Shooty

中堅チームに成り下がるのはどちらか アーセナル チェルシーの問題点とは

footidiota

2019/01/20 08:10

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

NEWS

年末辺りからアーセナルとチェルシーはいい雰囲気ではない。

1/16現在アーセナルが5位、チェルシーは4位と監督が変わった初年度としては悪くないシーズンであるが、試合内容が決して良かったものではない。まさに勝つべくして勝った試合が少ない。

彼らが抱える問題点とは一体何なのかを探った。

両者に共通して言えること】

◎ポゼッションを稼ぐためのサッカーをしている

試合を見ている中で両者に言えることは、点を取るためのボール支配をしていないということだ。

アーセナルは平均支配率59.8%でリーグ4位、そしてチェルシーは65.8%でリーグ2位と驚異的な記録を残しているのは確かだが、最もマンチェスターシティやリヴァプールのようなゴールを迫る意識が薄れて、相手陣内でボールを回すことだけに注力しているのではないだろうか。

実際、試合を見ても「ここを通せばチャンスなのに」と思わず叫んでしまいそうなシーンが見受けられ、リスキーな選択を選ばない姿勢に溜息が出てしまう方も多いのではないだろうか。
結局ボールをボランチ以下で回すだけで時間が経過し、彼らのプレミアリーグにおける総パス数だけがカウントされる一方である。

◎ゲームスピードが遅い
ポゼッションを気にするがゆえ、ハードワークやパススピードが低下し、攻撃の手が相手に読まれやすくなっている。
マンチェスターユナイテッドやトッテナムはパス数ではアーセナル、チェルシーより多くないものの長短速遅の使い分けが絶妙にデザインされており連動性があるため、必然的にゲームスピードを早めている。第22節のトッテナムvsマンチェスターユナイテッドの試合はゲーム展開が非常に早く見ごたえのある90分間となった。死力を尽くし両者。今シーズンのプレミアリーグのベストゲームに挙げられてもおかしくない試合だった。

ここからはアーセナル、チェルシーがそれぞれ抱えている問題点について言及したい。

アーセナルが抱える問題点

◎オバメヤンのエゴが出始めている
彼の前半戦の動きは非常に素晴らしいものだったが、ここに来てパフォーマンスの低下が否めない。
私は当初エジルやムヒタリアンがといったチャンスメイクするプレーヤーの不在が原因だと思っていたが、前半戦に比べてペナルティエリア内でもらおうとする動きをするオバメヤンの思考に原因があると分析している。好調時はサイドへカットアウトし攻撃の起点になったり、少しポジションを落としてボールを貰ったりと献身性が伺えた。しかし、今の彼には得点王の3文字しか頭に浮かばないのだろう。
ドルトムント時代にも指摘されたオバメヤンのエゴイズムだが、結果的にはチームを悪循環に陥れる可能性があり看過することはできない。

◎変化に対応できない。

アーセナルは長年この課題に直面している。チェルシーもサッリ監督になってからは同じシステムを用いる方針が顕著に出ている。
相手がシステムを変えても、堂々と自分たちのシステムを固辞する。試合自体が上手く軌道に乗ればいいが、その反対だったときに両者はとことん苦戦する傾向にある。

アーセナルは前節のウェストハム戦で、試合開始時点で左サイドにいたアンデルソンが右サイドにポジション変更したときに彼を捉えきれず、最終的には彼を起点に決勝点を許すことになった。

けが人が多いためなす術ないと嘆くこともあるだろうが、様々な打開策を日頃から思案し準備することもチームの務めであるためそれは言い訳にはできない。
皮肉にもアーセナルに勝利したウェストハムはランシーニやカルロスサンチェス、ウィルシャー、ヤルモレンコなど早々たるメンバーが怪我により離脱中であるにもかかわらず、FW登録のアントニオをサイドバックで起用するなど、様々なシステム変更などで対応し勝ち点を伸ばしている。

かつて在籍したジルー、サンチェス、ウォルコット、コクランなど特徴的なプレーヤーを放出してしまったことも原因の1つに挙げられる。高さ・速さ・ダーティーさ。今のアーセナルに不足しているアビリティが備わったプレーヤーだっただけに痛恨だ。

◎結局何がしたいのか分からない

アーセナルに言えることはまさにこれだ。ピッチにおいて何を攻略し、何をコンセプトにゴールを奪うのかが見えていない。
エジルを戦力外にするほどインテンシティに拘るわりには、ラムジーやトレイラをスタメン起用させない。代わりにスタメンのイウォビはオフザボールの動きに不安定さがあり、ゲンドゥージに至ってはビルドアップの時には必ずと言っていいほど左サイドに張ってボールを配給するため、守備の時に肝心なポジションにいない。ヴェンゲル政権の「個人の感覚に頼るサッカー」から脱却できたようにみえたが、実態は難航しているように思える。明確な規律を打ち立てたプランニングを行わない限り、ELもCL圏内も夢のまた夢だろう。

チェルシーが抱える問題点

◎ストライカーの質

モラタのプレークオリティが向上していない。ここまで総得点はたったの5ゴール。4.4試合に1ゴールずつと、ストライカーとしての結果を残せているとは言えないだろう。昨シーズン加入したジルーは得意とするポストプレーを優先し、自身の得点より衛星的に動き回るアザールやペドロへのアシストを選択しているためゴール数は極めて少ない。仮にモラタの決定力が向上できたなら、モラタとジルーの2トップでポストプレーからジルーが得点演出し、モラタが決めるという理想的な攻撃メカニズムが生まれると私は考える。(サッリ監督が2トップを採用することはないとは思うが。)

◎カンテのポジション

昨シーズンから今シーズンにかけて、チェルシーの重要人物であるカンテのピッチ上での位置が変化している。コンテ時代にはボランチを担い相手攻撃の根を摘み取る動きを見せたが、今シーズンは右インサイドハーフとして攻撃参加を意識した動きにシフトした。サッリ監督の戦術としてボランチにはより多くのパスを配給できる人間を配置するからだ。今シーズンはボランチにジョルジーニョが配置されている。
カンテのボランチでの働きは大きい。それは幾度となく攻撃を無力化することで、相手の戦意を著しく低下させる効果があるからだ。さらにカンテがボールを奪った後はカウンターを仕掛けやすいメリットもある。レスター戦時代、カンテとドリンクウォーターの中盤からマフレズ、ヴァーディへのカウンターが非常に多く供給された。
チェルシーが現在採用している逆三角形型の中盤配置から、ジョルジーニョとカンテを底にした三角形型の中盤配置にして本来のカンテの動きが発揮できる変化を行うことで破壊力の増した攻撃ができるのではないだろうか。(サッリ監督が三角形型を採用することはないとは思うが。)

◎イングランドは対リトリート守備対策のサッカーでは通用しない

サッリ監督は「ハイテンポかつ多彩なる連携から織りなすパスワーク」で現在の地位を築いてきた。これはエンポリ・ナポリ時代から続く彼の唯一無二の哲学だ。しかし、もしかするとそれはリトリート型の守備に有効なイタリアサッカーだけの対策なのかもしれない。ここはイングランドだ。イタリアサッカーと比べてハードワークとフィジカルコンタクトが上乗せされている。厄介なことに、それがトップ6以下のチームにも当てはまるのだ。イタリアではコンマ数秒間でタイミングが合うパスが、イングランドではチーム全体で繰り広げるハードワークを前にかき消されてしまっている。いかに有効なパスが出せずにデフェンスラインでパスを回しているかが理解できるだろう。サッリ監督にはパスワークとは別のさらなる変革が必要なのかもしれない。

そんな両者だが、日本時間1/20にアーセナルホームで対戦することになる。果たしてこの90分間で笑うものはどちらか。注目して見届けたい。

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう