磐田・カミンスキー、甲府・河田、新潟・守田、名古屋・楢崎~最終節までJ1残留を争う4チームの鍵を握るGK達

 今季の明治安田生命J1リーグもいよいよ最終節。年間勝点1位の行方も気になるものの、すでに明治安田生命Jリーグチャンピオンシップに出場するチームはほぼ決定しただけに、優勝・CS争いよりも、4チームにJ2降格の可能性が残る残留争いに注目が集まっています。

最終節までJ2降格の可能性がある4チームの成績

 勝点が3差に収まっている4チームですが、実は総得点が32~37点の僅か5点差に収まっているのです。つまり「1試合に1得点は獲れる」チームであり、これは残留を争うチームにしては得点力は高いと考えられます。そして、4チームそれぞれに「飛び道具」的な卓越した個人技を持つストライカーがいるのも共通しており、外国籍助っ人FWの質では上位クラブよりも上回っているようにも見受けられる程です。

名古屋GK楢崎。日本代表で長年に渡って凌ぎを削って来た川口とのポジション争いではしばしば、「川口=ビッグセーブ型、楢崎=安定感」と評されて来た。楢崎は「安定感」で名古屋をJ1残留に導けるのか?by livedoor スポーツ

失点は多いが、J屈指の名手が4人揃うGK

 では失点がどうなのか?と着目すると、4チーム間で最少のアルビレックス新潟こそ48失点と50の大台に達していないものの、この数字は少ない方から数えて13位番目。つまり、下には残留争いをする3チームとすでに降格が決定した湘南ベルマーレ(55失点)とアビスパ福岡(62失点)のみという数字でしかありません。

 一般的には残留争いをするチームは守備を徹底的に堅く保つチームが多く、例年そういうチームが1つはあるもの。そして、そういうチームはたいてい「得点が取れない」。

 しかし、今季最終節まで残留を争う4チームは全て、「得点は獲れるが、失点もする」部分で共通しています。

 ただ、この4チームの主力GKであるジュビロ磐田のクシシュトフ・カミンスキー選手、ヴァンフォーレ甲府の河田晃兵選手、新潟の守田達弥選手、名古屋グランパスの楢崎正剛選手に関してはリーグ屈指のレベルにあるGKで、日本国内では高く評価されている4選手です。

 それは彼等が欠場時との成績を比較すると「平均失点」などで顕著であり、GKとしての大きな存在感を感じさせてくれています。(磐田のカミンスキー選手については下記詳細。)

 「失点は多いけど、頼れるGKがいる!」という共通項を持ち、J1残留を争う最終節、「得点は獲れる」4チームが如何に守るのか?GK達の活躍が欠かせません!

残留を争う4チームの主力GK出場時と欠場時の比較

次ページ:PKセーブを含むビッグセーブの多い「神ンスキー」の存在

PKセーブを含むビッグセーブの多い「神ンスキー」の存在

「神ンスキー」と表記される程、神憑り的なビッグセーブを連発するカミンスキーの存在は勝点に直結する。by J’s GOAL

 まずは勝点33で最終節に挑む、磐田。ただ、磐田の降格の可能性は限りなく低いもの。磐田自身が最終節・アウェイでのベガルタ仙台戦で敗れ、さらに残留を争う3チーム全てが勝利し、尚且つ名古屋が磐田との得失点差4を逆転した場合のみ。もしこんな奇跡が起こせるなら、今彼等はこの順位にはいないでしょうし、例年の残留ラインである勝点36くらいのポイントは持っているはず。もっとも、サッカーに絶対はないのですが。

 そんな磐田の守護神=カミンスキー選手は実は、欠場時の方がチームの失点が少ない数字が上記表から読み取れます。(出場時「1.68」→欠場時(1.29」)

 ただ、「隠れたGK大国」であるポーランド人のカミンスキー選手は、チームに加入した昨季から神憑り的セーブの連続でチームに幾度も勝点をもたらして来たGK。その「神ってる」ぶりから、磐田サポーターはカミンスキー選手を文字にすると、「神ンスキー」と表記する人々が多いほどです。

 そして、「平均失点」こそ多いカミンスキー選手ですが、コレを「平均勝点」にした場合はやはりカミンスキー選手出場時に大幅に数字を伸ばしています。(欠場時「0.79」→出場時「1.15」)

 つまり、カミンスキー選手がゴールを守る事により、他のフィールドの10選手が安心して攻撃に取り組める土壌が出来ていることが明白になります。

安定感か?神業セーブか?「完封率5割」のGKも!」

リーグ屈指のPKストッパーでもある甲府GK河田。昨季は一時期に20試合で10完封をするなど、乗ったら止められないGK。by Jleague.jp

 甲府の河田選手もまた、カミンスキー選手と同じくスーパーセーブの多いGKです。

 当時はまだガンバ大阪から甲府へのレンタル移籍中の身ながら、J1デビュー戦となった2013年の第4節・川崎フロンターレ戦からPKセーブをするなど、リーグ屈指の「PKストッパー」としても知る人ぞ知る存在。

 乗ってくると止まらない河田選手はJ1デビューから7戦無敗の記録を作っただけでなく、改めて完全移籍で甲府に加入した昨季のJ1第1ステージ第12節から第2ステージ第14節までの20試合で10試合を完封。一部では「完封率5割」のGKとしても名を馳せました。

 今季は負傷から自身の視力が下がるという不運も経験しながらも、プロ7年目にして自己最多の32試合に出場。すでに甲府で72試合のJ1経験を持つ守護神がJ1残留に導くでしょう!

 GKにビルドアップや試合を読む能力が求められる事が多い現代サッカーですが、この残留争いで問われるのは所謂GKとしてのセービング能力。具体的に言うと、乗ると神業セーブを連発タイプなのか?凡ミスの少ない安定感のあるGKなのか?

 長年に渡って日本代表として活躍した名古屋GK楢崎選手は、共に代表で凌ぎを削ったGK川口能活選手(現・SC相模原)とこの部分でよく比較されますが、川口選手が神業セーブタイプの代表なら、楢崎選手は安定感で勝負してきたGKの模範例のような選手と言えるでしょう。

次ページ:大量の主力欠場が響く新潟・守田に期待

大量の主力欠場が響く新潟・守田に期待

チームの格となる主力選手が大量欠場する新潟。それでも、叩き上げのキャリアから経験と実力を養ったGK守田の存在は心強い。by ALBIREX NIIGATA

 そして、新潟のGK守田選手も安定感で勝負するタイプで、2014年シーズンから新潟が日本代表GK東口順昭選手のガンバ大阪への移籍に伴って獲得したGKです。

 京都サンガからの期限付き移籍で、当時J2のカターレ富山でプレーしていた2012、2013年辺りから注目度が高かかった実力派です。191cmの長身にも魅力があり、空中戦やハイボールに強い。

 楢崎選手を筆頭に、安定感で勝負するタイプのGKはハイボールに強い傾向があると考えられます。むしろ、神業セーブの多いタイプはそこに弱点があり、DFラインを押し上げさせる代わりに、最終ラインの背後を広くカヴァーできるGKが多いのが特徴です。

 その上でJ1残留争いを占うと、上記した通り磐田のJ1残留は奇跡が起きない限りはない。その上で甲府は河田選手がここ数試合でセービングが当たりに当たっているだけに、心強く感じます。最低引き分けには持ち込めるのではないでしょうか?

 そうなると、安定しているけれど、毎試合1失点はしてしまうタイプの新潟・守田選手、名古屋・楢崎選手が分が悪そう。

 特に新潟は前節・G大阪戦でエースFWラファエル・シルバ選手と攻守の要であるMFレオ・シルバ選手が不可解な判定で退場処分となり、最終節で出場停止に。さらに守備の要であるDF舞行龍ジェームズも累積警告で出場停止で、対戦相手のサンフレッチェ広島からレンタル移籍中のMF野津田岳人選手も契約条項により出場できません。センターライン3本が不在で迎える新潟では、GK守田選手の堅守に期待がかかります。

 そして、現状では降格圏内の16位で最終節を迎える名古屋は、勝点を奪う必要性があるだけに、それをどう捉えるか?すでにJ2降格が決まった湘南が相手ではあるものの、「湘南スタイル」を貫いて来る場合は、名古屋としては引いてカウンターを狙う方が効果的で、それが楢崎選手のプレースタイルにも合致していると考えられます。それが得点を奪いにいかなければいけない立場で、どう振る舞うか?

 それでもやはり、主力大量欠場の新潟が苦しいのか?

気になる残留争い4チームの対戦カード

ベガルタ仙台VSジュビロ磐田
ヴァンフォーレ甲府VSサガン鳥栖
アルビレックス新潟VSサンフレッチェ広島
名古屋グランパスVS湘南ベルマーレ

いよいよ迎えるJ1最終節をGKに注視して楽しみましょう!

モバイルバージョンを終了