遂にJ1自動昇格圏内に浮上した清水エスパルス~最強2トップを輝かせる『昇格請負人』小林伸二監督のFW育成術
先週末、明治安田生命J2リーグは第41節が行われ、長らくJ1への自動昇格圏内となる2位につけていた松本山雅FCが17戦ぶりに敗れたため、見事に8連勝を飾った3位の清水エスパルスが遂に2位に浮上。
長丁場のJ2リーグも11月20日に行われる最終節を残すのみとなる中、今季からJ2に初めて降格し、序盤戦は二桁順位に低迷していた清水が遂に自動昇格圏内まで浮上して来ました。
一時は2位以下に二桁の勝点差をつけて首位を独走していた北海道コンサドーレ札幌が第37節から4戦3敗と終盤戦に入って大ブレーキとなり、16戦無敗だった松本も直近の3連勝の前は6勝7分と実は勝点を取りこぼし気味。8連勝で最終節を迎える清水にはJ2優勝の可能性すら残っています。
今季の清水は、第15節にザスパクサツ群馬を相手に8-0で圧勝して以降にチームが固まり始め、そこからの27試合を19勝5分3敗という驚異的な追い上げでここまでやって来ました。
その原動力はもちろん、J2リーグトップの26得点を挙げている北朝鮮代表FW鄭大世(チョン・テセ)選手と、リーグ3位の18得点を挙げているFW大前元紀選手。2人で44得点を記録している『J2最強2トップ』の得点力であるのは間違いありません。
また、チーム総得点83はJ2リーグで断トツのトップで、得点数2位の札幌は65と大きく引き離しており、これが得失点差の勝負となった場合に大きなチカラとなっています。
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3クラブを史上初のJ1昇格に導いた『昇格請負人』小林伸二監督
そんなJ2最強2トップですが、今季の開幕当初はもちろん、昨季もあまり活躍していたとは言えません。
大前選手は約半年間のドイツ移籍から2013年の夏に古巣・清水に復帰後、昨季は自身初のシーズン二桁得点となる11得点を記録していますが、チャンスメーカーのイメージが強い選手。
そして、鄭大世は典型的なストライカータイプの本格派FWですが、昨季後半戦から清水に加入して以降は川崎フロンターレ時代の得点を量産する姿は見られませんでした。
そんな2人を輝かせたのは、今季から清水の監督に就任した小林伸二監督。『J1昇格請負人』の異名通り、これまで大分トリニータ、モンテディオ山形、徳島ヴォルティスをJ1昇格に導いた指揮官です。
特筆すべきは、上記のJ1昇格に導いた3クラブは全てそれが『クラブ史上初のJ1昇格』だった事で、小林監督の手腕によりサッカーに興味を持つ地方の人々が増えたと言っても過言ではありません。
高松・松橋・豊田・ドウグラスを見出したFW育成術
そうした地方クラブがJ1へ昇格する上で最も重要なのは守備の安定にあるのは間違いなく、Jリーグを長らく見続けているサッカーファンの方々にも「小林監督と言えば組織的な守備」をイメージする方も多いはず。
ただ、小林監督は守備戦術の構築と共にもう1つ得意なのが、無名FWの育成。大分では高松大樹選手(今季限りで引退)と松橋章太選手(2013年限りで引退)、山形では豊田陽平選手(現・サガン鳥栖)と長谷川悠選手(現・清水)、徳島ではドウグラス選手(現・アルアイン/UAE)と津田知宏選手(現・横浜FC)が小林監督の下で一皮むけたFWへと成長しました。
1トップや2トップなどシステムは変わりますが、それぞれのクラブで大型FWとスピード系タイプのセカンドトップを組み合わせる補完性が絶妙で、山形では豊田選手と長谷川選手のツインタワーでしたが、長谷川選手の柔軟なポストワークとキープ力はセカンドトップの役割でもあります。
彼等のような無名だったFWを小林監督が育てられるのは、小林監督自身が現役時代にマツダSC(サンフレッチェ広島の前身)で指導を受けたオランダ人指揮官、ハンス・オフト監督の影響があります。当時はサイドからチャンスメイクするウイングだった小林監督は、オフト氏から「前へボールを持ち出すための個人戦術を叩き込まれた」ようで、ボールを受ける時に浮かす事で”タメ”を作り、その瞬間にスペースにボールを運んでドリブルに持ち込むようになったようです。
小林監督は指導者に転向してから1年目には広島でFW専門のコーチとなった当時、チームに加入したばかりの無名の長身FW高木琢也選手(現・Vファーレン長崎監督)にポストプレーを教え込む際に、このオフト氏からの教えを発展解釈して指導。すると高木選手は足下にボールを収める技術を身に付け、日本代表にも招集され、『アジアの大砲』の異名をとるストライカーに成長。
現在、鄭大世選手がポストプレーの際にボールを浮かしながらタメを作ったりするのは、小林監督の指導から来ているとも考えられます。
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J1優勝目前に迫った2005年のC大阪に近い現在の清水
とはいえ、鄭大世選手も大前選手もドイツでもプレー経験のある実績十分なFW。小林監督がクラブ史上初のJ1昇格へ導いた3チームのFWとは比較の対象にすらなりません。
ただ、小林監督が指揮して来たチームで似ているチームが過去に1つだけあります。2004年から3シーズンに跨って指揮したセレッソ大阪です。
当時のセレッソは過渡期にあったものの、守備の部分を立て直し上で、衰えも見えていたMF森島寛晃選手(現・C大阪アンバサダーなど)とFW西澤明訓選手(現・代理人)の両ベテランコンビを再生させて大躍進。最終的には5位に終わったものの、2005年にはJ1リーグ最終節を首位で迎えるまでのチームを作り上げました。
攻撃的なマインドのあるクラブで、実績十分の2人のアタッカー。現在の鄭大世選手と大前選手も、当時の森島選手と西澤選手のように止まりかけたキャリアが再び動き始めています。そして、そこには小林監督の存在が。
優勝、昇格、降格が全く決まっていないJ2最終節は現地で!
J2リーグ最終節、運命の日となる11月20日、清水は徳島でのアウェイゲームを戦います。昨年まで4シーズン率いた徳島は今季、小林監督と共に山形時代からコーチとして二人三脚で歩んできた長島裕明氏が監督を務めています。
長島監督は今季限りでの退任が決まっていますが、最終節に師弟対決と直近の古巣との対決が待っている運命の一戦の行方は?
また、首位の札幌は最下位のツェーゲン金沢と対戦。J2残留争いの方も全く決定しておらず、最終節の結果次第で金沢にギラヴァンツ北九州、FC岐阜の3チームにJ3自動降格となる最下位、J3・2位との入れ替え戦となる21位の可能性があります。金沢がJ2優勝とJ1昇格を狙う札幌以上のモチベーションで挑んで来る緊張感のある試合となるでしょう。
また、2位の清水と勝点で並んでいる3位・松本はホームで横浜FCと対戦。首位・札幌とも勝点3差で、依然としてJ2優勝の可能性も残ります。
C大阪と京都サンガの2チームのJ1昇格プレーオフ行きが決まっただけで、優勝争いも、J1自動昇格も、J1昇格プレーオフ(残り2枠)も、J2残留争いも全く決まっていない激動のJ2リーグ。
対戦カードは以下の通り。是非、会場に足を運び、この特別な緊張感とスリル、リアルを感じとりましょう!!
J2最終節対戦カード
11/20(日)14:00 一斉開催
札幌VS金沢(札幌ドーム)
山形VS北九州(NDソフトスタジアム山形)
水戸VS山口(ケーズデンキスタジアム水戸)
松本VS横浜FC(松本平広域公園総合球技場)
岐阜VS東京V(岐阜メモリアルセンター長良川競技場)
C大阪VS熊本(キンチョウスタジアム)
岡山VS群馬(シティライトスタジアム)
讃岐VS千葉(Pikaraスタジアム)
徳島VS清水(鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアム)
愛媛VS町田(ニンジニアスタジアム)
長崎VS京都(トランスコスモススタジアム長崎)