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バルセロナ 3-0 チェルシー 試合に影響を与える要因と質的優位

ぱこぱこ・へめす

2018/03/18 15:08

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NEWS

ファーストレグでは1-1で試合を終えたチェルシー対バルセロナ。モラタやジルーをベンチに置きアザールを最前線に据えたチェルシーは先制点を奪いながら勝ち星を逃してしまった。バルセロナとしてはアウェイゴールを奪ってホームに帰還したことで、余裕を持って試合に臨むことができた。

ファーストレグの後、チェルシーはマンチェスター・シティやマンチェスター・ユナイテッドと続けざまに対戦し、黒星を重ねてしまった。一方のバルセロナとしてはアトレティコ・マドリーとの試合もありながら連勝できたことで調子を保っている。

(参照:チェルシー 1-1 バルセロナ ビルドアップへの守備組織の解決策は)

スターティングメンバー


by @11tegen11

マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン
セルジ・ロベルト、ジェラール・ピケ、サミュエル・ウンティティ、ジョルディ・アルバ
ウスマン・デンベレ、イバン・ラキティッチ、セルヒオ・ブスケツ、アンドレス・イニエスタ
リオネル・メッシ、ルイス・スアレス

ティボー・クルトワ
ヴィクター・モーゼス、セサル・アスピリクエタ、アンドレアス・クリステンセン、アントニオ・リュディガー、マルコス・アロンソ
ウィリアン、セスク・ファブレガス、エンゴロ・カンテ、エデン・アザール
オリビエ・ジルー

試合立ち上がりの先制点

(参照:「戦犯はクルトワだ」 V・ハール、2度の股抜きを許したチェルシーGKの“下半身”に激怒)

バルセロナのキックオフで開始された試合。ミドルサードで5-4-1の守備ブロックを敷くチェルシーに対してボールを保持するバルセロナという形で序盤が進んだ。すると前半3分、右サイドのハーフスペースの角度のないところでボールがメッシのもとに渡り、クルトワの股を抜いてゴールに流し込んだ。

メッシへボールが転がったことはチェルシーにとって不運だったと言えるが、各国で様々な人々が指摘している通り、クルトワの股抜きへの意識や対処の仕方が不十分だった。

チェルシーの守備ブロックはミドルサードに敷く5-4-1。1列目のジルーはブスケツとラキティッチの間にポジショニングし、センターバックからパスが出ればプレスバックでセンターハーフと挟み込めるようにしていた。2列目はまずセンターハーフのカンテとファブレガスがブスケツとラキティッチを捕まえる。ウイングのアザールとウィリアンは中央のパスコースを切り中盤へと挟み込めるようにハーフスペースにポジショニングしながらセルジ・ロベルトとアルバを捕まえる。3列目はDF-MFライン間をコンパクトに維持するためにDFラインを高く保った。


by footballtactics

バルセロナのボール保持は、2センターバックと2センターハーフによるボックスビルドアップであり、左右非対称となっている。右サイドではデンベレのスピードを生かすためにアウトサイドレーンで高い位置を取り、セルジ・ロベルトはワイドに開いてプレッシングの逃げ所になるかハーフスペースの入り口でデンベレの斜め後ろでサポートする。一方左サイドでは選手が密集している。アルバがワイドで高い位置を取り、ハーフスペースにはスアレスやイニエスタが常時ポジショニングしている状態である。特にイニエスタはサイドハーフでありながらインサイドハーフのように振る舞い、ブスケツとラキティッチと一緒に3センターを形成する。

イニエスタのインサイドハーフ化に対するチェルシーの対応はボールなどの位置によって、2センターハーフがスライドで受け渡すか、高い位置を取ったアルバをモーゼスに受け渡しウィリアンが絞って付いていく。

バルセロナはサイドから後ろを経由してサイドへと、U字のボール循環を行う時間が長かった。チェルシーとしては中央を通されたくない一方ハイプレッシングで後方のスペースを空けてカウンターアタックを受けたくないという思いがあり、バルセロナもリードを奪っている中でボールを保持したいので、U字パスが続くのである。

ゴールキックはオープンプレーのゲームモデルの縮図なのか

サッカーは現在、4つの局面(両ボール保持、両トランジション)に分けて理解されるようになっている。もちろんこれはオープンプレーでの区分であり、試合を包括的に理解するにはこれにセットプレーを加える必要がある。サッカーではセットプレーはフロンティアであると考えられており、なぜ未開拓なのかと言えば、トレーニングでセットプレーを組み込めば動きが少なく身体が冷えてしまうのと、週2試合をこなす過密日程ではリカバリーと次の試合の戦術確認で終わってしまうからである。

サッカーにはいくつかの種類のセットプレーがあるが、この中でオープンプレーとの距離感はどうだろうか。例えばあるチームのゲームモデルで後方からのビルドアップを試みるとすれば、ゴールキックでもショートパスでプレーを再開したいだろう。一方ゴール前でのフリーキックやコーナーキックは得点に直結するチャンスであり、普通ゲームモデルとは違った形が見られる。

バルセロナはポゼッションを指向しており、ゴールキックでもショートパスから試合を再開しようとする。センターバックがペナルティーエリアのすぐ外まで開き、センターハーフがその前にポジショニングして台形を作る。サイドバックはワイドで低めの位置を取ってプレッシングの逃げ所となる一方、前線は前方に広がる広大なスペースへのカウンターアタックに備えている。

ボールを保持するチームに対して、ある時間帯やある局面では異なる振る舞いをするのはよくあることである。すなわち、試合開始から5分から10分程度はハイプレッシングをかけるとか、ゴールキックやスローインの場面では高い位置から人数をかけるとかである。チェルシーもゴールキックからボールを繋ごうとするバルセロナに対してハイプレッシングをかけた。これはファーストレグでも同様に行われたことであり、プレッシングの逃げ所となるサイドバックに対してウイングバックが対応できたことで、チェルシーはバルセロナからポゼッションを奪うことにかなり成功していた。

セカンドレグでは、バルセロナの前線に3トップ(メッシ、スアレス+デンベレ)がおり、センターハーフも中盤でマンツーマン指向でプレッシングをかける中、3バックを置いていけずにウイングバックが中途半端になってしまった。従って、ボールを奪い取ることができなかった。

得点状況が試合に与える影響とフリーロールの存在

試合展開に影響を与える要因は主に、時間経過、得点状況、選手交代がある。早々と失点してしまったチェルシーは得点を奪わなければならない状況に陥った。しかし先制点の段階では時間がまだほとんど経過しておらず、チェルシーは特に変化を加えなかった。

チェルシーのボール保持局面は、ウイングバックが高い位置を取りウイングが横幅を取る役割から解放され、フリーロールとなる。グアルディオラが「自分のものとは異なるがコンテもポジショナルプレーの使い手」と評価している通り、基本的には選手たちのポジショニングに細かく指示を与え配置的な優位性を創造を志している。その中で質的優位を寄与できるウイングは自由にプレーできる役割を得ている。

(参照:プレミアリーグ2016/17シーズンの上位争いとチェルシーの3バック)
バルセロナにとってのメッシもフリーロールである。フリーロールを与えられた選手は攻撃において質的優位を示せる一方で守備組織において課題となるのがビッグクラブの宿命である。バルセロナはデンベレの怪我の影響もありパウリーニョがフィットしてバランスが取れたし、チェルシーもシステムのバランスが取れていたために昨シーズンのリーグ優勝に繋がった。

バルセロナのプレッシング

バルセロナはボール保持にこだわるチームであり、ネガティブトランジション(ボール喪失)時にはカウンタープレッシングを行う。その時のスアレスの動きは非常に興味深い。まずボールサイドのセンターバックへと向かいサイドチェンジを避け、そのままボール保持者へ後方から回り込む。ボール保持者周辺はマンツーマンでプレッシングがかかっており、DFラインを経由してサイドチェンジすることもできなくなるため、前線に放り込むか質的優位でしか対処できなくなる。

ボール非保持時にはバルセロナは4-4-2である。バルベルデ・バルセロナの守備時の特徴は、ボールサイドではマンツーマン指向でプレッシングをかけながら、ボールの位置を基準としながら逆サイドはゾーン指向で対応している。ハイプレッシングのチームにはよくある形で、うまく組織化されている。

4バックによる迎撃

前述のように試合展開に影響を与える要因には時間経過があるが、ハーフタイムは指揮官が指示をメンバー全員に伝達できるので重要である。後半からチェルシーは前からプレッシングを行いボール保持を志すようになる。

多く見られた形はフリーロールの2ウイングが左サイドに密集しコンビネーションによる突破を図りながら、逆サイドで高い位置を取ったウイングバックへとサイドチェンジを行うものである。4-4-2でスライドしながら守備を構築するバルセロナの泣き所が逆サイドであるので、サイドチェンジはかなりの確率で成功する。しかしウイングが左サイドに移動しているため、ボールが渡った時点でモーゼス(もしくは途中出場のダビデ・ザッパコスタ)はアルバと1対1の状況になる。圧倒的な質的優位を示せるわけではなくクロスボールに対しても繰り返し中でよい形を作れたわけではなかった。

後半はチェルシーがボールを保持し、バルセロナがプレッシングをかける時間帯が多かった。特に早い時間帯に交代枠を使い切り、ボールサイドでマンツーマン指向の守備を見せ中盤に運動量を求めた。このマンツーマン指向はセンターバックも含まれている。フリーロールのウイングに対して、センターバックが迎撃(DF-MFライン間にポジショニングする相手に対して、前に出て対応すること。DFラインにギャップができてしまうため4バックで迎撃をすることは多くはなく、ビッグクラブに対してペナルティーエリア幅を迎撃型3バックで対応する形が多い)している。バルセロナの3得点目ではウンティティが連動してウィリアンに付いていっている。

まとめ


by @11tegen11

試合を振り返るとxGでは0.57-0.51であり、これだけ見れば互角の戦いであった。どちらも決定的なチャンスを作り出したとは言えない。立ち上がりに得点を奪ったバルセロナが試合を有利に進める中、チェルシーも惜しい機会を見せた。

https://twitter.com/ChampionsLeague/status/974605413495857152

準々決勝では、バルセロナはローマとの対戦が決まった。そのほかの試合も目が離せない。

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