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リアルに世界制覇を狙うヤングなでしこ~冴え渡る高倉監督の采配

hirobrown

2016/11/28 21:05

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 11月13日に開幕したFIFA-U20女子W杯パプアニューギニア大会。「ヤングなでしこ」こと、U20女子日本代表は準決勝進出を決めています。

 2年前のU17女子W杯で世界制覇を経験している黄金世代ならぬ、「最強世代」とも称される現チームは、今大会でも現実的に世界制覇を目指しています。

 今大会の日本は「死の組」と言われたグループBに入り、U17W杯時の決勝で対戦したスペイン、身体能力だけでなく進境著しい「アフリカの雄」ナイジェリア、そして、カナダの3カ国と準々決勝進出の2枠をかけて対戦。

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ブラジルを相手に3-1と快勝。準決勝進出を決めたヤングなでしこ。by JFA

スペインに惜敗もパスワークを微修正し、GL首位通過

 初戦のナイジェリア戦は”なでしこらしい”パスサッカーで試合の主導権を握りながらも、初戦の独特の緊張感からか先制点をなかなか奪えず。

 それでも所属する日テレベレーザでプレナスなでしこリーグとプレナスなでしこリーグカップの2冠を主力として経験したMF長谷川唯選手とFW籾木(もみき)結花選手のコンビで先制に成功すると、その籾木選手が2得点1アシスト+オウンゴール誘発の大活躍。さらに籾木選手と2トップを組んだFW上野真美選手がハットトリックを達成し、終わってみれば6-0と圧勝のスタートとなりました。

 ただ第2戦のスペイン戦、相手はU17W杯時に日本と2度対戦して完敗していた事で、日本対策を徹底。日本が中盤を使ってビルドアップする得意の形を猛烈なプレスで封じて来たため、日本の自慢だったMF陣が全く前を向いてボールを展開できず。終盤のハンドによるPKでの失点により、0-1と惜敗を喫しました。

 それでも第3戦にはそれを修正し、パスワークの手法もDF→MF→FWという典型的なモノだけでなく、DFから直接FWへ入れてキープして全体を押し上げる柔軟性も出した事で、5-0と再びの圧勝。

 細かく言えば、CB2人・SB2人・ボランチ2人・サイドMF2人・FW2人をそれぞれ横の「ライン」と考えるなら、CBからFWへ4ライン越えの縦パスを出しつつも、FWはボランチにバックパスを落とす。これを式に直せば、「4歩進んで2歩下がる」と捉えられます。日本はバックパスを有効に使う事によって試合を有利に運び、個で仕掛けられるエリアや数的有利な局面を吟味できるように支配していました。

 ただ、こうすることでFWの2人が「5人目・6人目」のMFとしてパスワークに絡む頻度が増すため、初戦で6得点を叩き出した2トップの得点は減少傾向となりましたが、逆にMF陣がぺナルティエリア内に飛び出して来る回数が急増し、より流動的な攻撃が仕掛けられるようになっています。

 第3戦は他会場でスペインがナイジェリアに敗れたため、2試合を大勝している日本は狙い通りの首位通過で決勝トーナメントとなる準々決勝進出が決まりました。

優勝を見据えた高倉監督の柔軟な采配

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U17W杯でも優勝に導いた高倉監督。by FIFA

 迎えた準々決勝のブラジル戦、日本は籾木選手と上野選手の2トップから激しいプレッシングを敢行し、今大会で最も全員攻撃・全員守備による「トータル・フットボール」の色を濃くし、個人技に長けたブラジルを相手にも主導権を握って3得点。終盤にPKで1点を返されて今大会2失点目を喫したものの、3-1と快勝。フランスとの準決勝に駒を進めました。

 そんな今大会のチームをU16代表時代が持ち上がりで指揮する高倉麻子監督。2年前のU17W杯時には6戦全勝の23得点1失点と圧倒した上で、12人もの得点者を生む、という柔軟な起用法を見せていましたが、今大会でもその采配は際だっています。

 すでに3試合目でフィールドプレーヤーの全員を起用し、ここまでの4試合で12得点で7人の得点者を生んでいます。上記したように攻撃の流動性は大会が進むにつれて増しているので、今後も新たな得点者が出て来る可能性も高いはず。失点もPKによる2点のみに止めています。

 柔軟な采配は露骨なターンオーバーという意味合いでもなく、それはここまでの4試合をフルタイム出場している選手が5人おり、全試合先発出場している選手もその5人の他に1人いる事でも証明されます。

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赤太字はフルタイム出場、赤細字は全試合先発もしくは全試合出場選手。

 特に4バックは乗松瑠華選手、市瀬菜々選手のCBコンビ、左サイドバックの北川ひかる選手がフル出場中と大会直前にレギュラーだった清水梨紗選手を負傷で欠いている右サイドバック以外は完全固定。そして攻守の要となるボランチの隅田凜選手、今大会のMVP候補的な高次元のパフォーマンスを続ける左サイドMFの長谷川選手もフル出場中です。

 男子の日本代表が2010年の南アフリカW杯でベスト16に進出しましたが、全4試合で全く同じ先発メンバーが続いたのとは実に対照的。つまり、当時の岡田武史監督(現・FC今治オーナー)はベスト4進出を掲げていましたが、現実的には目先の1勝を挙げるのが精一杯だったのが実情だったのでしょう。

 逆に高倉監督の場合は現実的に優勝の可能性があるからこそ、その采配がそれを証明しています。

次ページ:「個」で不利でも「組織力」に逃げないチーム作り

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