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ブンデス首位のライプツィヒ特集【第2弾】ラングニックとパワー・フットボール

hirobrown

2016/12/09 23:02

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 現在ドイツ・ブンデスリーガ1部で開幕13戦無敗を続け、8連勝中で首位を走る驚異の昇格クラブ=RBライプツィヒ。

 そのライプツィヒでスポーツディレクター(SD)としてチーム強化に携わるラルフ・ラングニック氏(58歳)は、シュツットガルトやシャルケの監督を歴任し、2008-2009シーズンには現在のライプツィヒのような初めてブンデス1部に昇格してきたホッフェンハイムの監督として、昇格初年度の前半戦を首位ターンし、「秋の王者」に導いたカリスマ指導者。そのキャリアから彼は「教授」と呼ばれています。

 しかし、彼は強豪チームも率いたにも関わらずリーグ優勝の経験はなく、監督として勝ち取った主要タイトルは、2011年に2度目のシャルケの監督として勝ち取ったDFBポカール(ドイツ国内カップ)の優勝1度きり。それもそのシーズン終盤に途中就任したため、そのタイトル獲得の功績はフェリックス・マガト前監督にあったとも言える程。

 言わば「無冠の帝王」とも揶揄されかねないにも関わらず、ドイツ国内外で長く「教授」と称され続ける彼が高く評価されているのは、現在では「パワー・フットボール」と呼ばれる、彼が発明した斬新なサッカーのスタイルやメソッド(方法論)にあります。

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【第1弾】開幕13戦無敗の8連勝中!ブンデス首位を快走する昇格組=RBライプツィヒの強さは本物か?

01_%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%82%af%e3%82%99%e3%83%8b%e3%83%83%e3%82%af「教授」ラングニック(左)の「師匠」グロース氏(右)。彼等の共同作業が現在のライプツィヒだけでなく、ドルトムントやクロップ等を生んだと言っても過言ではない。by FAZ.NET

盟友との共同作業から開発したドイツ発の新戦術

 現在も日本代表FW浅野拓磨選手とMF細貝萌選手が在籍し、日本人にも馴染みのあるクラブ=シュツットガルトのあるバーデン=ヴュルテンベルク州出身のラングニック氏。

 選手としてはシュツットガルトの下部組織に所属するもプロ選手としての契約までは勝ち取れず。他クラブでアマチュア選手としてプレーを続けたものの、3部リーグが限界で25歳で指導者の道へ。

 27歳の時にシュツットガルトに戻り、クラブのアマチュアチームの監督となった頃、現在の彼の「師匠」や「盟友」となる人物と出会い、指導者キャリアの大きなターニングポイントを迎えました。

 その後、ホッフェンハイムやシャルケ、ライプツィヒでも戦略アドバイザーとしてラングニック氏と2人3脚を組む事になる、ヘルムート・グロース氏。1980年代後半にヴュルテンベルク州サッカー協会のスタッフとして出会った2人は、当時の欧州サッカーを席巻していたイタリアのACミランによる新戦術「ゾーンプレス」を徹底的に研究し、それをこの地区のクラブで実践しようと指導書や練習メソッドを作成。

 現在も2人が共同SD&戦略アドバイザーを務めるライプツィヒとレッドブル・ザルツブルクの2チームでも行っている仕事は、30年近く前にやって来た事の更新作業のようなモノなのでしょう。

 3バックでガチガチのマンマーク守備と、「ゲルマン魂」による敢闘精神の力投型チームからの脱却が遅かったドイツ代表と多くのブンデスリーガのクラブ。その裏で彼等は地道に新たなサッカーのトレンドを研究し、ドイツ流に解釈した上で、ドイツ発の新戦術を開発して行きます。

「シュツットガルト派」指導者で溢れる現在のドイツサッカー界

02_%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%82%af%e3%82%99%e3%83%8b%e3%83%83%e3%82%afドイツのサッカーに革命を起こしたのは、このラングニックとその周辺の人脈による限られた指導者たちだった。by ElliottM95

 また、このシュツットガルトのあるバーデン=ヴュルテンベルク州出身である事も重要で、ボルシア・ドルトムントを率いて2011年と2012年のブンデスリーガを連覇するユルゲン・クロップ氏(現リヴァプール監督/イングランド)や「パワー・フットボール」の最先端を行くバイヤー・レヴァークーゼンのロジャー・シュミット監督、現在ドイツ代表を率いて10年を越える長期政権に入っているヨアヒム・レーヴ代表監督も同州出身。レーヴ監督はシュツットガルトで選手としても監督としての経験も積んだ人物です。

 クロップ氏が「監督として最も影響を受けた」と語るのは、彼が現役時代にマインツの指揮官として指導を受けたボルフガング・フランク氏。彼もまた、ACミランを研究し、選手であるクロップ氏と共にこのサッカーをドイツに広めた人物です。

 クロップ監督は自らが作った造語である「ゲーゲン・プレッシング」なる新戦術をドルトムントで完成させ、現在もその斬新なスタイルでプレミアリーグでも躍動するチームを指揮していますが、ACミランのゾーンプレスはリヴァプールが1980年代の中頃から導入したモノをアレンジして始まったとも言われているだけに、クロップ監督がリヴァプールにやって来たのは歴史的背景から考えれば必然とも言えます。

 ちなみにそのクロップ氏が率いたマインツとドルトムントを引き継いでいるトーマス・トゥヘル氏(現ドルトムント監督)は、ラングニック氏が3部から2部へ昇格させたウルムというチームの監督時代の主力DF。怪我で早くに現役引退した彼もまた、シュツットガルトの下部組織で指導者として多くの経験を積んでいますが、彼をシュツットガルトに招いたのは当時のトップチームの監督だったラングニック氏でした。

 現在、「ゲーゲン・プレッシング」や、「パワー・フットボール」として括られるドイツ発の新戦術は、欧州や世界的にも知られるようになっていますが、それを実戦の場で実質的に広められる指導者は、この「シュツットガルト派」とも言われる人脈のある指導者たちに限られています。

 「シュツットガルト」、「ドルトムント」、「マインツ」、「ホッフェンハイム」辺りをチェックする事は、ドイツサッカーだけでなく、欧州最先端のサッカーの近未来を知る要素になるかもしれません。どのクラブも日本人選手が在籍したクラブであるのは、日本人のサッカーファンとして誇らしく思います。

次ページ:ゾーン守備を攻撃に活かす「ゲーゲン・プレッシング」の原型

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