by Web Sportiva
欧州王者を決めるUEFAチャンピオンズリーグ決勝は2年ぶりにスペインの首都=マドリーに拠点を置く2チームによるダービー戦となり、レアル・マドリーが史上最多となる2年ぶり11回目の欧州制覇を飾りました。
クラブ史上初の欧州王座の座を狙ったアトレティコ・マドリーでしたが、2年前に続いてレアル・マドリーの前に敗れました。
3年間で2度もガビがCL決勝で主将としてプレーするのとは裏腹に
by 超ワールドサッカー
そのアトレティコ・マドリーは2013-2014シーズンにバルセロナとレアル・マドリーという絶対的な2強が存在するスペイン1部リーグで優勝を成し遂げました。そして、そのシーズンのCLでも決勝に進んでいた事を考えれば、現在の欧州でトップを争う4クラブには入るであろう旬な強さを持っているチームです。
そんなチームで主将を務めるのはスペイン人のMFガビ選手。しかし、彼は”容疑者”でもあります。
そう、前日本代表のハビエル・アギーレ監督も関わったとされる「八百長疑惑」の対象試合に出場していた選手として、裁判所にも出頭した立場になっているのです。
アギーレ監督が日本代表の指揮官の座をその疑惑だけで判断して解任されたのとは違って、ガビ選手は直近3シーズンで2度のCL決勝でキャプテンマークを巻いてプレーしているのです。
筆者のスペイン在住の友人が言うには、「それまで全く話題になってなかったけど、『日本でサラゴサの八百長疑惑が騒がれている』っていうニュース掲載されて話題になったくらい」なのが現地の反応です。
“奇跡の残留”から3週間経たずの「倒産申請」
2011年5月21日に行われたスペイン1部リーグの第38節(最終節)、レバンテVSレアル・サラゴサの試合がその”八百長疑惑”として上がっている試合ですが、その試合でアギーレ監督率いるサラゴサが勝利し、1部リーグ残留を決めました。しかし、その試合の数日前にサラゴサの選手・監督の数人の銀行口座にサラゴサのクラブから”不自然な入金記録”があったのがスペイン当局が掴んでいた事実により、こうした事態になっています。
そして、その入金された金銭を選手達は引き出して、当時のクラブのアガビト・イグレシアス会長(上記写真)側に渡したという所までは証言があるのが事実です。
しかし、当時の日本ではここまでは多く報道されていたものの、本当はこれに続く重要な事態がありました。
2011年6月8日、”奇跡の残留劇”から3週間も経っていないこの日、サラゴサは「会社倒産法」として法的整理を”申請”したのです。”申請した”というのがポイントで、倒産して財産管理下に置かれる前に、アガピト会長が所得を隠し、満を持して自分のタイミングで申請したのではないか?という事です。
この事態まで十分に掘り下げて報道されていないのに、アギーレ監督を「八百長監督」「灰色の指揮官」と報道し続けた日本のメディアには、筆者は不信感を持ちました。
それもサッカー専門メディアまでもが、サラゴサの倒産の事実よりも部数が売れるからか?アギーレ監督の解任を追求する記事ばかり掲載していたのが非常に残念でした。
また、この試合を迎えるにあたって「レバンテが主力選手を5人外した」というのが、「八百長疑惑に関係ある」とするような報道さえありました。レバンテがすでに1部リーグ残留を決めていたので、欧州のリーグでは消化試合では大幅な先発メンバーの変更は当たり前です。日本側メディアの”悪意ある付けたし”でしかありません。
アギーレ監督の解任要求をしていた方々は、その対象となった試合を観たのでしょうか?あの試合を観れば、「これが八百長なのか?」と思うはずです。それぐらいの迫力満載の試合内容で、それ以上に”負けなければいけない”はずのレバンテのGKがスーパーセーブを連発しています。
コレについては、以下のURLのハイライト動画で確認していただきたく思います。
試合内容からすれば八百長ではないと言えます。確かに金銭の流れが問題ですが、それは試合の結果よりもクラブの倒産申請の方に関係があるように考えられます。つまり、アギーレ監督も選手達も犠牲者の可能性が高いのです。
そもそもの話、スペインでは2010年の刑法改正までは八百長自体が刑罰の対象ですらありませんでした。それもそれで問題なのですが、この刑法改正による最初の大きな事件としてスペイン当局にスケープゴート(見せしめ)にされているのは運のないところではあります。
ただし、アギーレ監督が八百長は絶対にしてはいません。”勝たないといけないチームの監督”であったアギーレ氏が、この試合の勝敗に直接的に関与する事、八百長に絡む事は絶対にできません。
「今日は絶対に勝て!!」とは、監督なら毎試合言うことでしょう。もしそれが疑惑なら?サッカーには引き分け狙いの戦略が存在するので、サッカーという競技自体が八百長疑惑の対象になってしまいかねません。
どちらにしても、不自然なお金の流れを作ったのはアガピト前会長で、この事件は”八百長”ではなくアガピト前会長の所得隠しである可能性の方が濃厚なのです。
UAEリーグでも手堅い手腕を発揮~来季はACLにも参戦?
そんなアギーレ氏は2015年6月からUAE1部リーグのアル・ワハダの監督として指揮を執っています。
他クラブのような高額年棒で引き抜かれたようなスター選手が存在しないチームを、就任初年度に3位と躍進させてシーズンを終え、来季のAFCチャンピオンズリーグでプレーオフからの参戦権を獲得しています。
契約は1年でしたが、さらに1年の延長オプションも存在しているだけに、来年のACLではJクラブの前に立ちはだかるかもしれません。日本を含む東アジア勢と、UAEを含む西アジア勢が対戦するのは決勝のみですが・・・。
U23日本代表のアジア最終予選時には、日本代表でコーチとしてサポートしていた手倉森誠監督へ手書きの手紙を送ってくれたアギーレ監督。スペイン当局からの事情聴取も「15分だけだった」との事で、彼の潔白を願いたいと思います。