長年の育成が実ったカタールの初優勝を以て、1月5日より約1ヶ月にわたって激闘が繰り広げられたAFCアジアカップ2019が閉幕した。
我らがサムライブルーは苦戦しながらも随所で勝負強さを見せ、前人未到の5回目の優勝を目指したが惜しくも次期ワールドカップ開催国にその道を阻まれることとなったが、サッカーファンには非常に興味深い発見が多い実りある大会であったのではないかと筆者は考えている。
日本ではなかなか報道されなかった他国の動向も交えながらも改めてアジアカップを総括したい。
🏆 C H A M P I O N S 🏆
🇶🇦 #Qatar are the #AsianCup2019 winners. Their first ever title! History! pic.twitter.com/ceRMnUwCtL
— #AsianCup2019 (@afcasiancup) 2019年2月1日
エキスパンションが加速させた群雄割拠のアジアサッカー地図
今大会の大きな特徴は何よりも出場国数の拡大であろう。2004年の中国大会から2015年のオーストラリア大会まで、16カ国で本大会を争うシステムが採用されていたが、今大会はさらに8カ国が追加され合計24カ国が出場可能となった。
他地域でも2016年のEURO(欧州選手権)でエキスパンションによる出場国拡大が行われたが、今回AFC(アジアサッカー連盟)でも同様の形で拡大路線を取ることになったと言える。
ただ拡大路線を取ると懸念されるのは全体的なレベルの低下である。ことAFCにおいては47カ国が参加し世界で最も広大なエリアを持つサッカー連盟となっている中で、FIFAランキング上位国と下位国との間では顕著なまでの実力差がある。
このことから、日本・韓国・イラン・サウジアラビア・オーストラリアなどロシアワールドカップ出場国に加えて、今大会開催国のUAE、次期ワールドカップ開催国のカタール、中堅国の北朝鮮、中国、イラク、バーレーン、ウズベキスタンなどと東南アジア・南アジアの新興国がまともに渡り合えるのか?という点は一つの焦点となっていた。
しかし、蓋を開けてみると面白い試合を次々に見ることができたのである。
東南アジア・南アジア勢の躍進
大会2日目に行われたインドvsタイがまず一つ目の驚きであった。
Jリーグ2018ベストイレブンにも選出され、北海道コンサドーレ札幌でレギュラーを張るチャナティプ・ソングラシンを筆頭に、ティーラトン、ティーラシンと日本でも確かな実力を見せた選手を擁するタイがインドを圧倒するかと思いきや、まさかのインドが1-4のジャイアントキリングをぶちかましたのである。
国内にスーパーリーグが生まれ、総人口ではもちろん世界を驚かせるポテンシャルがあるにも関わらずなかなか輝けなかったインドがいきなりのサプライズを見せてくれた。この衝撃の後、タイは初戦終了後にライェヴァツ監督を電撃解任。いきなり大会に不穏な空気も漂い始めたのである。
しかし、タイはその後バーレーンに勝利、開催国UAE相手にドローと見事な立て直しを見せ1勝1分1敗でグループリーグを2位で突破。決勝トーナメントにしっかりとコマを進めたのであった。
次の驚きはベトナムであろう。ここ数年の育成には目を見張るものがあり、数年前にはJリーグでも指揮を執った三浦俊也氏がA代表の監督を務め、レ・コン・ビンや今大会でもエースとして出場で活躍したグエン・コン・フオンはJリーグにも参戦した。先のアジア大会ではグループリーグで若き森保ジャパンの前にも立ちはだかり、日本相手に勝利を収めている。
今大会はイランとイラクという中東屈指の強豪国と同グループになり、両国にはかなりの苦戦を強いられたがイエメンに勝利し他グループ3位チームとワイルドカードを争う形で決勝トーナメントに進出。
ベスト16では中東の伏兵ヨルダンと激闘を繰り広げてPK戦で勝利。
自国開催であった2007年以来のベスト8に進出し森保ジャパン相手にも1-0の接戦を繰り広げ、今後のワールドカップ最終予選においても日本代表の驚異となる可能性を残し、確かな爪痕を残して大会を去った。
アジアを去るワールドクラスの指揮官
新興勢力が新たな力を見せた一方で、敗戦後の監督退任が発表される場面が随所で見られた。比較的アジアという地域は各国共通で刹那的に解任を行う傾向があるイメージを筆者は持っている。
その中で大きく報道されたのは、中国を率いた世界的名将・マルチェロ・リッピの退任であろう。
同氏はFIFAワールドカップ2006で母国イタリア代表へ4回目の優勝をもたらし、ユヴェントス、インテルという世界屈指のクラブでUEFAチャンピオンズリーグはじめ多くのタイトルを獲得しているのは周知の事実。
2012年より有名選手の爆買いで有名な広州恒大足球倶楽部の監督を2年務めた後、2016年より代表チームを率いることになり中国サッカーにおける発展の中心にいた存在であった。
自国リーグが盛り上がりを見せながらも代表チームの成長がなかなか進まない中国代表であったが、今大会は大会優勝候補最有力であったイラン代表に0-3と完敗しベスト8で大会を去った。
既に次の手を打っているだろうが、ここに来てリッピ氏の監督退任は非常に痛いのではないかと感じている。
また、2011年より8年にわたってイラン代表を率いたカルロス・ケイロス氏も同国を去ることとなった。
8年間の間に2度のワールドカップ出場(2014、18)を果たし、アリ・ダエイ氏らの時代を上回る戦力をしっかりと育成しFIFAランキング29位(2019年2月2日時点)まで押し上げた功績は大きい。
かつては銀河系軍団真っ只中のレアル・マドリードを率い、マンチェスター・ユナイテッドでは名将アレックス・ファーガソンの元でヘッドコーチを務め、なんと黎明期の名古屋グランパスエイトの監督も経験した彼の次の舞台は南米の強豪コロンビアが濃厚である。
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