トッテナムは嫌われている。なぜか?かつてビッグ4と揶揄された時代には想像もつかないような強さまで進化を遂げ今では彼らに匹敵する力を自ら築き上げたために「一筋縄ではいかないチーム」になってしまったからだ。若手の発掘・魅力的なトレーニング施設・クラブが成し遂げるためのビジョン、これらの徹底により実力者に投資をするだけのチーム力強化に反論を呈するかのようなチームを作り上げてきた。
強豪の噛ませ犬にされていたスパーズだが、近年の目覚ましい活動の沿革は一般企業の隆盛に似た部分もあり、本質的な部分にフォーカスを当てれば魅力的だと思われてもおかしくないと私は考える。実際、トッテナムのファンは年齢層は高くそこはかとないインテリジェンス性を感じられる。
そんなプレミアリーグの優等生とも言えるトッテナムが元気がない。2019年に入り公式戦「8勝1分6敗」と勝ちきれない試合が続いている。特に直近5試合では「1勝1分3敗」と大きく負け越し、リーグ戦では優勝戦線から脱落→CL出場権争いにカテゴライズされた。
本記事では、スパーズの失速の原因かを個人的な見解から紐解きたいと思う。
◆2トップは果たして正解なのか。
⏱️ One hour to team news!
🗒️ What would your starting XI be at St Mary's? #COYS ⚪️ #PL pic.twitter.com/1REGORqluN
— Tottenham Hotspur (@SpursOfficial) 2019年3月9日
直近の試合ではケイン・ソンフンミンの2トップを採用しているが、今この前線が正解であるとは思えない。実際、ケインが怪我から復帰した2/23のバーンリー戦からトッテナムは公式戦は5試合戦い4ゴールしか獲得できていない。そのうちアーセナル戦の1ゴールはPKだったため、オープンプレーからは3ゴールとなっている。
ケインとソンフンミンから形成される2トップは誰しもが恐怖を感じる。しかし、その恐怖から相手は強固な守備網を形成するため、2トップはその狭いスペースで戦いを余儀なくされている。ソンフンミンはアジアカップから休みなくプレーし疲労が見え、ケインは怪我明けの試合勘が頓挫している。結果いとも簡単に攻撃を無力化される格好になっているのだ。
スパーズはもう少しペナルティエリアの手前であるバイタルエリアの有効活用に急ぐべきだ、直近の戦いではバイタルエリアはエリクセンだけの支配エリアとなっているため、攻撃の手札が少ない。「ケインの1トップ+その下にソンフンミン・エリクセン・アリ」といった昨シーズンにプレーしていたプランに一度戻すのも手段と言えるだろう。
◆サイドバック
トッテナムがすぐにメスをいれるべき箇所は間違いなくサイドバックだろう。特に2019年に入ってからサイドバックの質が不安定になっている。
トリッピアーのボールロスト。(1/14 マンチェスターユナイテッド戦)
https://www.chelseafc.com/ja/videos/v/2019/02/27/tottenham–h–18-19-prem-lobWNjaDE6UDh_8aVfyUxPJIq4R0hiyD
トリッピアーとロリスの連携ミス。2:23〜のシーン(2/28 チェルシー戦)
ローズの誤判断。(3/10 サウサンプトン戦)
すべて失点につながっており、上記のゴールをした試合はすべて敗戦に終わっている。コンスタントにこうしたミスが継続されるようだと試合に勝利することは当然不可能、さらに言えばプレミアリーグ制覇もずっと夢のままになってしまう。改めてサッカーが「ミスをいかにしないか」を物語るシーンであり、その面白さと重要性に気づくいい機会になってほしい。
この問題点、実は数年前のマンチェスターシティに似ている。ペップ就任1年目、マンチェスターシティはサイドバックの質について多くの指摘を受けチームは思うようなシーズンを過ごすことができなかった。そのため、翌シーズンに大胆な補強をすることに。カイルウォーカー、ダニーロ、メンディー、更にはファビアンデルフのコンバートを敢行しサイドバック問題は解消。そのシーズンはもちろん優勝を果たしている。トッテナムにもその局面にしているのだろうか。
現時点でサイドバックの補強を行うことはできないため、問題を解決に導けるディフェンスラインを考案したが、上記に示したディフェンスラインしかないのでないだろうか。アルデルヴァイレルトは代表やアトレティコ時代は右サイドバックをこなしていた。かなり現実的ではないがプレスキックが得意なことも加味してこうした陣形を推奨する。
◆守備組織のバランスを崩せるプレーヤーの不在
スパーズの魅力は痛快なプレー。芸人で言えば麒麟、ドラマで言えば半沢直樹のようなイメージではないだろうか。(すいません勝手なイメージです。)
しかし、このところの戦いぶりには痛快さが感じられない。2トップの問題点でも挙げたとおり、2トップがペナルティエリア内で陣取るために守備側がそこを警戒してエリア内に4枚ないし5枚の守備陣系が組閣されてしまう。そのため守備組織を崩せず、シュートすら打てない状況に陥ってしまう。
スパーズがこうした環境でも勝ち続けタイトルレースに残り続けるためには、「個人で守備組織を崩せるプレーヤー」をスカッドに持つことであると考える。
そんなプレーヤーが厳密に言えばスパーズには存在した。「ムサデンベレ」だ。彼は今シーズン冬に中国へと旅立ってしまったが、デンベレはこれまでこうした難しくなった試合でも物怖じせず独特のボール保持能力と対人能力で攻守におけるキープレーヤーとしてピッチの上に君臨していた。
彼を呼び戻すことはできないが、せめて彼のプレーに倣った動きが今のスパーズには求めれられる。私はウィンクスが最適であると考える。
2/28のチェルシー戦では行き詰まった攻撃のときにウィンクスが中央でボールを受け取りクロスバーを弾くシュートを打ったシーンがあった。このとき完全にフリーで打てたこと、チェルシーの守備のバランスを嫌でも崩さなければならないシーンであったことには間違いない。こうしたエリクセンやサイド攻撃とは別の起点からの攻撃オプションを作ることが必要であるように感じてならない。
◆来シーズンに向けてトッテナムが取るべき処方箋とは
トッテナムはもう今シーズンのプレミアリーグ制覇はなくなったと言ってもいいだろう。今はCL出場権獲得の4位以内とCL準々決勝に傾注しながらも来シーズンに向けた最適な補強を思案するべきだ。
これまで記述した課題点の内、脱2トップ・個人打開できるプレーヤーという課題を補えるプレーヤーを私は発見した。そうです。私は密かに彼の再来を望んでいるのです。
ギャレス・ベイル、トッテナムで一時代を築いた名プレーヤーだ。彼の魅力は言うまでもなく「個人打開ができること」さらには「攻撃のユーティリティ性」である。トッテナム時代も現所属のレアルマドリーでも持ち前の爆発力で試合を決める術を彼自身備え付けており、2トップ・3トップ・トップ下までどんな配置にいても結果を残すことができる。
ベイルは今レアルマドリーでの風当たりが強く、チーム内でも孤立をしているとの噂がある。チャンピオンズリーグでアヤックスに敗れ4連覇の夢が潰えた今シーズンはチームの大掛かりなモデルチェンジが敢行されることだろう。おそらくその波に飲み込まれ、ベイルはレアルから放出されることは濃厚という見立てがある。再起を目指す29歳と彼を最大限活かせる環境が今大きくマッチングしている状況だ。
Enjoy a defensive masterclass and another fine night in the @ChampionsLeague!
— Tottenham Hotspur (@SpursOfficial) 2019年3月6日
着々と進化をしていく過程の中で、停滞することはもちろんありえるこのご時世。しかしトッテナムのこれまでの成長ぶりを理解している人間からするとこうした状況も必ず打開し、また少し成長し強くなるという確信を何故か強気に持ってしまっている。
泣いても笑っても残りリーグ戦は8試合。
COYS!!