置けるドリブラーの現在地を象徴する選手だ。by モアイ

 そんな日本サッカーの戦術的な背景や特徴の中で活かし活かされるドリブラーを象徴するのは、広島のクロアチア人MFミハエル・ミキッチ選手。

 2009年の加入以来、広島の<3-4-2-1>で右ウイングバックとして活躍し、タッチライン沿いでの独特なドリブル突破を披露し続けています。右サイドでボールを持った時の独特の間合いには、専門職としての『サイド職人』ぶりが窺える選手です。

 そんな類まれな能力を持ったミキッチ選手でも、守備時には<5-4-1>へと変化するシステムの「5」の右サイドバックの位置まで戻り切り、攻撃時には<4-1-5>のような「5」の右ウイングの位置まで攻めあがるなど、ハードワークをこなし続けます。

 浦和と今季の川崎も3バックをメインに採用しているため、この傾向が強いドリブラーが活躍しています。

 後編では今季のCSに出場する浦和、川崎、鹿島のドリブラーについて個々とチームとしての活かし方を紹介して行きたいと思います。

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